「あした通信」197号掲載 |
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災害に強いまちにするために市民が「防災まちづくり学校」を開講 |
東京都東久留米市 東久留米自主防災研究会 |
東京都東久留米市の「東久留米自主防災研究会」(代表・金澤淳さん)は「防災まちづくり学校」を開講した。今後「学校」を毎年開講し、「学校」の受講生が市民防災推進委員となり、地元自治会で自主防災組織を結成することを期待している。 将来は、そうしてできた市内の自主防災組織をネットワーク化し、行政と協働しながら災害に強いまちづくりを推進する考えだ。 市民大学“災害に強いまちづくり”受講者で結成 「東久留米自主防災研究会」は、市民大学“災害に強いまちづくり”―東久留米をもっと知ろう―を受講した有志が平成14年1月30日に結成したグループ。講座修了後、自主防災の勉強をもう少し続けてみようという人たち14人(男性6人、女性8人)で発足した。会員のうち男性は全員がサラリーマン定年退職者で、女性は専業主婦で自治会や民生委員、赤十字などでボランティア活動に参加している人たちが多い。 市民大学“災害に強いまちづくり”を受講して、万が一にも地震が起こったら大変なことになるという不安感を多くの受講生が持つようになった。例えば講座で取り上げた市の地域防災計画書には立派なお題目が並んではいるか、避難所運営のマニュアルがないなど、具体的な防災対策が十分でないことに気づいた。講座はこうした不安感を残して終わった。 不安を残し、もう少し勉強を続けてみたいという気持ちの強いところに、市の生涯学習課から「さらに自主的に勉強を続けて、研究結果を小冊子にまとめたり、市民に公開するシンポジウムを開催してはどうか」という勧めがあり、渡りに船とばかりに、研究会の発足となった。 研究会が「防災まちづくり学校」を企画・運営 「防災まちづくり学校」の回設は、例会で研究会の活動目標やスケジュールについての話し合いを続けるなかから出てきた。東久留米市を災害に強いまちにするには「防災まちづくり学校」の設立が有効であるとの結論になった。 早速、その考えをまとめて、市民の防災力を高める第1ステップとして、市主催による防災に関する知識や情報を系統的に学習する「防災まちづくり学校」の常設化を市に提案した。東京都国分寺市が開いている「市民防災まちづくり学校」が参考になった。 「防災まちづくり学校」の開設を求めて、市役所の関係部署や関係者との度重なる話し合いの結果、「防災まちづくり学校」の企画、運営に「東久留米自主防災研究会」が全面的に協力することと、経費を極力削減することを前提に、生涯学習課と市民大学運営委員会が主催する平成15年度の市民大学の一つとして「防災まちづくり学校」を開講することにゴーサインがでた。 これを受けて講座のカリキュラム、予算の検討、会員が講師になるための研饌に会員は精をだした。国分寺市の「市民防災まちづくり学校」にも会員2人が“越境入学”させてもらった。 「防災まちづくり学校」は9月25日〜12月18日までの毎週木曜日に開くことになった。「自分たちのまちは自分たちで守る」という考えから合計13回のカリキュラムを組んだ。経費を削減するために、純然たる外部講師は「図上防災訓練」「東久留米市の農業」「先進地区の自主防災組織」の3回だけにして、「災害時の行政の対応」「東久留米市の都市計画・防災体制皿救急救護の講義と実習」などは市役所の関係職員にお願いした。さらに、「阪神大震災に学ぶ」「地震だ!あなたならどうする」「家庭の安全対策」などは会員自身が講師になり、講座を受け持つことにした。 講師の依頼、広報、会場運営などは会員が行なう。自治会にダイレダトメールを送り、受講生を募集したところ、自治会や自主防災組織などから24人の受講希望者があった。市会議員も受講生として参加している。 大切なお互いを助け合うコミュニティ 東久留米市中央公民館が主催する市民自主企画講座にも「地震列島で命を守るには」をテーマに講座を企画し採用された。 この講座は、第1回が「阪神大震災に学ぶ」、第2回は「そのとき命を守れますか」、第3回は「図上防災訓練とは」、第4回は「図上防災訓練の実践」の4回で組んだ。講師は講演会やシンポジウムに参加して知った、それぞれの専門家にお願いした。図上防災訓練では、講義のあと、地元消防団の協力を得て、4班に分かれて実際に市内の街歩きをして、消火器・消火栓・防火水槽などの確認や自販機・看板・ブロック塀などの危険箇所をチェックし写真に撮った。講師の指導を受けながら、結果を地図に記入して全員で討議してみると、都市計画の貧弱なことなど、この町の弱点や農地が残されているなど良い点もよく分かった。 毎月第3水曜日に例会を持つ。例会では@防災に関する本の輪読、会員の研究発表、A防災訓練への参加、B防災関係セミナー・講演会・シンポジウム等への参加、@かわら版の発行、などを行なっている。 例会で勉強を続けているうちに、防災対策のすべてを市に期待しても、人材的にも財政的にも無理なことが理解できた。とくに大地震発生後3日間は市としても何もできず、むしろそれぞれのコミュニティが自分の力でお互いを助け合う自助共助が大切なのだということも理解した。自分たちのまちを自分たちで守る自主防災組織の必要なことも分かったことから、現在、会員たちは地元自治会や管理組合に参加して防災担当を積極的にかってでている。 当初は例会欠席者のために議事録を掲載していた「かわら版」には、防災に関する国内ニュースも載せて毎月発行している。「かわら版」を読めば会の活動内容が分かることから、関係者に会の存在が知れ渡るようになった。東久留米市社会福祉協議会からボランティア団体の認定も受けた。市役所、消防署、社会福祉協議会などにも「かわら版」を届けることで人脈づくりにも役立っている。この人脈づくりには地域の情報を持たない男性会員よりは長年のボランティア活動などで地域情報に詳しい女性の会員の方が力を発揮する。 Eメールの会「東京命のポータルサイト」に参加して専門家の紹介など貴重なアドバイスを受けている。悩みは日常的に動ける会員の少ないことと、会員に定年退職者が多いために活動を継続するのに一抹の不安のあることだ。そのためにも「防災まちづくり学校」の受講生を積極的に会員に勧誘して仲間を増やしていく考えだ。 |