「アース・地球環境」22号掲載
ルポ1

札幌サマータイム実験に6千人参加
北海道・札幌商工会議所
 人口186万人を擁する道都「札幌」は、我が国の中でも高緯度に位置し、夏季における昼間の時聞か長いという自然特性がある。
 この夏「札幌」では、この自然特性を活かした「サマータイム実験」を実施した。
 この実験には、市役所や札幌市内の企業・団体を中心として、221事業所・総勢約6千人が参加した。
 実施後のアンケートでは、約7割が「サマータイム導入に賛成」との意見が寄せられ、今回主催した札幌商工会議所では、本格的な導入に向け意欲を高めている。
 また、全国的にも初めての「サマータイム実験」であり、マスコミでも大きく報道され、実施状況について全国各地から多数の問い合わせがあるなど、大きな反響があった。(事務局 篠河)


景気対策や省エネ対策に効果的

 厳しい経済情勢が続く北海道経済の立て直しの一環として、札幌商工会議所では、消費拡大効果と地域活性化等の効果が期待できる「北海道サマータイム導入」を提唱した。
 同会議所が平成15年10月に取りまとめた「北海道サマータイム導入による効果」では、北海道全域において、夏期6ケ月間、標準時より2時間早め「サマータイム」を実施した場合、想定される効果は次の6項目としている。
(1)経済波及効果
 個人が「テレビ」など室内の自由時間を、屋外の「レジャー活動」に振り替ることにより、個人消費が871億円増加し、経済波及効果では1,165億円増加する。
(2)交通安全確保・防犯効果
 北海道における交通事故と犯罪の発生は、朝よりも夕方や夕方の通勤時間帯に集中しており、サマータイムの導入で交通事故と犯罪の減少が予測される。
(3)省エネ効果
 家庭や事業所における電力消費等の省エネ効果として、原油換算で4万キロリットル、20.8億円の節約ができる。
(4)北海道のPR効果
 札幌証券取引所が世界で一番早く開くことになるなど、北海道のPR効果が期待できる。
(5)教育・意識効果
 年2回の時計変更を契機として、ライフスタイルの見直しやエネルギー問題を考える機会が増え関心も高まり、環境教育面やボランティア活動の活発化につながる。
(6)少子化対策
 少子化対策として、子育てと仕事が両立する環境づくり加重要。日照のある自由時間の増加によって、仕事優先の価値観も変わり家庭生活重視の環境変化が浸透する。


本格的な導入向けた最初の試み

 今回、同会議所が主催し実施した「サマータイム実験」は、本格的な導入に向けた最初の取組みとして実施したもので、期間は7月1日(木)〜31日(土)の1ケ月間、日本標準時間より1時間早めたもの(*)。
 参加呼び掛けは、道内の官公庁や企業・団体・学校等に対し行った。この参加呼び掛けに呼応し「サマータイム実験」に参加したのは、札幌市役所を始めとして、札幌市内に所在する金融機関などの各企業や団体から221事業所・総勢6千人が参加した。
* 混乱を避けるため、時計の針はそのまま標準時を使い、実験に参加する企業等は1時間活動を早める取扱いとした。


札幌市は積極的に参加・職員の反応も好意的

 札幌市役所では、「道州制北海道特区」実現の一環として、「サマータイム」導入を検討しており、今回の「サマータイム実験」にも積極的に参加した。
 同市では、総務局、企画調整局、環境局及び経済局の4局において、220人が参加した。参加職員を前期組(1日〜14日)と後期組(15日〜29日)に分ける交代制とし、実参加日数は10日間とした。
 参加職員の勤務時間は、通常よりも1時間早め、午前7詩45分〜午後4時15分とした。また、参加職員へは実験参加に加え、「半日休暇の有効活用」も奨励した。
 参加職員の反応は、退庁後の活動について、「これまでと変わらない」という回答加40%あるものの、「家族とのショッピングや外食」が30%、「職場の仲間や友人との飲食」、「映画やコンサート・プロ野球観戦」、「屋外スポーツや野外レジャーなどの活動を行った」との回答がそれぞれ20%前後あり、多岐にわたる活動が行われたことが確認された。


銀行では期間中アロハシャツを着用

 北海道の主要な金融機関である北洋銀行では、市内中心部の3店舗において、7月1日〜15日までの半月間、窓口業務批当の行員ほぼ全員が「サマータイム実験」に参加した。
 店舗の開店時間は通常より1時間繰上げ、午前8時に開店し、閉店は通常どおり午後3時。
 行員の勤務時間は、交替制を取入れ、早出勤務者は、通常より1時間繰上げ、午前7時40分〜午後4時、通常勤務者は、午前8時40分〜午後5時。
 同行では、「サマータイム実験」期間中は、夏らしい雰囲気を出そうと、行員はカラフルなアロハシャツを着用し勤務した。
 繰上げ時間帯の利用客はさほど多くはなかったが、顧客からは「出勤前に立ち寄ることができ便利」など好意的な声が多かった。
 行員の反応は、「朝のさわやかな時間に通動でき気分が良い」「映画鑑賞など趣味の時間に有効に使えた」など賛同する意見が多かった。また、職場の雰囲気としても職員の意識改革に役立ったようだ。


サマータイム賛成2/3

「サマータイム実験」後、参加事業所を対象として実施したアンケート結果の概要は、以下の通り。
○サマータイムを体験した上での賛否
「北海道サマータイムに賛成」33%、「全国一律ならよい」36%と2/3が賛同。
○賛成する理由(重複回答)
「行動の選択肢が広がる」が最も多く83%、「家族とのふれあいが増える」33%、「北海道のイメージアップにつながる」25%、「省エネに効果がある」20%の順。
○退社後の時間の使い方(重複回答)
「これまでと変化ない」56%、次いで「友人との飲食」21%、「家族と買物・食事」18%の順。


本格的実地に向け拡大を目指す

 今回の「サマータイム実験」の担当責任者として関わった札幌商工会議所の鈴木敏哉企画課長から、次のような意欲的なコメントが寄せられた。
「実験に参加した多くの事業所から好意的な意見を頂いた。また、全国各地から問合せ照会等も多く、サマータイムヘの関心の深さと広がりを感じている。地域特性を活かし本格的な実施に向け、当面は、全通的な取組みに拡大していきたい。」