「アース・地球環境」27号掲載 |
らしんばん |
消費者の立場でリサイクルを考える |
消費科学連合会 伊東依久子 |
日本が高度経済成長期を迎え社会が様変わりしつつあった昭和39年、“急速に変化する日々の生活に対応するには生涯教育が欠かせない”との思いから(財)消費科学センター・消費科学連合会が設立されました。センターは消費者の生活科学向上を図り、生涯教育のために各界の有識者を招き『消費者大学』の講座を開設し現在も継続、一方連合会は活動体として社会問題を先取りし消費者の声を政治・行政に提言することを目的としています。 経済成長につれ盛んに新製品が開発され、大量生産・大量消費の結果、排出されるゴミが大きな社会問題となり、その結果容器包装・家電・食品などのリサイクル法が定められました。その頃、当会も一升瓶の空瓶回収に力を入れました。一升瓶は各酒造メーカーとも形状・色は同じく、回収・洗浄の後、ラベルを貼り変え再利用できる優れたシステムをもっていましたが、一升は量が多く重いことなどで敬遠されるようになってしまいました。 折から500ミリリットル入りのリターナブル瓶が提唱され、当会も酒類審議会で提言しましたが当時の冷蔵庫に入れにくいなどの理由で定着しませんでした。同じ酒類でもビール瓶は回収システムが整っていて、回収された瓶は年3回回転させ8年間は使用できるということで環境に与える負荷は少なくすみます。 近頃スーパーでは緑茶や珈排など嗜好品がペットボトルやアルミ缶に入り棚一杯に並んでいます。利便性に富んだ容器はどこででも使え使用後は資源ゴミとして回収されていますが、市販されている量の何パーセントが再利用されているのでしよう。 容器包装リサイクル法の改正が検討されている折から、全国の成人男女300人を対象に内閣府が「環境に関する世論調査」を行い、ゴミ減らしのために「スーパーのレジ袋有料化」について調べたところ、反対21.9%に対し、賛成55.1%と賛成が大きく上回り、その場合の金額は1〜2円という回答が多く、「金額にかかわらず使用しない」という回答は20%であったということでした。買い物にマイバッグを、ということは多くの消費者団体が以前から提唱していますが、調査結果を見るとレジ袋は有料でも使う人が多いと出ています。 便利さに慣れた社会では後戻りしてこれらの容器をなくすことは出来ないでしょうが、便利を享受する消費者各自がゴミの排出軽減に心掛けると共に、排出する時は容器をつぶして嵩を減らす等一手間かけることで運ぶ空気の量がずっと減り、運搬トラックの排気ガスは抑制されるはずです。環境への負荷を小さくするために消費者は、多少の不便を容認しなくてはならないでしょう。 過日開催された容器包装展で、ガラスを薄くし軽量化して割れにくいようにビニールコーティングした瓶が展示されていました。これがビール瓶のように再利用されれば廃棄物の発生は少なくなり、地球温暖化の抑制につながるのではないでしょうか。 京都議定書採択の1997年当時より温室効果ガスの排出量は減るどころか増加している現在、次世代に負の遺産を残さないために消費者は3Rについて意識・関心を持ち、事業者は廃棄物の出にくい製品を考え、その素材や再利用にかかるコストを開示して消費者が3Rに協力しやすいようにしてほしいと考えます。 |