「アース・地球環境」27号掲載 |
ルポ |
「エコ一店一品運動」を全国に広めたい |
東京都立川市羽衣商店街に見る立川商連女性部会の活動 |
「今日ならOKです。」のメールを朝いただき、即刻立川市にある池谷和子さんを訪ねた(取材日平成17年11月7日)。 池谷さんは、立川市商店街振興組合連合会の女性部会長をされている方で、当全国会議主催の全国集会(2月15日開催。テーマは「―広げよう!環境にやさしい「買い物」を―」)のパネリストをお願いしており、そのご挨拶・打合せを兼ねている。往訪先は、池谷さんご夫妻が経営しているお茶の「狭山園」(敬称略。以下同じ)。セールの日にはお客が引きも切らぬというが、「今日は売出しの日ではないのでお相手できます。」と言われほっとしてお話させていただいた。 立川市は、東京からJRで小1時間の多摩地区の中心都市で、交通の要衝である。駅前は大型店が出店し大都会の趣があるが、1駅離れると郊外の住宅地であり、都心へ通勤・通学する者のベッドタウンでもある。 狭山園がある羽衣商店街は、そうした郊外の、一店一店が点在する地元客対象の商店街である。この羽衣商店街が名をなしているのは、「エコ一店一品運動」の展開が2003年度東京都グリーンコンシューマー奨励賞を授賞したことにある。 「エコ一店一品運動」に加わっている店では、店頭に「エコ一店一品」と表示したミニ看板を飾って、それぞれの店のおかみさんが思い思いの環境活動を行う。池谷さん発信のメールより一例を挙げると別表のとおりで、その活動は決して背伸びしたものではなく、各店が店頭サービスの形でさりげなく行うため買い物客に受け容れられ、長続きしているという。店の業種・業態で言えば、物販業もあればサービス業もある。エコの区分で言えば、リフューズ(ゴミとなる容器を使わない)もあればリデュース(簡易包装)もある。リユース(びん回収)もあればリサイクル(ゴミとせずに肥料とする)もある。ここでは「4R」のいずれもが行われている。狭山園の例で具体の活動内容を紹介すると、先ず店内足元に「エコ茶ん」と名付けた茶ガラ乾燥器を置いている。これで乾燥した茶ガラを、捨てることなく肥料にしたり、エコドールという手作り人形の中綿として入れたり(お客様のアイデアだそうだ)、エコ枕にしたりとリサイクルしている。茶ガラ乾燥を始めたきっかけは、池谷さんご夫妻が仕入先の静岡県掛川市の生産者松下さんを訪れたとき、松下さんがつぶやいた「飲んだあとはゴミだよね」と言った一言であったという。 (注)松下さんは、筆者が本誌25号で掛川市のエコロジーライフ研究会をルポしたとき、有機栽培茶を栽培している方として紹介した松下園であるというから、世間は狭い。 「エコ一店一品運動」は、立川市商店街振興組合連合会が運営するケーブルテレビ「アネックス立川」の羽衣商店街企画番組「まいどTV」で、地元消費者に視聴されている。ユニークなのは、「エコ探検隊」という番組で、小学生が2〜3人のグループを組み店々を探訪して、店側が自店の活動を紹介するもの。子供達は、TVに出演する楽しさ、緊張感を体験するとともに、環境問題の大切さが自然に学習できる環境教育となっている。 また、同商店街では、これとは別におしゃべり情報誌「はごろもWa!Ha!Ha!」も発行しており、活動内容をPRしている。 「エコ一店一品運動」の素晴らしさは、店側の運動が消費者側に押付けでない形で浸透していることである。その秘訣は、羽衣商店街発行のハローチップにある。ハローチップは100円買うごとに1枚もらえ、台紙1冊(200チップ)貯まると250円のお買い物ができる。台紙には、参加店舗の紹介とサービスの内容が書いてあって毎月8の付く日はハローチップが2倍付くなど、消費者の買い物心をくすぐる。「狭山園」は3倍セールも行うというから、消費者もセールの日を逃さないようチェックしているだろう。でも、ハローチップをもらえるだけでない「地球環境にちょっとだけ役立っている」という気持が店側と消費者側の双方を幸せにするという確信が、ハローチップが地域通貨として定着している証だろう。更には、ハローチップを貼った台紙を持ってゆけば、地元の金融機関で預金ができるというから、正に本物の地域通貨だ。 たまたま取材中に見えたお客が、商品を受け取る際、持参した他店のレジ袋をすっと差し出し、池谷さんがそれに品物をいれる両者のしぐさから、それが毎日店頭で繰り返される買い物の姿であることが見てとれた。大手スーパーやコンビニで、どうすればマイバッグ運動を定着させることができるかとレジ袋有料化など試行錯誤しているとき、ここでは日常の買物にマイバッグが使われている。店側が努力すれば消費者側も応える良い例である。 同商店街では、今後推進する活動として「タッパー文化をつくろう」と呼び掛けている。タッパーを持参することでゴミを出さない運動である。 実際に、中華料理店では、食べ残りが出たときはタッパーに詰めて持ち帰ることを勧めており、麹屋では、タッパーを持って手作り味噌を買いにきた消費者には、量り売りして50円引きとしている。消費者はそのままタッパーを冷蔵庫に閉まい、すぐ使えるから何と便利なことか。 と消費者側間だけでない。店同士でも例えば洋服屋がハンガーをクリーニング店にあげたり、袋をお菓子屋にあげたりと、おかみさん同士が仲良しだからできるゴミをゴミとしない取組みも行っている。 池谷さんは、「「エコ一店一品運動」が、羽衣商店街から立川市中に、東京中に、そして日本中に広がるといいですね。」「エコがお客さんと一緒に楽しくコミュニケーションするツールの一つになれば素敵だと思います。」とおっしゃっている。 エコ一店一品運動の一例
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