「あした通信」193号掲載
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企業、行政、大学と同じテーブルに着き、容器包装の改善策を話し合う
滋賀県野洲町 野洲町生活学校
 滋賀・野洲町生活学校(代表・落合房子さん)では、これまで、琵琶湖の環境浄化活動や町の分別収集への働きかけなどに取り組んできたが、今、力を注いでいるのは、対外的な働きかけ。企業、大学、行政、消費者が同じテーブルに着いて、環境負荷の少ない容器包装のあり方をめざす研究会に参加し、容器包装の減量・改善に向けて消費者の立場から積極的に発言を行つている。


企業、研究者のなまの声がきける

 「具体的ななまの話をするなかで、企業や研究者などがどう考えているかわかり、この会員になって良かったと思う」「学生さんたちと一緒になってワークショップをするのはとても楽しいし、刺激がある」
 これは特定非営利活動法人エコ容器包装協会の会員となり、同会が主催する公開研究会に参加しての落合さんたちの感想。この公開研究会では、エコ容器包装の普及をめざして企業、消費者、研究者、学生などが、それぞれの立場から容器包装に関する活動報告や研究成果を発表し、環境にやさしい容器包装のあり方を考えていこうというもの。野洲町生活学校では、研究会に常時、数名が参加している。
 公開研究会の内容には次のようなものがある。「生活者から見たエコ容器―ペットボトルと即席ラーメンの容器を斬る―」をテーマとした研究会では、ワークショップ方式で開催し、例えば即席ラーメンに使用されている容器包装を細かく分類する作業を行う。その結果、あるメーカーの製品では、9種類にものぼる包装材が使われていることがわかり、果たしてこれがすべて必要かとの疑問を呈する。


公開研究会で生活学校の活動を紹介

 また、3月に開かれる研究会では、「環境に配慮した容器・包装の提言」と題し、容器包装問題の専門家や市町村の清掃課担当者、消費者団体の代表を招いてのパネルディスカッションを予定している。このなかで落合さんたちは、高知市生活学校や熊本県水俣市生活学校などの活動成果であるスーパーマーケットなどの小売店との間に締結したトレー削減の活動を報告することにしている。また、昨年度の研究会では、落合さん自身が講師となり「私たちのエコライフ」と題し、消費者の立場からの省エネ、省資源活動を報告するとともに、生活学校運動の目的や活動内容を紹介し、生活学校の存在をアピールしている。
 消費者側ばかりでなく、「生活包装に関する最近の開発動向と今後の方向」といった題目で企業の担当者が話題を提供することもある。
 同校は、昭和53年に発足。今年で26年目を迎えた。これまで、町に分別収集を働きかけるために各種の調査活動や対話集会の開催、スーパーとの話し合いなど容器包装の削減にむけた活動など多彩な活動を展開してきた。
 また、最近、地元野洲町では、地域通貨を利用して太陽光発電の普及や里山保全の事業をはじめたが、ここで課題になるのは、地域通貨(smlie―スマイル)の使途。この使途として、同校が長年行ってきた味噌を販売し、その対価をこのスマイルで受け取るよう計画している。このようなゴミ・環境問題に取り組んできた同校が、エコ容器包装協会と出会ったのは、滋賀県生活学校連絡協議会が平成12年3月に実施した研修で、エコ容器包装協会の理事長である森健司さんを知ることに始まる。


企業、行政、消費者が同じ土俵で話すことが必要

 ダンボールなどの製造会社の社長でもある森さんは、地球環境に配慮したライフスタイルのあり方を提唱していた。なかでも、会社の営業品目とも関連が深く、一般容器包装のうち容積比で6割を占める容器包装の改善、削減を図るためには、産業界、大学、行政、消費者が個別に対応するのではなく、協働して取り組む必要性を訴え、平成11年10月に立ち上げたのがエコ容器法包装協会(現在は、NPO法人の認可を取得)。この動きに共鳴した落合さんたちは、早速、出席しなかったメンバーとも相談し、野洲町校としてこの協会の会員になることを決定した。
 ほかには、滋賀県内を中心に大阪や京都の包装容器や食品のメーカー、スーパーなどの小売店、銀行などの企業に加え、大学、消費者団体が団体会員として、一般消費者や学生が個人会員として参加し、現在およそ80団体・個人が会員になっている。さらに冒頭に紹介した公開研究会は2か月に1回開催され、会員以外にも、市町行政の担当者なども参加、約80人が出席、1年間でのべ240人にのぼる参加者がある。このように、企業、消費者、大学、行政が同じ土俵に立ち、恒常的に環境問題―容器包装の削減―に向けた活動をしていこうという試みは全国的にユニークな存在といえる。このなかで、野洲町校は消費者団体の有力メンバーとして参加、冒頭に紹介したように積極的な発言を行っている。
 今、地球環境にやさしい環境づくりが大きなテーマになっていることはいうまでもない。そのため、家庭や地域社会での活動とあわせて、なによりも必要なことは、製造・販売の企業、消費者、行政などが、同じテーブルにつき、お互いの考え方、お互いの意見を交換し、一緒に問題を解決しようとすることであろう。野洲町校の試みは多くの生活学校に示唆をあたえる活動だろう。そして環境県といわれる滋賀県から新たな動きが発信されることを期待したい。