「アース・地球環境」22号掲載
特集事例

市民グループが「リサイクルショップ」を運営
東京都・ひの市民リサイクルショップ回転市場
 東京都の都心から30kmの三多摩地区に位置する日野市は、市内に多摩川、浅川と程久保川の大きな川が流れ、水と緑に恵まれた首都圏のベッドタウンとして発展している街である。
 この街で12年前から市民グループが行政の支援を受けながら、「ひの市民リサイクルショップ回転市場」(以下「回転市場」という。)を運営し、4年前には万願寺店を開設し、市民間での「モノの再使用」の機会提供をしながら、「環境問題等の情報発信」にも取組んでいる。(事務局 篠河)


市民運動の情報発信・実践の場

 活動のきっかけは、同市の西部地区に所在する多摩平中央商店街の空店舗の活用策として、1991年10月に森田前日野市長から、市民で構成する「日野市消費者運動連絡会」(団体会員として生活学校も加盟。以下「日野消連」という。)に対し、「市が応援するので、多摩平団地内の空店舗でリサイクルショップを開いてみませんか」という提案があった。日野消連は、循原型社会を目指し「ごみの減量や資源化」「自然にやさしい“せっけん”の使用」「安全な日野産野菜の応援」などを柱に、市民活動を展開していた。
 日野消連では、「リサイクルショップ」を「市民運動を進めるための情報発信・実践の場」として活用することも可能と判断し、市長の提案を受けることとした。翌年(1992年)7月に多摩平団地内に「多摩平店」を開設した。また、市内南東部の市民ニーズに応えるため、2000年には「万願寺店」を開設した。
 なお、現在の回転市場は、市民個人参加の会員組織(会員数:35名)となっており、回転市場は、会員によるI日3名の当番制の活動形態によって運営されている。


12年間の運営で市民に定着

 回転市場の運営目的は、「消費者運動のこころざし」をもって活動することとし、市民から提供された中古衣類等の回収と販売を通して、「使い捨てのくらしを見直し、(1)物を大切にするくらし、(2)ごみを買わないくらし、(3)ごみを出さないくらし」に変えていく呼び掛けをし、それに役立つ情報の発信と実践活動をする。
 「回転市場」の名前の由来は、多摩平店を開設する時に、「楽しく人が集い、交流できる場」という意味をこめて命名した。
 店舗は、日野市が確保した施設の提供を受け、使用している。「多摩平店」は、団地内商店街の空き店舗を借上げ(2004年商工会館隣に移転後は、借地にプレハブ式建物を新設)。「万願寺店」は、「多摩都市モノレール」万願寺駅前ビル2階にある市の公共スペースの一部。
 営業日・時間は、「多摩平店」は、火〜土曜日の午前11時〜午後5時。「万願寺店」は、水〜日曜日の午前11時〜午後5時30分。
 取扱品は、衣類、日用雑貨品、本。万願寺店のみ小型家具の委託販売。
 市民からの提供は、開店時間内に店舗に持ち込む方法で、無料扱い。委託販売方式は、前記を除き行っていない。
 提供者に対して、次の要請をしている。
・衣類は洗濯したもの・汚れていないもので、他の人に気持ち良く使ってもらえるものの提供
・受取れないもの:(1)雑貨品で不衛生・環境を汚す・安全性が心配・使用の可否が確認できないもの、(2)汚れている本・百科事典・情報が古い本・専門書、(3)バザーやガレージセールの残品など
 また、購入者に対して、次の要請をしている。
・ごみの減量のため、買物袋持参
・安いからといって、買い過ぎに注意
・多数の人に利用してもらうため・ムダな買物をしない。このため、購入制限(衣類は、一人5点まで。雑貨品は、一人3点まで
・払い戻し・取替えは、原則としてできない。
 商品は、子供衣類10円〜50円・大人衣類200円〜700円等マニュアルに沿って公正
な値付を行う。
 2003年度における活動実績は、2店舗合せて、提供者数:5,168名(1日当たり21名)、購入者数‥26,212名(1日当たり108名)、売上額:7,791千円、衣類同収量:7,050kg。
 市からの補助金と売上収入を中心とする収入によって、運営のためのスタッフ活動費や通信費等の諸経費を賄うほか、啓発誌「21世紀の地球」の印刷・配付や市民還元イベントの開催経費に充当し、市民還元を行っている。


各種イベントにも積極的に参加

 回転市場では、「リサイクルショプ」運営のほか、事業目的を達成するために関連事業を行っている。その主なものは次のとおり。
○周年フェア:店舗及びその周辺において、(1)中古衣類と雑貨品の販売、(2)マイバッグキャンペーンほか
○市民還元イベントの開催:環境問題をテーマとした講演会、見学会の開催ほか
○「くらしのフェスタ日野」への参加:実行委員会方式のイベント。(1)中古衣類・石けんの販売、(2)啓発資料の配付ほか
○啓発話の発行配付:環境啓発話「21世紀の地球」を発行し、市内小学4年生全員に配付。また、店頭やイベント会場で広く市民に配付
○情報交換のための伝言板設置:回転市場で扱わない品物を市民間で再使用するための 情報交換の場を提供


「日野市ごみ改革」にも大きな貢献

 回転市場運営委員会の永島敦子委員長や吉岡幸子前委員長ほかスタッフの皆さんから、「リサイクルショップ」運営体験を踏まえた感想やアドバイスが、次のように寄せられた。
・市民に信頼を得るため、会員の当番日の購入を禁止(スタッフの先取り禁止)。
・ごみの発生防止のため、開設当初からレジ袋は出していない。
・当番は言葉使いに注意しながら、来店者に活動の主旨を伝え、協力を得ている。
・接客を通じて、循環型社会形成への呼び掛けを行うと共に、高齢者や若い母親のストレス解消等のため話し掛けを積極的にしている。
・当番は、月当たり3〜4回であるが、会員はやりがいを感じながら楽しく取組んでおり、会員の交流の場にもなっている。
 また、馬場日野市長は、本年3月の「多摩平店12年間ありがとうフェア」の挨拶において、「2000年10月に実施した“ごみ改革”がスムースに実施され、3年半たった今も、“ごみ量半減”という好ましい状態が続いているのは、回転市場の皆さんの働きが大きい」と述べられ、回転市場の活動を大きく評価された。