| 「アース・地球環境」25号掲載 |
| 自治体報告 |
| 今、求められるゼロ・ウェイストへの道 |
| 徳島県上勝町 参事 星場眞人 |
| ごみ処理の流れ 上勝町のごみ処理は先進だと言われるが、現実は「周回遅れのトップランナー」と言うのが正しいだろう。貧乏な過疎の町は、潤沢な資金で最先端の技術を導入してごみ処理を進める市町村に追随できず、置いてきぼりを食った。仕方なく独自の処理を進めたのが、今、時代に合ったと評価されているようだ。 具体には、平成4年にごみ処理プロジェクトを組織し、先進企業や市町村の現場を訪ね、ごみ分別の実情や焼却灰溶融処理の研究施設をつぶさに見学させて頂いた。その当時、わが町と比較して余りの隔たりに訪問したメンバー全員がひどいカルチャーショックを受け、これが町を変える原働力になったといっても過言ではない。 翌年には、小さな町の大きな挑戦と呼ばれた『上勝町リサイクルタウン計画』を作成したが、この計画は従来のごみ処理を脱し、資源リサイクルにより上勝町がリサイクル情報の発信基地になるというものであった。 平成7年は、生ごみ処理機のリコール(欠陥商品回収)をきっかけに、町内全戸への生ごみ処理機設置を進めた年である。生ごみはハエや悪臭の原因で、焼却には大変な肋燃コストが必要な厄介物であり、全国初の手段として生ごみ処理機の全戸配布を進めた結果、後々のごみ分別がスムーズに進んだ。 平成9年2月に12分別開始。平成13年1月から35分別。平成15年7月からは容器包装リサイクル法の適用を前提に見直しを行ない34分別となった。 ごみ収集車がない町 上勝町にごみ収集車は一台もないが、これは経済以外に、分別したごみをパッカー車で一緒に集める愚を犯さないためもある。以前、ある都市のごみ分別をテレビで見て驚いた。市民の方々が手間をかけて綺麗に分別したところへパッカー車が収集に来て、総てを一緒くたに投入して走り去ったのだ。この番組で、職員の方は分別が進まないと嘆いておられたが、このまま進めても無意味だろう。 さて、上勝町でも平成10年1月にダイオキシン対策がされた小型焼却炉を導入したが、平成13年1月までの3年間で閉鎖した。もしも、ごみ発電や大型の焼却・溶融炉を導入していたらどうなっただろう。おそらく、一生懸命に資源の大切さを子供たちに説いても、ごみの減量は施設の休止につながるので「資源化」は進まず、他市町村からのごみを集めて燃やさざるを得ないかも知れない。そんな政策を採らず、分別で資源化を進められるのは住民の協力のお陰だと感謝している。 その一例を紹介すれば、上勝町は高齢化率が46%と突出しているが、高齢者等のごみ収集はボランティアが無償で搬送している。こんな町で行政がパッカー車を走らせれば余分なコストがかかる上に非効率であり、何よりも住民意識が低下してしまう。 ゼロ・ウェイスト宣言って何だ? ごみの減量を進めるにはごみになる物は買わないし売らない。そんな住民意識を高める努力が必要な時代である。平成15年7月、アメリカからポール・コネット博士が来町し、講演の中で「上勝町もゼロ・ウェイスト宣言をしませんか」と呼びかけたのである。 さて、ゼロ・ウェイスト宣言とはどんな意昧を持つのだろうか。まず、目的を達成するには目標期限の設定が必要であり、「2020年までに焼却・埋め立て処理をなくする」と同年9月19日に議会が宣言している。この宣言には、『地球を汚さない人づくり』『ごみの再資源化による焼却・埋め立て処分の廃止』『地球環境を良くするためのネットワークづくり』を掲げている。税金を使い捨てる焼却炉は世界中の3分の2が日本に設置されている事実。日本は資源小国と言われるが実際には資源大国(ごみは分ければ資源だ)なのに、その資源を燃やしてまで輸入を続ける変な経済政策を進める事実。こんな不思議なことが次第に見え始めたのである。 不法投棄促進法と資源回収法 今後は全商品の製造段階から「ごみとならない商品開発」が必要であり、デポジットを中心とした資源回収のための法制度を確立する必要もあって、これら環境政策が21世紀最大の課題だと言われており、その優秀モデルがビールビンである。皆さんもビールビンは必ず酒屋さんに返しているでしょう。 現在、環境省が次々と打ち出すリサイクル法が不法投棄を助長している現実と比較すれば、どこが問題かが明白である。ビールビンが最初から資源と考えられているのに対し、環境省の政策は後追い対策であって、ごみ処理のみに目が向き、その処理経費を生産者でなく消費者のみに負担させるのが無理なのだ。商品の製造段階から生産者に資源化を義務づけ、デポジット等により資源を回収させる法律が求められている。 上勝町は今、ゼロ・ウェイスト宣言に基づいて、自らの焼却・埋立てごみの削減に取り組んでおり、リサイクル率は生ごみを除いてさえも80%を達成している。この数値は世界でもトップクラスなのだ。 これからの取り組み 宣言後、『本当に2020年までにごみを無くせるか?』といった質問を頂くが、私は『為せば或る!』と考えている。上勝町は、ごみゼロを実現する手段として、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーを立ち上げた。 さて、言い古されたが日本の企業は優秀である。自動車の排気ガス規制法(マスキー法)をクリアしたのも日本企業だった。「ゼロ・ウェイスト」という一見実現不可能に思われる取り組みも、住民の知恵と優秀な企業の力、そして行政のサポートを併せて実行すれば必ず路は開くと信じている。 地球温暖化防止の京都議定書も、ロシアが批准したことから今年2月に発効した。こうした状況の中にあって、地球の資源を無駄にしないために、目標期限を定め、あらゆる製品を生産する者の責任で処理し、焼却・理立ごみをなくする取り組みが求められるのは自然の流れである。真剣に資源の無駄遣い防止に取り組まねば地球の資源が失われ、温暖化が加速度的に進むことが知られており、このままでは子どもたちの未来が危ない。世代間の公平性を確保し、みんなの幸せを求めて知恵を出し合う中から新しい明日を創って行かねばならない。 最後に ダイオキシンの発生を危惧しごみ焼却をやめるなら、江戸時代に帰る気持ちでごみを資源として再利用するしかない訳で、自ずとごみ分別が求められている。一般論として、分別資源化の説明をすれば大変な作業だけに「総論賛成・各論反対」の議論となり、困惑してしまうだろう。 しかし、日本では昔から「もったいない」という言葉が使われてきた。ノーベル平和賞を受賞したケニアの副環境相ワンガリ・マータイさんが国連本部で「日本ではリデュース、リユース、リサイクル、リペアの『4つのR』を『もったいない』という一言で表している。この言葉を世界に広めたい」と述べられた。言われるまでもなく、江戸時代からつづく私たちの固有の表現は私たちが使いこなし、固有の文化として育てなければならない。 |