「アース・地球環境」23号掲載
参加団体の声

大都市におけるバイオマス活用〜平成16年度地球にやさしい環境づくり都民フォーラムから〜
(社)東京のあすを創る協会
 「大都市におけるバイオマスの活用」をテーマに「地球にやさしい環境づくり都民フォーラム」が12月10日に東京都庁の大会議場で開催された。この都民フォーラムは、(社)東京のあすを創る協会が、平成10年度から毎年実施しているもので、この日は、協会の構成団体である都内の生活学校・生活会議のメンバーや都民の皆さんら約250名が参加した。


「バイオマス」は、環境問題のキーワード

「バイオマス」とは、動植物から生まれた再生可能な有機的資源のことである。国は平成14年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定し、バイオマス利用促進に向けて意欲的に取り組んでいるが、多くの人たちにとって「バイオマス」は、全く耳慣れない言葉に違いない。しかし、この言葉が、今や地球温暖化防止やゴミ問題とエネルギー問題を解決するキーワードになっている。
 バイオマスを知ること、そして、バイオマスを活用するために私たちは何をしたらいいかを考えていこうというのが、今回の企画である。
 コーディネーターのNHK解説委員・藤原正信さんが、はじめに、地球環境を変えてしまった化石燃料に代わるエネルギーとして、今、身近に大量に存在する有機物からエネルギーを生み出していくという考え方が求められていることを説明した。
 討論に先立って、バイオマス活用の問題点について、泊みゆきさん(NPO法人・バイオマス産業社会ネットワーク理事長)が基調講演をした。バイオマス(生物資源)とは何か(表1参照)、なぜ今バイオマスが注目されるのか(表2参照)、バイオマス資源の特徴とマイナス点、日本の利用状況、バイオマスをめぐる政策・動き、活用における課題など、この問題の全体を解りやすく話した。
 づ早リストは、基調講演をした泊さん、地域活動に取り組んでいる中島マサさん(墨田区生活学校連絡会会長)、企業側から柳瀬哲也さん(日本ガイシ(株)エンジニアリング事業本部開発部マネージャー)、そして行政側から谷口信雄さん(東京都環境局都市地球環境都計画調整課課長補佐)の4人。
表1:主なバイオマス資源の種類
木質バイオマス 薪炭材、間伐材、端材など
農業廃棄物系バイオマス わら、もみがら、ぬか、ふすま、バガスなど
エネルギー作物 ナタネ、サトウキビ、大豆、ユーカリ、スイートソルガムなど
畜産廃棄物 家畜糞尿など
生物資源由来の廃棄物 生ゴミ、下水汚泥、パルプ黒漆、建築廃材、廃食油など
その他 竹、植物繊維、漁業廃棄物など

表2:なぜ今バイオマスが注目されるのか
・地球温暖化防止対策
・廃棄物問題・循環型社会の形成/リサイクル法への対応
・エネルギー安全保障、エネルギー安定供給
・地域振興策
・新たな戦略産業の育成


日本のバイオマス・エネルギー利用率は1%未満

 日本のバイオマス活用は、世界の中でどの位のレベルにあるのか。泊さんは、日本は今では世界で一番、薪を燃料として使っていない国だという。バイオマス・エネルギーの利用率(エネルギー需要に占める割合)は、1%未満でアメリカより低く、スウェーデンの20%やEUの2010年目標5.75%に遠く及ばないのが現状だ。
 先進的な自治体や企業の勤きはどうか。企業で環境装置の開発にあたっている柳瀬さんは、名古屋市と共同で行った都市部に適した生ゴミのバイオマス化実証実験を紹介。また、3月から開催される愛知万博では、会場内のレストランから出る生ゴミ(1日4.8トン)から燃料電池(350キロワット)をつくり、会場の電気をまかなう実証実験を行うという。


東京はバイオマス・エネルギー資源の宝庫

 東京都内で出る生ゴミは、1日ざっと2.3万トン。糞尿の量は、それよりもはるかに多い。都で地球環境対策を担当している谷口さんは、東京都の地球温暖化対策として、エネルギーの効率的使用、新エネルギーの普及を進めてきたが、さらに推進するにはバイオマス活用に目を向ける必要があるという。
「これまでゴミは、量を減らすために燃やすだけで、エネルギーとして回収する発想がなかった。焼却されC02を排出するだけだった生ゴミ。全部下水に流してきた糞尿。これをエネルギーとして回収できれば、東京の大きな資源だ。チャレンジしたい」。


昔の生活こそバイオマス活用

 中島さんは、古紙や廃食油のリサイクルなど地域で生活学校の活動を続けてきた。中島さんから見れば、ご飯を薪で炊き、消し炭を使い、残った灰を磨き粉にした昔の生活こそバイオマス活用である。経済発展の中で捨て去ってしまった昔の生活には戻れないので、今、環境問題に取り組んでいるという。油は使い切れば廃食油は出ない。ものを大切にし残飯を出さない。とにかく生ゴミを減らす努力が大事との発言に、会場がうなずいた。


仕組みづくりをどう進めるか

 再生可能で枯渇しない、CO2を増やさず地球温暖化の原因にならない、大気汚染物質の発生が少ないなどの特徴をもつバイオマスだが、一方で、化石燃料に比べエネルギーレベルが低くコストは高いこと、広く薄く資源が散在し収集コストがかかるなどのマイナス点がある。バイオマスの活用にあたって分別と収集が大きな課題であり、これには住民の協力が欠かせない。また、廃棄物自体はタダでも、施設設備には費用がかかる。廃棄物処理施設に対する近隣住民の反対も壁になっているという。
 バイオマスをうまく活用していくための仕組みをどう作っていくか。
 家庭の中では生ゴミを分けているので、行政が回収方法を示せば、生ゴミの分別収集に住民は協力できるのではないか。関心の高い地域、団体、マンションなどから先導的に住民の協力体制を作っていく、その際、補助金制度と併せれば効果的だ。集合住宅に燃料電池の設備を置くことや、生ゴミからビニールなどをはがす手間をなくすトウモロコシ由来の容器の奨励などのアイデアがだされた。法的な整備や税制の活用も必要だ。知恵と工夫でコストはかからないと、高いプラント代をかけず素朴なメタン発酵装置で地域のバイオマス活用を進めている埼玉県・小川町の事例が紹介された。
「バイオマスのテーマでこれだけ多くの女性が参加し九集会は珍しい」と泊さん。滋賀県で始まった「葉の花プロジェクト」(菜種油の廃食油を回収して自動車燃料へ)を例に、主婦の発想こそが夫事だと会場の女性の力に呼びかけた。
 会場からは限られた時間の中だったが「廃棄物処理施設の社会的コスト」「ゴミ焼却主義の転換」「メタン発酵の千早ルギー効率」など熱心な質問があった。
 終わりに、藤原さんが「耳慣れないバイオマスがテーマだったが、環境を良くする手段の1つとして、これを推進していかなければならないことをご理解頂ければ、この今は成功」とシンポジウムをまとめた。


「東京のバイオマス元年」に

 都民フォーラムは、「今日が東京のバイオマス元年」という閉会の言葉で幕を閉じた。
 環境問題を活動テーマにしている都内の生活学校・生活会議は多い。また、フォーラム当日は、NPO団体等からも多くの参加があった。バイオマスという環現問題解決の一つの手がかりを得て、明日からの活動がさらに充実することを期待したい。