「アース・地球環境」23号掲載
特集事例

シニアボランティアによるEMぼかしの生産・普及活動
エコピュア佐久間生活学校(静岡県佐久間町)
 愛知県の豊橋を起点とするJR飯田線が、静岡県との県境を越えて殼初に着くまちが佐久間町。普通列車で1時間40分ほどかかる。「塩の道」信州街道と秋葉街道が交差する歴史と文化のまちで、新しいリサイクルのまちづくりが続けられている。定年退職したエコピュア佐久間学校の先生など高齢者が中心メンバーである生活学校が、有効微生物群の「EM菌」を用いた肥料(EMぼかし)を生産。地域の農家に広めるほか、「遊学体験農場」と名づけた農園で使用。地域の子供たちや、浜松や豊橋方面の都市のファミリーを招いて、農業の大切さ・楽しさを学んでもらっている。(新和風文化研究所 市橋 貴)


原料は米糠と籾殻

 EMぼかしの主な原料は、米糠と籾殻。共に米の生産から発生するもので、昔はいろいろと活用されたが、いまはほとんど廃棄物になっているものだ。
 佐久間町は山間部で、水田が少ない。このため、籾殻は豊橋のほうから人手している。米糠は地域のJAから購入。
 生産工程は、シンプルだ。米糠と籾殻を同量、手作業でブレンドして、少量の糖蜜とEM菌を混ぜる。1週間ほど乾燥させればできあがり。
 ぼかしを生ごみと混ぜると良質な堆肥ができる(混ぜることを料理用語の「和える」と表現され、できた堆肥が「ぼかし和え」)。
 同生活学校が生産したぼかしは、地域の農家に購入してもらい、生ごみの自家処理に使ってもらう。300g100円で、現在約150世帯が利用している。
 非農家については、べつの取り組みを行っている。生ごみの各戸回収だ。
 回収を希望する家庭に密閉タイプのフタつき10?入りポリバケツを配り、生ごみを入れてもらい、週1回、メンバーが巡回して回収する。
 この“サービス”を利用している世帯は、現在24軒。そのうち1軒は地元のスーパーマーケット。一般家庭は高齢者の一人住まいというお宅が多く、回収が人と人とのコミュニケーションや“安否確認”にも役立っている。バケツは玄関の前に出しておいてもらうのだが、必ずひと声かけることにしている。
 腐敗しやすい生ごみの回収が週に1回というのは少ないように思われるが、バケツに生ごみを入れたら、少量のぼかしをふりかける。そうすることによって、悪臭などの発生が防げる。
 他に廃食油の回収と、廃食油から作った石鹸の販売、アルミ缶回収を手がけている。これも環境への取り組みだが、運営費づくりという面もある(運営費については、2002年に町の「生ごみ資源リサイクルモデル事業」に認定され、若干の補助を受けている)。


子どもたちに豊かな自然を

 この取り組みは10年ほど前、代表の金森喜久代さんが行った“実験”から始まった。EM菌の評判を聞いて、自宅で発生する生ごみで実験したところ、6人家族の金森さんの家で1ヵ月約30kgの「ぼかし和え」ができることが分かった。良質の肥料になるのだから、生ごみを捨ててしまうのはもったいないし、町のごみ処理の負担も軽減できる。この方法を、地域に広めようと考えた。
 金森さんがこのような実験に取り組んだのは、もともと「子どもたちに豊かな自然を残したい、旬の野菜のおいしさを知ってもらいたい」と考えていたから。身近な生ごみが生かせることが分かり、1994年、EMぼかしの生産に取り組み、それを使った生ごみの自家処理を地域に呼びかけた。約40世帯が参加。そして、現在は約150世帯がぼかしを購入する活動に広がっている。
 同じ年に、1反(約990u)の休耕田を借りて、EMぼかし和えを用いた有機農業を始めた。これこそ金森さんが子どもたちに伝えたいことを実践するためで、「遊学体験農場」と名づけた。
 農家に使ってもらうぼかしは米糠と籾殻から作るが、農場で使うものの“原料”は非農家から回収した生ごみ。20基ほどのコンポスト容器を並べて、半年〜1年かけて、じっくり熟成させる。
 そうして生産したぼかし和えを上に還し、長く耕作が放棄されて痩せていた休耕田は、1年で肥沃な土地に再生した。
 現在、農場には作業機、ぼかしの乾燥室、それにトイレと水道がある。
 作業機は、地元の大工さんが廃材を使って建ててくれた。乾燥室の設置は、金融機関などが社会貢献事業として応援してくれた。乾燥室ができるまでは、協力してくれる農家に頼んでぼかしを乾燥させていたから、施設ができて運搬の手間が大幅に省けた。トイレと水道は、行政のバックアップがあった。
 長く地道に活動を続けていると、自然に各方面にサポーターが生まれる。いくつかの表彰(静岡県コミュニティ推進協議会・コミュニティ活動奨励賞、中日新聞社・中日ボランティア賞、あしたの日本を創る協会・ふるさとづくり奨励賞など)を受けたことも、知名度アップにつながった。


都市のファミリーも招く

 メンバーは現在19人。といっても、毎日農場で作業する方は定年退職した学校の先生など6人で、他は生ごみの回収やぼかしの配達、イベントのときに手伝ってくれる現役の自営業の方、地域の病院(佐久間病院)で働く看護士さんやパートさんといった“サポーター”だ。時間があるとき、できることだけ手伝うといった方が多い柔軟な組織で、イベント時にはさらに行政関係者、参加者を指導してくれる元農業指導員の方や栄養士さんなども加わり、人手はさらに増える。
 栽培しているのは、トウモロコシ、枝豆、ジャガイモ、ダイコン、スイカなど。
種蒔きや収穫のときは地元の小学校の子どもたちが「課外授業」として参加する。
 土づくりには、中高校生もボランティア参加。この体験がきっかけで、自分の進路を有機農業関係に決めた頼もしい若者もいる。
 また、豊橋や浜松など都市に住むファミリーに「畝」単位でジャガイモを栽培してもらう活動を展開。収穫期には穫れたジャガイモの目方や大きさによって「重いで賞」「でっかいで賞」などを授与する楽しいイベントも行って、都市と農村の交流の輪も広げている。
 中心メンバーは、みなさん60歳を超える方だが、人口約6,000人の佐久間町は高齢化率が41.5%。エコピュア佐久間生活学校の取り組みは、高齢者が頑張って地域の明日を開く活動としても注目されている。