「アース・地球環境」25号掲載
事例紹介

生ゴミを宝に
佐賀県伊万里市 NPO法人伊万里はちがめプラン理事長 福田俊明
 伊万里はちがめプランは、佐賀県伊万里市を活動地域とする特定非営利活動法人である。そのスケールの大きな活動ぶりは、2004年の当協会主催のふるさとづくり賞集団の部で主催者賞を受賞した。
 同法人は、受賞対象当時の事業を、その後更に発展させていると聞き及んだので、当時の事業概要を再紹介した上で、その後の活動状況を紹介していただく。(以上 事務局)

 はちがめとは、“生きている化石”と言われるカブトガニのことで、伊万里地方の方言で「はちがめ」と呼ばれている。
 このはちがめのように、活動が末長く続くよう、また、美しい伊万里湾を、今の状態で子供たちへ手渡したいという願いを込めて、活動の名を「伊万里はちがめプラン」と名付けたという。


【活動の目的】
 伊万里地域における日常生活におけるゴミ問題を、資源循環型社会の構築の中で解決し、そのような活動を通じて、地域活性化と新たなネットワークの確立を目指すという総合的なものである。


【活動の実績】

生ゴミ堆肥化事業

 活動の発端は、生ゴミや廃食油を捨てる側であった飲食店・旅館の両組合会員が「生ゴミを税金で焼却するのはもったいない。何か活用できないか」と平成4年「生ゴミ資源化研究会」を発足させたことであった。
 平成11年、国、県、市、県商工会連合会及び伊万里商工会議所の支援のもとに堆肥化実験プラント(レーン方式、生ゴミ3トン受入れ可能)が完成した。最初は少人数の参加にとどまった事業も、徹生物の培養実験、市民への啓発運動を経て、生ゴミ分別回収協力事業所60軒、一般家庭グループの生ゴミステーション25箇所、200世帯の参加を得るまでに至った。これにより、1日約1.7トンの生ゴミを回収し、100日以上かけてゆっくり発酵醸成させた700キロの有機質豊富な堆肥を生産している。
 生産された堆肥は、小中学校、農業高校、篤農家約20軒に配布している。「はちがめ堆肥」で生産された野菜や米は、所内の農産物直売所などで好評を得ている。


菜の花エコプロジェクト

 平成12年、「はちがめプラン」に協力していただいている農家を中心に一般市民も参加して結成した休耕田畑の一部を活用し、菜の花による食資源循環リサイクルに取り組んだ。
「はちがめ堆肥」を施した田畑で菜の花を栽培し、安全な栗の花油を生産、活用後の廃食油は回収し、廃食油ディーゼル燃料に精製してクリーンなバイオ燃料として、堆肥化プラント車両やはちがめ広報車などの燃料として活用している。
 この活動には、プロジェクトの仲間をはじめ地元農家の人たちに積極的に参加していただき、約2ヘクタールの田畑の提供と草刈り、辨理、播種、刈り取り、収穫などの協力を得ている。
 中でも、種蒔き、苗の移植、収穫などは子供たちや大学生、市民がボランティアとして多数参加し、業の花まつり、はちがめ市などを農業者と市民が協働開催していく中からは、両者の交流が生まれ、地塗地酒の新たな局面が展開されている。
 この菜の花まつりは、平成16年3月には「第3回菜の花まつりと環境フォーラム」として佐賀大学の全面的な協力のもとで実施され、マスコミにも取り上げられ、広く情報を発信することができた。


子供たちに対する環境学習指導

 生ゴミの減量と分別には、市民の理解と協力が不可欠であることから、「はちがめプラン」では、県から環境サポーターの委嘱を受け、年間10校ほどの小中高校へ出向き指導を行っている。子供たちには、資源循環の大切さや、生ゴミ焼却による自然環境の悪化、子供たちが将来背負うことになる負荷について説明し、その後に「はちがめプラン」の施設を見学させている。子供たちには、臭い、汚いと思っていた生ゴミが、徹生物の力で時間とともに堆肥に変わっていく姿を目で見て、手で触れる体験学習を行う指導を行っている。


市民に対する環境保全の啓発活動

 また、公民館活動での学習会にも積極的に出向くほか、県内外各地からの視察見学者を受け入れ、生ゴミや廃食油の資源化、菜の花エコプロジェクトによる環境保全活動と資源循原型社会の大切さを訴えている。
 これらの活動が一般市民の環境保全意識を高めることとなったことが前出の生ゴミステーション設置につながったものであり、現在、500世帯の生ゴミ分別協力者を目標に活動を行っている。


伊万里『環の里』計画〜クリーン伊万里市民協議会との連携

 平成14年度事業計画において、政府の「21世紀『環の国』づくり会議」を受け、「大量生産・大量消費・大量廃棄」の社会から「持続可能な簡素で資を重視する」社会への転換を図り、万物、自然と共生する『環の里』伊万里を実現すべく、伊万里『環の里』計画を各方面に提案した。その結果、クリーン伊万里市民協議会(14団体会員4,300名)、市民、企業、大学、行政等の連携を得て、伊万里『環の里』計画実行委員会を組織することができ、八つの活動(ゴミゼロのまちづくり活動、花と緑のまちづくり活動、省エネ・省資源・新エネルギー推進活動、菜の花エコプロジェクト事業、豊かな川と海を再生するための活動、環境教育・学習の推進、環境保金型農業の推進、地域通貨の活用)を大きな柱として、総合的環境保全活動に取り組んでいる。


【その後の活動状況】

佐賀大学との連携と共同研究

 佐賀大学とは、平成13年のゼロエミッション研究開発事業以来交流が続いていたが、平成15年度、同大学の地域貢献事業として、むらと町を結ぶ地域資源循環ネットワーク支援事業『はちがめエココミねっと』を発足させ、はちがめプラン活動に対して、学術的・技術的支援を中心に全面的な協力体制を教いて頂いている。
 『はちがめエココミねっと』は、未利用のバイオマス資源の地域的循原則活用の研究と推進を図るため、現在、はちがめプランが展開している有機廃棄物の地域循環利活用を支援し、エココミュニティービジネスとして成功する要件を明らかにし、全国的に先駆けたモデル事業として成功させることを目的としている。
 平成17年度は、同大学の新たな事業として、地域剖生学生参画教育ブログラムが文部科学者に認められ、その一環として「はちがめ」サテライトが設置された。これは、はちがめプランの活動を支援し、佐賀大学のキャンパスの延長(サテライト教室)として活用するもので、現場体験聖教育として注目されている。


地域通貨ハッチー券の発行

はちがめプランでは、コミュニティの再構築や地域経済の活性化・地域資源の循環などを促進させる手段として「地域通貨」の活用を検討し、経済評論家森野栄一氏を招き「まちづくりと地域通貨」の演題で勉強会を開催した。
 地域通貨加盟店が65店舗となった平成16年6月1日伊万里初の地域通貨「ハッチー券」の流通開始となった(1ハッチー100円相当)
・5月20日 菜種収穫に参加したボランティアグループや子供達に御礼として500枚配布
・10月27日 生ごみステーショングループの皆さんへ御礼として6000枚を配布
・11月10日 菜の花移植作業参加者へ500枚配布
 以降平成17年2月までに、その他ボランティア参加の皆さんへ1000枚と、現在までに合計8000枚の配布を行った。すでに文具店、美容院、理髪店、レストランなどから流通の報告が寄せられ、滑り出しとしては順調ではないかと思っている。


海外協力活動への展開

 平成16年8月21日〜27日にかけて、国際協力銀行とタイ環境省主催の「タイ環境教育ワークショップ」が、首都バンコクで開催された。
 タイと日本から、環境省、学校教育関係、地方自治体、NGO、企業などの関係者150名が参加、話題提供として「NPO法人伊万里はちがめプラン」の活動を、伊万里市の担当者井関係長、佐賀大学農学部田中助教授、はちがめプランの福田が、それぞれの立場から発表を行った。
 発表内容は両国の環鏡岩と関係者に高く評価され、今年度の国際協力銀行調査事業「タイ王国の地球環境活動に係る調査〜ネットワーク構築と日本の経験の応用の可能性〜」に東京のNPO法人元気ネット、佐賀大学農学部、NPO法人伊万里はちがめプランが協働して参画することになった。すでに第1回5月23日〜6月現地調査と指導が終り、あと2回の実施が予定されている。