平成19年度あしたのまち・くらしづくり全国フォーラムの内容
全体会
シンポジウム 少子高齢社会における安全で安心して暮らし合う地域をめざして
メンバー(順不同・敬称略)
伊藤 智毅  茨城県日立市「塙山学区住みよいまちをつくる会」副会長
加藤 正子  新潟県上越市「NPO法人よしかわ・たすけあい」理事長
西内 勝太郎 神戸市須磨区「北須磨団地自治会」会長
コーディネーター
秦  靖枝  生活会議運動中央推進委員、茨城県立医療大学講師

 高齢者や子どもたちが安全で安心して暮らせる地域にするには、コミュニティの果たす役割は大きい。そこで、コミュニティでの子どもを見守る活動や高齢者支援などについて話し合ってもらった。
 安全で安心して暮らせる地域社会にするために「あいさつ運動を行なっている。あいさつすることはドロボウ除けにもなり、お金もかからない」「町を美しくすることだ」「地域通貨による支え合い活動をしている。高齢者が利用したいのはシップ貼りと洗濯干しだ」「誰もが気楽に立ち寄れる地域のお茶の間を広めている」「一人暮らしの高齢者が困ったときに駆けつけ、災害時に避難誘導する体制を整えた」「高齢者がいつでも相談できる窓口を設け、支援している」などの話が出た。(文責・事務局)

(司会) この10年間において日本の社会は大きく変化した。75歳以上の人口が全人口の10%を超え、これまで経験したことのない事態に突入している。
 一方、行政にお任せであった地域の人たちが、自分たちの町だから自分たちで良くしていこうよ、自分たちで何とかしていこうよという活動が全国各地で広がってきたのも特長のひとつだ。
 きょう、お出でいただいた3人のみなさんは、そういう思いで、子どもや高齢者が安全で安心して暮らせる地域を作ろうと、長い間活動してきた方々だ。何かヒントになるといいと思う。
 きょうは、@安全で安心して暮らせる地域にするにはどうしたらいいか、A地域住民との信頼関係をどのようにして作るか、をテーマに話を進めたい。


自分たちで安全で安心して暮らせる地域にしている

西内 40年前に、労働金庫が開発して作った、約2,700世帯、約7,000人が暮らす団地だ。10年前に、酒鬼薔薇聖斗事件が起きたところでもある。入居以来、学校や交通問題など自分たちで解決してきた。昭和44年には、全国に先駆けた幼稚園と保育所を一元化した保育センターを開設した。高齢化率は38%で、団地内に高齢者施設は二つ、障害者施設が三つ、高校も3校ある。ウグイスのさえずりが聞こえる、自然環境のよい、高齢者も子どもも幸せに暮らせる町になっている。

加藤 吉川区は人口5,350人、高齢化率29.8%、一人暮らし166人、高齢者世帯179で、過疎化、高齢化が著しい中山間地だ。「よしかわ・たすけあい」は平成10年5月に、施設も資金もない中、思いだけで地域の助け合い組織として設立した。高齢者の心が和む、ホットする居場所づくりをしてきた。美味しい食事と笑いの絶えない、話しの花が満開の出会いの場は、送迎付きで、高齢者に楽しんでいただいている。近所の底力を向上する活動こそが、高齢者が安心して暮らせる地域にすると考えている。
 安否確認の旗を紹介したい。畑にいても、田んぼにいても元気なときは赤い旗を掲げてもらい、困っているときは黄色い旗を掲げてもらっている。マイクロバスで買い物ツアーに出かけたり、高齢者が畑で作った農産物の販売も手がけている。これは高齢者の生き甲斐にもなっている。


一人暮らし高齢者の見守り体制を整えた(塙山学区住みよいまちをつくる会)

伊藤 日立市は企業城下町で、塙山学区は世帯数2,400世帯、人口約7,400人、高齢化率は20%だ。高齢者のための活動としては、@一人暮らし、昼間独居高齢者等を対象にした昼食会や生き生き体操などをする高齢者サロンを毎週木曜日に交流センターで開いている。Aサロン会場までの送迎をサロンカーで移送サービスしている。B近所のふくしボランティアと民生委員による見守り仲間(チーム)を作り、一人暮らしの高齢者ごとに安否確認をしている。災害時の安否確認、避難誘導、運搬をも担う。C夕食の配食サービス、D高齢者だけを対象にした「ふくしかわら版」の毎月配布、E交流センターにスタッフ、デスク、電話、FAX、パソコンを配置して、あらゆる生活相談に応じている、F暮らしサポートとして、草刈りや蛍光灯の交換、窓の修理などのニーズに応えてボランティアを派遣している。

 運営資金はどのように調達しているか。

西内 自治会費、市からの助成金、利息、手数料収入等、約1,000万円の収入があり、自治会館に事務員1人を置いている。

加藤 イベントでの販売収入、利用料などの事業収入、委託事業収入など約1,600万円だ。配食サービスはスーパーの協力を得て実施している。

伊藤 市の補助金、会費、自主財源など860万円だ。施設の維持管理の委託金、社会福祉協議会や市からの助成金など人件費約1,000万円があり、それを充てて交流センターにパートだがスタッフ4人を置いている。もらえる補助金や助成金があればもらうようにしている。

 おカネ、施設、システム、人等の地域の資源を見つけ、それらをつないで活用していくことが大事だ。


あいさつすることは、ドロボウ除けにもなる(北須磨団地自治会)

 子どもたちの安全を守る活動として、どういった活動をしているか。

西内 あいさつ運動を行なっている。子どもたちにあいさつ運動を身に付けてもらうために、学校にお願いして生活学習の中で、あいさつの「あ」は明るく元気に、「い」はいつでも、「さ」先にする、「つ」は続けることだ。中でも大事なのは先にすることだと、子どもたちにあいさつ運動について話している。あいさつ運動は資金もいらない。あいさつすることは、ドロボウ除けにもなり、NHKの番組「ご近所の底力」でも取り上げられた。
 警察署には学校で防犯教室を開いてもらっている。消防署とは、小学校6年生を対象に救急と消防訓練を行なっている。参加した子どもたちには消防署長と校長との連名のカードが出る。学校に行って教育の中であいさつ運動や安全教育を取り入れてもらっている。

加藤 放課後児童クラブを8年前から実施してきた。高齢者と子どもたちとの交流の場にもなっていたが、運営面で支障が生じて、残念ながらこの9月に中止した。

伊藤 2年前、栃木県の今市で女児殺害事件が起きたのを契機に、小学校、PTA、地域で緊急対策会議を開き、防犯ボランティアを募り、@交差点のパトロール、A軽トラックやバイクでのパトロール、B青パトでのパトロールなど、毎日パトロールを実施している。校長も教頭も青パト乗車の資格を取り、一緒にパトロールしている。
 子どもたちとの防災訓練もしている。

西内 自治会としてパトロールはしていない。子どもの親に対して、自分たちでやりなさい、おじいちゃんやおばあちゃんの協力を得ながらやりなさいといっている。

加藤 多くの子どもたちはマイクロバスで通学しており、マイクロバスを降りてから自宅まで地域の高齢者が見守っている。

 私のところも「朗人会」が「ながら隊」を立ち上げ、児童の登下校時を見はからって散歩しながら子どもたちを見守っている。

伊藤 親の60%が働いており、親だけでは無理だ。先生だけでも無理で、地域の出番がある。地域の子どもたちの、地域の親として、やれる人がやれる範囲でカバーしながら、PTA、学校、地域が連携して行なうとよい。塙山では「おもちゃライブラリー」や「ヤングママ子育て楽集会」を開き、乳幼児と母親を対象にした子育て支援を行なっており、家庭教育にもなっている。


地域通貨で支え合い、利用の多いのはシップ貼り(よしかわ・たすけあい)

 高齢者支援としてはどのような活動をしているか。

伊藤 毎週木曜日に、高齢者サロンを開いており、会場の交流センターまでタクシー会社と契約してワゴンタクシーによる移送サービスを行なっている。このワゴンタクシーを使って月1回買い物ツアーにも出かける。ワゴンタクシーは高齢者に好評だ。
 電力会社とガス会社の協力を得て、台所の安全点検を行なっている。問題箇所があれば、それぞれの専門業者が対応し、台所の痛みなどの小さな修理などは日曜大工のボランティアが対応している。
 高齢者の生活相談窓口を交流センターに設け、困ったことがあれば、いつでも相談できる体制にしている。身体の具合が悪いときは、相談窓口に電話を入れれば、福祉スタッフが駆けつけ、対応する体制で生活支援している。

加藤 地域通貨「でんでん」による支え合い活動をしている。高齢者のニーズの多いのは1人でできないシップ貼りと洗濯干しだ。
 マイクロバスによる買い物ツアーや月1回の遠出もしている。電話による安否確認や話し相手もしている。高齢者の居場所「愛ちゃんの部屋」では、その日の顔ぶれを見てプログラムを組む。フラダンスやお経もある。継続するには、高齢者には何事も押し付けないことが大事だ。心を開いてもらうと、高齢者の居場所は花が咲く。
 有償移送サービスの認可を受けたが、利用者が限定され、使い勝手が悪く、元気な高齢者は利用できないために休止した。しかし、足の弱い高齢者に移送サービスは必要なことから、高齢者の移送サービスを行政に働きかけている。
 災害に遭った高齢者には心のケアが大切だ。はけ口がないから、話しの聞き手になることだ。

西内 寝たきりゼロ作戦を進めている。高齢者は自治会館、福祉センター、老人いこいの家を使って元気に活動している。老人ホームも持っており、普段から出入りできる。


住民に役に立つ活動が信頼を生む(塙山学区住みよいまちをつくる会)
相手を尊重しないと、信頼関係はできない(よしかわ・たすけあい)
行事を通して人間関係を深めることだ(北須磨団地自治会)


 住民との信頼関係をどのようにして作っているか。

伊藤 こちらの考え方や何をやるかをしっかりと伝える情報提供が大事だ。住民一人ひとりの思いを受け止める仕組みができているか。いらない事業は何か、やってほしいことは何かを探る調査も大切だ。
 役に立つ地域活動でなければならない。一人ひとりの方に役に立つ活動をすることだ。でなければ、高齢者、若いお母さん、お父さん、子どもとの信頼関係はできない。特に、高齢者にはいつでも、何でも相談にのってくれ、小さなことでも何とかしてくれる地域になることだ。高齢者の思いに応えていくことが信頼関係を作る。高齢者120人の「安心カード」は、そうした信頼関係の中で作ることができた。
 これからは地域に、高齢者の居場所、乳幼児を抱えた親たちの居場所、子どもたちの居場所、定年退職者の受け皿を用意することがポイントだ。

加藤 相手を尊重しながら進めないと、信頼関係はできないと思う。
 課題は移送の確保だ。
 これからも、気張らないで「小さく始めて、大きく育てよう」をモットーに、仲間づくり、夢づくりを進めたい。一つは、生活を支援する応援隊として、高齢者の社会参加を促しながら、介護予防の充実に努めたい。二つめは、身近な地域に誰もが立ち寄れる「お茶の間遊友」を広めたい。三つめは、地域の人、物、資源を活かしてコミュニティの再生に取り組みたい。四つめは、助け合いの心を広め、あしたの安心につなげていきたいと思う。


地域の資源をつなぐコーディネートの仕事を(秦)

西内 子どもから高齢者まで知り合いになる行事をたくさんすることだ。行事を通して人間関係を深めることで、住民間の信頼関係につながると思う。行事のあとの反省会はとくに人間関係を深める。
 安全で安心して暮らせる地域にするには、住民同士が声を掛け合い、隣近所と仲良くすることだ。そして町を美しくすることだ。

 3人の話の中にたくさんのヒントがあったと思う。これからの活動に活かしてほしい。
 次の世代につなげる活動をしていくには、楽しくやることだ。楽しいと仲間づくりの輪も広がっていく。
 地域には違った力を持った人たちがたくさんいる。その人を見つけて、つないで、大きな力にしていく。そのコーディネートの仕事をしていただければ、何でもできるのではないか。