「アース・地球環境」28号掲載 |
事例紹介 |
ドイツ情報(パートU) |
熊代聖子(汝の花生活学校) |
伝統を引き継ぐドイツ文化 10年来のドイツの友人(夫の友人)と街のカフェでのことでした。 友人「何百年後、私達がいなくなった後も、こうしていつもの様にお茶を飲む人がいて、おめかしをした若い人達が街を賑わすのだろうかな〜」 こく普通の独り言の様ですが、私には大きな意味が感じられたのです。 戦争の影響こそあれ、何百年何千年も変わらない街並み、そしてそれを大切に引き継ざ、決して変えようとしないドイツの人々。 そこには、お金で買えない民族の誇り、伝統とも言うべきものを感じたのです。 経済的にも、土曜日、日曜日も店を開け、労働時間を長くすれば雇用も増え、経済的活性化は間違いないと思われますが…。 これだけ失業率を抱え、年金問題にも頭を抱え、そして東ドイツと統合し、ヨーロッパ共同体になることで更なる重荷を背負うことになったドイツは、それでもしきたりを頑なに守り続けているのです(環境を守ることで)。 友人「あそこのかどにある駄菓子屋さん、子供のときよく行った。売り子のやさしいお姉さん、もう死んでしまったかな〜」 「あの教会はいつも家族で行っていた。クリスマスのときも楽しかった…。今でもまったく変らない…。」 私「なぜ近代的な建物や便利なコンビニエンスストア等を入れないの?」 友人「近代的な建物? 便利なコンビニ?」「その価値は?」「便利さの価値はそんなに大切なものなのかな〜」 言葉に詰まった私は、自分の思考回路が経済観念を基盤にした便利さを優先していることに気付いたのです。 何世代も続く古い街並み、そこには、一人ひとりが生まれ育った環境の思い出を、次の世代の子供達へのメッセージとして託しているかの様に見えたのです ヨーロッパ一の高層ビルが立ち並ぶフランクフルト、金融業の象徴とも言うべき摩天楼の街、そんな街の中にも、ドイツの詩人・ゲーテが生れ育った家とその街並みが当時のまま、ひっそりとたたずんでいるのです。 「ゲーテやベートゥヴエン、モーツアルトといったヨーロッパの世界的文化人達もこうして同じ街に暮らし同じ夢を見ていたかもしれない」と、ふと私は、彼らの声を聞いた様な気がしました。 何百年何千年単位でのヨーロッパの都市や環境計画。頑丈で長持ちするものを造る「もの造りのマイスター」。ドイツの文化背景には、何世代も受け継がれた後の世代の担い手に向けた無言のメッセージが託されている様な気がします。 ヨーロッパ、そしてドイツは、街中の教会の鐘の音の中、伝統という素晴らしい贈物を引き継ぐことで、新たな独自性(古いものと新しいものの調和?)街づくりを見出している様です。 日本もドイツも、伝統と言うべき素晴らしい文化を授かっています。 しかし今の日本は、悲しいかな経済優先思考の結果、世界も認める日本の素晴らしい文化の影が少し薄れかけている様な気がします。 戦後、焼け野原から再スタートし、経済的な発展をしてきた日本は、今、先進国の責任とも言うべき課題、地球環境を守る(地球温暖化にみる地球の変化等)ことを率先して実行。それには一人ひとりがライフスタイルを変えていかなければならないと思います。 ドイツは見ています。戦後共に歩んできた日本。歴史と伝統がある日本の姿を。 私達は、日本の風土にあった環境生活、昔からの独自の生活習慣を思い出し、実践し、後世代へと引き継いでいく努力をしましょう。 ドイツで息づく日本文化 今、ヨーロッパ、ドイツで注目され、大人気なのは日本食です。これこそ日本風土から生まれた伝統文化だと思います。 私「どうして日本食が人気なの?」 嫁「日本は世界一の長寿国。元気で長生きできるのは、日本食が身体に良いことが分かったからー」それに「とてもおいしい!!し、日本の食品や日本国産は安全を第一に考えているから」。 私「少し高い値段と思わない?」 嫁「安くて沢山買うより、少し高ければ沢山買えないので大切に最後まで食べるから日本の食材を選びたい」。と会話をしながら隣町のフランクフルトに買物に行きました。 買物には、私は自転車で、嫁はローラースケートで行きます。 私「これも省エネ?」 嫁「省エネ? …になっているのでしょうけど、あまり意識をしていなかった」。 サイクリングロードが広く、自転車に乗りたくなる様な環境整備です。車(自動車)も殆ど走ってなく人も少ないので、私でも自転車に乗って買物に行けます。自転車も折りたたんで電車に持ち込めるので、車を必要としない生活です。それと、川を使った交通もあり、自転車を持ち込んで川沿いに隣の街に遊びに行くことも度々で、祖父母が生活していたときと変らないのんびりとした国々の暮らしです。 ドイツの我家をちょっと紹介してみます。 ドイツの我家の息子達の部屋は、畳のごときカーペットにお膳(ちゃぶ台?)を置き、座るお座敷スタイルです。三度の食事も日本食でお箸を使っています(親の私達は、椅子にテーブル使用なのですが…)。それに冬はコタツを使い(省エネ?…)、祖父母の時代を思い出す生活スタイルを実践していますので、来客が日本文化に接した気持になり、友人の出入りが多い家です。 友人が集まると色々な話題が出て、とても勉強になります。その中でいつも出る話は「日本のこと」。ほめたり、心配したり。祖国を思う同胞のふる里への想いは熱いものを感じます。 ふる里づくりをしている私達、子供がふる里と呼べるふる里づくりをして行きましょう。 |