「アース・地球環境」26号掲載
企業紹介

宅急使事業における環境対策
ヤマト運輸株式会社グループ経営戦略本部 伊藤 哲
 ヤマト運輸では、公共の道路を使わせていただき、数多くの車両を稼動して事業を営んでいることから、地球温暖化・大気汚染防止対策は最優先のテーマであるとの認識のもと、2003年9月に長期環境計画「ヤマト運輸 地球温暖化防止目標」を策定しました。以下に、高く掲げた目標に向けての取組みの概要を紹介します。

「ヤマト運輸 地球温暖化防止目標」
 当社は、企業としての成長を維持しながら、2012年度のC02排出総量を2002年度比で99%に抑制します。そのために、原単位排出量(宅急使I個当たり)のCO2排出量を30%削減します。
数値目標 2002年度 2012年度
C02総排出量(tco2) 443,279 439,000
原単位排出量(gco2)
(宅急便1個当たり)
450 310


◆目標達成手段として その1
 台車主力の「サテライトセンター」増設→集配車両台数の抑制

 当社では、1997年より、自動車を使用せず台車(一部軽自動車使用)による集配業務を行う「サテライトセンター」の設置を加速し、車両台数削減に取り組んでいます(約3,000台の集配車両の増加を抑制します。)
 サテライトセンターの設置は、市街地や住宅密集地域における集配効率を高め、年々の荷物の増量に伴う車両台数の増加を抑制して、大気汚染物質・地球温暖化ガスの排出量削減を図るものです。
 また、環境配慮のみにとどまらず、違法駐車や交通渋滞の解消など、交通公害を削減する、人と町にやさしい新たな集配システムです。
「地球温暖化防止目標」の中では「2012年度までにサテライトセンターを1,000店にする目標」を掲げました。
 2005年3月末でサテライトセンターは全国に600店。目標達成に向けて、今後もさらに拡大に努めていきます。


地域特性に合わせた2タイプのサテライトセンター

●市街地サテライトセンター
 駐停車の難しい市街地型のビル密集地域については、集配用台車(超静音台車)による迅速なサービスを提供できる拠点として展開。
※車両を使用しないので自動車の排出ガスは発生しません。
●住宅密集地型サテライトセンター
 アパートやマンションなどの住宅密築地については、集配用台車(超静音台車)と軽自動車によりきめ絹かなサービスを提供できる拠点として展開。
※台車または軽車両のため、自動車の排出ガスは大幅に減少します。


◆目標達成手段として その2
 ハイブリット車導入を加速

 当社では、ハイブリット車を今後の当社の中心的な低公害車と定め、2003年の17台をスタートとして導入を一気に加速しています。

インフラ整備とCO2排出量削減を課題に

 当社がハイブリット車の開発に取り組んだ要因は大きく2つあります。1つは、地球温暖化問題により積極的に対応していくため、2つ目は、目標を常に上回る速度で進めている低公官軍導入の拡大によって、これまで主軸としてきたLPG車に再びインフラの問題が浮上してきたためです。
 電気モーターとディーゼルエンジンを組み合わせたハイブリット車は、既存のスタンドで給油ができ、燃費がよく、CO2排出量を大きく削減するため、上記の課題をクリアすることができると考えましたが、当社が集配車の中心としている2tクラスの貨物自動車にハイブリット車はなかったため、自動車メーカーと共同開発し、2002年12月にモニター車を導入。2003年1月より運行開始し、以降さまざまな検証と改善を重ねた結果、8月には本格導入を決定しました。

燃費30%向上を実現

 開発した当社仕様のハイブリット2t集配車には、以下のような特長があります。
@平成15年度規制の排気ガス新短期規制値より50%以上排出ガスを削減。
Aエネルギーを循環させて利用できるため、燃費はディーゼル車に対して30%以上向上。
BC02排出はディーゼル車に比べて30%以上、CNG車に比べて35%以上削減(当社比)
Cアイドリング・ストップ機構を搭載し、信号などで停止すれば自動的にエンジンが切れる。
D平成13年騒音規制の規制値をクリアし、静か。
Eブレーキランニング摩耗30%低減、エンジンオイル消費50%低減など、経済性に優れている。
Fハイブリットから得られる電源により冷凍機を駆動できるので庫内温度制御が可能。

 2012年度までに20,000台の低公害車の導入を目標として、今後も取組みを進めていきます。
 また、同時に、燃費がよく環境にやさしい軽自動車も積極的に活用します。


◆目標達成手段として その3
 全グループでエコドライブ運動を展開

 省燃費で瑕境にやさしく、事故防止にもつながるエコドライブをすべてのセールスドライバーがマスターすることを目標として、ヤマトグループ全体でエコドライブ運動を推進しています。

全社的な取組みを強化し、エコドライブの完全実施を目指す

 エコドライブの実践は、大気汚染物質や温室効果ガスの排出量を削減するだけではなく、燃費向上による経費削減や安全面での大きな効果も望めます。
 当社では、すべてのドライバーが「大気汚染・地球温暖化防止」「安全」「省燃費」を目指してエコドライブの実践に努めてきました。
■当社が推進するエコドライブ運動(「エコドライブヘの手引」より)

3つの取組み
1 発進・加速時 ローギア発進、早めのシフトアップ
2 通常走行時 車間距離を十分とって等速運転
3 減速時・停車時 エンジンブレーキを活用して緩やかに減速

3つの効果
 環境保全・安全運転・省燃費

全セールスドライバーの「エコドライブ講習会」受講を進行中

 各支社では、エコドライブ研修・講習会を積極的に間催し、2003年度は、全国11支社にて「エコドライブ研修」を実施。より効果的な運転方法を指導するため、まずエコドライブ指導を担当する安全指導長、エリア支店長などを中心に教育研修を行いました。
 2004年4月には、その研修結果をもとにエコドライブの完全実施計画を策定、受講対象者を全ドライバーおよびグループ会社にも拡大し、全社的な取組みとして「エコドライブ講習会」開催を継続実施しています。

 また、全社員にエコドライブのポイントを示した小冊子「エコドライブヘの手引」を配付、集配車両への「エコドライブ実施中」ステッカー貼付、さらに各センターでは運動啓蒙「Let,sエコドライブ」のポスター掲示を行うなど、全社を挙げて意識の向上とエコドライブの完全実施に取り組んでいます。