「あした通信」185号掲載
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世代ごと視点で安全マップづくり
愛知県春日井市 春日井安全・安心まちづくり女性フォーラム実行委員会
 安全で安心して暮らせるまちづくりを進めている愛知県春日井市の「春日井市安全・安心まちづくり女性フォーラム実行委員会」(委員長・渡辺修子さん)は、モデル地区での安全マップづくりを皮切りに、2年かけて市内37小学校区で防犯、防災、交通事故防止に関する安全マップづくりを実施、その結果を5冊のイラストマップ集にまとめて市に提出。市はそれをもとに小学校区ごとの「安全・安心マップ」を作り、市民に配布する計画だ。さらに女性フォーラムは、これまでの取り組みを生かして、今年は小学校の総合学習で交通安全や防犯について授業を行う。


車に「ひやり」とした場所はどこ?

 女性フォーラムは、まちづくりに女性の視点を活かそうと、平成10年に発足。「みち」をテーマに交通安全、防犯、防災、環境の4部会が独自に調査、研究を続けてきた。平成12年5月に4つの部会が合同で、モデル地区の市民の協力を仰ぎながら住民参加のマップづくりを実施した。まさに市民の市民による市民のための安全マップづくりである。参加者はこの作業を通して、地域の危険箇所や問題箇所を改めて知る機会となった。
 モデル地区にしたのは白山小学校区(世帯数2,361)。安全マップづくりは世代別の視点や経験を考えて小学校児童、婦人会、町内会、老人会の協力を得た。それぞれの団体に「交通安全」「生活安全」「防災」「環境」の観点から「ひやり地図」「生活安全マップ」「防災おたすけマップ」「環境マップ」の作成に参加してもらい、チェック項目ごとに色分けしたシールを地図に貼ってもらった。
 例えば「ひやり地図」では自動車や自転車、歩行者にひやりとした場所、路上駐車や放置自転車の多い場所などをマークした。「生活安全マップ」は、暗くて危険な場所、ひったくりやチカンに遇った場所、空き巣に入られた家、空き家、ホッとする場所などにシールを貼った。
 「防災おたすけマップ」は自宅から避難場所までの避難路を地図に記入し、避難路で危険と思われる場所を印した。「環境マップ」はお花がきれいな場所、ポイ捨ての多い場所、ごみをきちんと分別している場所、ごみが乱雑に出されている場所を地図に印してもらった。
 こうして世代ごとに4種類の地図を作った。


危険箇所が地図上に集約

 できあがった地図をみると、町内会からは「路上駐車が多く危険である」という意見が多く、児童も「通学路に路上駐車が多い」という結果だった。交差点では、児童は車にひやりとし、町内会の大人は歩行者にひやりとしたことが多い。
 暗くて危険な場所は、公園の周辺、水田沿いの道、川沿いと、見通しの悪い公園があがった。「ひったくりに遇った場所」は公園、地下道周辺、県道沿いに印しが多く、人通りの多いところでも時間を問わず発生している。「チカンに遇った場所」は公園が多く、被害者は小学校4年生までの子どもが多い。
 「空き巣に入られた家」は道路から塀や樹木で見えにくい家が軒並み被害に遇っている。「空き家」は古い集合住宅に多い。「ホッとする場所」はほとんどの人が自宅と答えた。避難路は狭いうえにブロック塀も見られ、自動販売機もある。「ポイ捨ての多い場所」は国道や地下道だった。
 こうしてできた安全マップを女性フォーラムで1枚のイラストマップ(A3判)にまとめ各家庭に配布してもらった。


「地下道美術館」を提案

 安全マップづくりを通していろんな問題点が浮かんできた。交通関係では、国道と県道の交差点が危険であること。国道の地下道が利用されていないこと。路上駐車が多いこと。通学路を児童と一緒に点検したところ、通学路と通学班の集合場所に危険なところがあることも分かった。
 防犯面では、地下道が危険であること。「こども110番の家」がどこにあるのか知られていないことも分かった。防災面では避難路の安全性と避難路の標識がないこと。環境面では国道や地下道にごみが多いことだった。
 そこで女性フォーラムでは問題の多い地下道を見直すことにした。白山小学校区には地下道が4本あるが、危険を感じながらも児童はこれを利用しないで、交差点を横断している。メンバーは地下道を利用することで危険性は減らせると考え、通学路として地下道を安心して利用するためにはどのような地下道が良いのかを考えた。
 そのために市内のほかの地下道を調査してみた。すると明るくて、きれいで、人通りが多く安心できる地下道は交通安全に役立ち、通学路にも利用されていることが分かった。
 とりわけ通学路として利用している地下道では、児童を安全に通学させるために、出入り口に交通当番が立ち、きれいな地下道を維持するために児童が清掃を行い、壁面に絵が描かれるなどの取り組みがみられた。
 そこで白山小学校に、児童の交通安全の観点と児童の横断で交通渋滞を招いていることから、登校時だけでも地下道を利用することを勧め、地下道を明るくするために地下道美術館を提案した。


ハニワがほほえむ避難路に

 女性フォーラムの提案が受け入れられ、児童たちが壁画を描き、地下道を清掃し、地下道の入り口に交通当番が立つようになった。地域の婦人会や老人会も地下道を清掃するようになった。
 危険性のある通学路や集合場所の見直しも図られている。こども110番の家についてもPTA新聞で取り上げPRしてくれた。
 地元でも安全なまちづくりの取り組みが見られるようになった。めいわく駐車防止キャンペーンが行われ、「ハニワがほほえむ避難路」もお目見えした。女性フォーラムが、避難路の目印となる道標の設置を地元に提案し、それに応えて、白山校区コミュニティが避難路にハニワを設置してくれた。同校区には史跡「二子山古墳」をはじめとする古墳が点在し、ハニワは地元のシンボル。ハニワづくりに女性フォーラムのメンバーも参加した。
 さらに女性フォーラムでは、今年は小学校の総合学習で「自分の命は自分で守る」をテーマに授業を行う。今、メンバーはその準備に追われ、紙芝居と寸劇の稽古に余念がない。