平成20年度あしたのまち・くらしづくり全国フォーラムの内容
全体会
シンポジウム これからの地域活動の進め方を探る
メンバー(順不同・敬称略)
小野 ひさえ  大分県生活学校運動推進協議会会長
関  良策  あしたの新潟県を創る運動協会副会長、生活会議運動中央推進委員
曽根原 久司  NPO法人えがおつなげて代表理事(山梨県北杜市)
内藤 辰美  日本女子大学教授
コーディネーター
岡 完治  あしたの日本を創る協会理事長


 シンポジウムは、@これからどういった活動に取り組んでいけばよいか。A活動を進める上で、問題となる人材や活動資金について話し合った。これからの活動テーマとして「防災に係わる課題を明らかにして『安全安心のまちづくり』に取り組んではどうか」「課題は地域経済とコミュニティの活性化。楽しくて小さなカネになるテーマなら何でもいいのではないか」「理想とする地域イメージを、言語を活用して、みんなと共有することだ」「調査で活動の筋道が見えた」「調べることでテーマが見えてくる」などの意見が出され、また、これからの活動に「他団体とのつなぎ役が大事だ」「連携するスタイルは、これからの活動に必要だ」などの意見が出た。(文責・事務局)


楽しくて小さなカネになるテーマなら何でもいいのではないか

 今日は「中越地震・中越沖地震において、自治会町内会等がどう対応したか」の調査をもとに話したい。

小野 44年間、生活学校運動を進めてきたなかで、壁にぶち当たったとき、どのように切り抜けてきたのかを話したい。そして、これから運動をどう展開するかを一緒に考えたい。

曽根原 私の拠点とする農村は過疎、高齢化が最も進んだ限界集落だ。一方、都市部には農業をしたい、田舎暮らしをしたい若者が多い。都会の農村に向かう新たなニーズが出てきた。農村には担い手がいないが、都会には担い手がたくさんいる。両者を結びつけ、都会も田舎も幸せに暮らせる社会ができないかと活動している。

 これから、どういった活動に取り組んでいけばよいとお考えか。

 新潟県は、この4年間に2度、震度6強の災禍を受けた。新潟県柏崎市の北条地区コミュニティ振興協議会は、1回目の地震の教訓を生かし、みごとに2回目の地震を乗り越えた。自分たちのまちは自分たちで守る「安全安心のまちづくり」に取り組むべきだと思う。

 活動は、求心力を持たなければ、継続し、大勢の人たちの参加も得にくい。地震にどう備え、どう乗り越えていくかは、地域にとって深刻で緊急で不可欠のテーマだったのではないか。

小野 仲間意識を共有し合い、メンバーの新陳代謝を繰り返しながら40年以上活動を続けてきた。活動に充実感があったからこそ続けられたが、最近、希薄になっている。社会の変化が激しい中で、今後の生活学校運動に危機感を感じる。
 レジ袋削減運動に地域の団体はもちろんのこと、事業者や行政と連携して取り組むことができた。取り組んで、事業者や行政に信頼されていることに気付いた。他団体とのネットワークの大切さにも気付いた。みなさんも、レジ袋削減運動に取り組んで、得たもの、気付いたもの、考えなければならないことがあったと思う。

 レジ袋削減運動からかなりのことを学ぶことができたのではないか。全国運動がもたらしたメリット、運動を通じて実感した自分たちの弱点、良いところなど、日常の活動を見直すきっかけになったのではないか。
 まず調べる、実態をつかむことが、これからどういった活動テーマに取り組んでいけばよいか、示唆を与えてくれる。

曽根原 地域経済がガタガタで、人のつながりも希薄だ。課題は地域経済と地域コミュニティの活性化だ。地域の厳しい状況を少しでも改善したいと考え活動している。
 難しいことを言っても誰も付いて来ない。だから、なるべく分かりやすく、楽しくて少しはカネになるテーマに取り組んでいる。思いだけでは長く続けるのは難しい。楽しいと人が集まり、それにおカネが付いてくると継続する。地域経済も地域コミュニティも元気になってくる。テーマは何でもいい。楽しくて小さなカネになるテーマなら何でもいいのではないか。

内藤 人間の生活は(他者との)共存的な自己実現だ。地域に「言語」の復権が必要だ。「言語」とは、人と人とをつなぐ道具。地域社会を理想的な、より良い状態にするためには、地域に「言語」を取り戻す運動を進めるべきだ。

 「言語」の復権とは、具体的にどういったことか。

内藤 イメージを公共化することがある。自分が理想とする地域イメージを、言語を活用して、表に出して、公共化する、みんなと共有することだ。今は理想を語る時期なのに、語ることを忘れている。私たちは頭で考えているイメージを公共化する、みんなと共有するための素晴らしい道具を持っているのだから、これを活用すべきだ。

小野 大分県ではレジ袋削減検討会議で議論して、事業者とレジ袋削減で協定を結ぶことになった。生活学校が実施した調査では、レジ袋を削減する方法として事業者と行政と協働して進める形を早く作るべきだという意見が多かった。結果的に、この声を活かすことができた。
 レジ袋削減運動に取り組んで、改めて生活学校が事業者に信頼されていることを認識した。長年の活動実績で信頼されるようになった。信頼があったからレジ袋削減運動にも協力してくれた。
 他団体ともネットワークができたが、つなぎ役が大事だ。生活学校はつなぐノウハウを持っているのだから、それを発揮してほしい。これからは、他団体と連携して活動することが大事だ。メンバーが新陳代謝しても、生活学校の基本である自主性、主体性≠ヘつないでいってほしい。
曽根原 食をテーマにしたらどうか。食は楽しいし、少しおカネも動く。食の安全・安心のニーズも高い。食育や農に結びつけるなど広がりもでき、おカネも回り始める。


次の世代のことを考え、先人に学べば活動は開ける

 次に、活動を進める上で、問題となる人材や活動資金について話し合いたい。

曽根原 周りを楽しく演出できる人と、小さい経済を回す能力をもった人がいる。人の心とおカネを上手に遣り繰りできるリーダーが必要だ。

内藤 人材がいないというが、本当にいないのか。地域で話し合いがないから、見えていないのではないか。見ようとすることが必要だ。
 おカネを行政に依存してきたが、状況が変わり、おカネが出なくなった。行政は依存するものではなく、活用するものだ。行政の活用の仕方を見直し、提案型に変えていく必要がある。
 本当に、おカネがないとできない活動なのかどうか、活動を見直すことも必要だ。

 柏崎市北条地区は、2回目の地震を乗りきったが、リーダーであるコミュニティ振興協議会の会長の手腕が大きかった。
 最初の地震で顕在化した課題を1年間かけてひとつひとつ対策を立てた。自主防災組織を立ち上げ、自治会の末端組織から体制を整えた。要援護者の福祉マップを作り、避難訓練を行ない、役割分担では中学生にも役割を持たせた。無線電話を設置して、緊急連絡体制を整えた。店が撤退し、高齢者が買い物に困り、女性たちがお惣菜店を作った。その店が中越沖地震のとき炊き出しに役立った。こうした準備があったからこそ、2回目の地震を乗りきることができた。
 中越沖地震はコミュニティ振興協議会が対応したが、事務局の女性職員が高齢者のお世話で活躍した。

曽根原 企業の社会貢献活動が盛んになってきた。経常利益の1%を社会貢献活動に使うルールもある。都会に農村志向が強い。田舎暮らしをしたい人が増え、子どもたちの農業体験のニーズも強い。農業体験プログラムを提供しているが、年間何千人もの参加者がいる。こうした様々なニーズを捉えて、おカネを得ている。

小野 メンバーが得意とすることを人材バンクに登録していると、派遣依頼があり、その謝金が資金にもなる。最近では、マイバッグ作りやレジ袋削減運動の寸劇の出前教室の依頼が多い。
 県協議会を運営することになり、みんなで力を合わせて事務局体制を作り、慣れない書類づくりや研修会を苦労しながら開催した。どうにかできるまで3年かかったが、やればできるものだ。

内藤 地域経済とコミュニティを活性化するには、リーダーは専門的な知識を持ち、手法に通じていることだ。それに何よりも、その活動が好きだ≠ニいうことだ。
 テーマには必要性と緊急性がある。関先生の言われる防災は両方だ。問題解決には、近視眼的にならないで、遠くを見ながら、せめて次の世代のことを視野に入れて考えてほしい。
 明治に戻って名誉≠大事にして、儲けたおカネを地域活動に回すことは名誉なことにしたい。そのための税制も必要だ。

沼津松の実生活学校(静岡県) 安全な食品を共同購入して、市民にも朝市で広げ、売り上げは活動資金にもなった。安全な食品を求めて生産者や企業も成り立っていくように支えながら活動してきた。

曽根原 それは支援ではなく、連携だ。役割分担を決めて連携するスタイルは発展性があり、これからの活動に必要だ。

内藤 これからの活動は、次の世代のことを考え、先人に学べば活動は開ける。

 ありがとうございました。