「アース・地球環境」31号掲載
講 演

日本の「つつむ」文化を考える
石川県立大学生物資源工学研究所 教授 高月 絃
 今ご紹介いただきました石川県立大学の高月です。つい京都大学と言いそうになるんですれども、1年ちょっと前ほどから石川の方へ来まして、雪国で密かに暮らしているんですけれども、ときどき東京へ来ますと本当に人が多いのでびっくりします。そんな冗談は差し置きまして、今日はつつむ文化ということを切り口にして環境問題、特に省資源、省エネルギーの問題を考えようということで、最初約30分ばかり私時間をいただきましてお話さしていただいた後、織先生のリードでシンポジウムがあるということで、長丁場になりますが宜しくお願いしたいと思います。
 それでは最初私の方の話をパワーポイントでさせていただきます。ちょっと会場が暗くなますが、暗くると眠くなるという方もおられますが、浸画も沢山出てきますので、これを見ていただきたいと思います。
 今日与えられましたテーマが、生活とつつむ文化ということですので、その切り日として、普通我々が衣食住と言いますけども、それらが各々つつむ文化に繋がってまいりますので、その辺を最初にちょつとお話させていただいて、後半、食に関係した容器包装材、この辺の話に持っていきたいと思っております。
 衣食住の衣と住は、どちらも丈夫で長持ちということが期待されるものでありますけれども、中身を守るという意味でのつつむ材料ですね。
 先ず衣服の方ですけれども、40年前と現在でどれぐらい我々が衣服を使う様になったか絵で見てもらいますと、ご婦人用の絵ですけれども、40年前は1年間で0.5着ほど、2年に一度ほど新しい洋服を作るということであったのですけれども、現在は1.7着、約2着作ると。これはあくまでも子供から大人まで全部ひっくるめての数字ですので、若い女性ですとこんなものじゃないですわね。もっと沢山になると思います。中でも特徴的なのが靴下です。戦後何やらが強くなつたと言いますけれども、特に靴下が使われている、又最近違ってるとは思いますけれどもこんな状況になっています。
 次、実は衣服というのは、非常に単位当たりのエネルギーが掛かったものなんですね。衣服を作る、洋服を作るには沢山の工程がありまして、グラム当たり70kカロリーぐらいのエネルギーが掛かっているものなんです。他のものと、紙とかレジ袋とかを比較してみますと、いずれもこれくらい(12〜15) のオーダーで、衣服というのは本当に沢山の工程を掛けて、そしてエネルギーが掛かったものである訳です。従ってそれだけ本当は貴重な大切な、エネルギー的に言いますと資源な訳でありますけれども、この頃は直ぐ飽きてしまうと、流行が過ぎるとポイと捨ててしまう訳ですけれども、本当はこれぐらい大変なものだということで、「作るのは大変だけど捨てるのは簡単!」というタイトルを付けましたけれども、こんなことを衣服について考えていただければと思います。
 ですから、衣服というのはできるだけ長持ちさせて、リユースお下がりができるものならそうしていきたい対象物だいうのは、数値的にもそういう意味があるんだということを知っていただきたいと思います。
 次は、衣食の次の住、建物の方なんですけれども、実は日本の建物というのは、大体寿命が30年なんですね、木造の建築であれ、コンクリートの建物であれ、非常に早い我々人間の寿命よりずっと早く建て変わっていくというのが日本の住宅の寿命なんですね。ところが例えばヨーロッパ、アメリカの辺を見ますと、ものによりましては100年以上の平均寿命というところが多い訳です。それに比べますと日本というのは、「家も使い捨て?」というタイトルを付けましたけれども、非常に早いスピードで建物を壊していくという生活のスタイルをしているので、ここも考えないといけない訳です。
 何故建物がそれほどエネルギー的に、は資源的に大切かということなんですが、これは、4人の家族の人が1年間エネルギーを消費する比率を見ている訳ですけれども、衣食住の比率を見ますと、実は圧倒的に住のところにエネルギーが偏っている訳ですね。住宅というのは、建てるときもそうですが、使うときに非常にエネルギーを消費する素になっているところです。ですから、住がエネルギーを消費する上で大切だということも理解し、建物も長持ちさせるということが非常に重要なものである訳です。日本はすぐリフォーム或いは建て替えということをやってしまいますけれども、建てるときから次のことまで考えた寿命の長い建物がこれから本当は求められるということです。
 さて、残りました食の方の話で、容器包装リサイクルの話に持っていきたいと思います。これは私が長年京都でゴミの調査をしていることはご存じかも知れませんが、その一例をお見せしたいと思います。あるマンションでゴミの調査をやつたときの状況を絵で描いております。台所のゴミと言いますと食の後始末になりますけれども、これを克明に選り分けるということをやっております。よほど物好きでないとこんなことをやらない訳ですけれども、こういうことをずっとしっこく30年やっております。
 これ選り分けている訳ですけれども、こんなこと考えるのは私くらいなもので、責任上私も一所懸命、これ(左)私ですけれども選り分けております。何をしているかと言いますと、要は、台所のゴミがどれぐらい食べ残しがあるかということを見ている訳です。調理くずと食べ残しの比率を見ようということをやっている訳です。これなかなか難しい作業でありまして、どこからが食べ残しでどこから調理くずかということを見分けるのが、最初は大変なんですが長年やってくると矢張り目が肥えてきますので分かるんですね、恐ろしいもので。ここは調理くずで、ここは食べ残しと選り分けてまいります。
 結果をお見せしますと、こちら(右)が調理くずですね、いわゆる魚の骨とか野菜の皮とかですね、こちらは正当な台所のゴミですけれども、問題はこちら(左)のピンクの色を付けました食べ残しの部分です。台所のゴミの中から、結構たばこの吸殻とかテイーバッグとか、本来お腹の中に入らない様なものがある訳です。こういうものを除きますと、ほぼ4割近くが食べ残しということになる訳です。これが実際の台所の中身になる訳です。特にこの赤い色を付けましたところが、買ってきたまま捨てているというのが台所のゴミのうちに13%ぐらい含まれていると、これが現実な訳です。
 これは京都で50軒の家庭のゴミ袋、約50軒分の台所のゴミを選り分けていきますと、これだけ出てくる訳です。京都の人は贅沢だという様に、もったいないことをしているなと思われるかも知れませんが、もし東京で同じ様な調査をしても、矢張り同じ様なゴミが出てくると思います。京都はご存じのとおり結構始末をする文化があるところなんですけれども、それでもこれぐらいの沢山の手つかずの食品が捨てられるという訳です。僅か50軒の家庭のゴミの中でこれだけ見つかってくるというのが現実です。いかに日本というのは、飽食の生活のスタイルをしているかというのが分かるかと思います。こういう食品を包んでいる包装材、これを見てみたいと思います。
 この部分ですね、先程ゴミの調査をしましたこれ(左)が即ち湿ったゴミの状態での重さの比率です。ここ(中央)が乾かしたときの乾燥した状態、こちら(右)が容積で比率を見たときです。今ピンク色にしているところが、包装材、容器包装材、特に食品を包んでいる様なものが多いんですが、その比率が容積比で見ますと6割、半分以上は包装材だと、こういうのが今の家庭のゴミの状況になっている訳です。したがって、ゴミを減らすということが盛んに言われていますけれども、この(容器包装材)ところをいかに減らしていくかということが非常に大きなポイントになります。そういう意味で、今日の食品を包んでいるものを如何に合理的に減らしていくかという、これを議論していきたいという様に思う訳です。
 正にこの比率になっている訳で、特にプラスチックが非常に多いという訳です。

 ちょっと変な浸画を出しましたけれども、これは「こいつは高カロリーだ…」と言っているんですけれども、何を意味しているかと言いますと、要は食品を包んでいる包装材に掛けたエネルギーと、その中身の食品のエネルギーとを比較している訳ですけれども、先ず製造の方、包装材の製造のエネルギーを、一応一人が一日どれぐらいエネルギーが使われたかという計算にし直しますと、大体2500〜2600kカロリーぐらいになる訳ですね。
 一方、我々が食べている中身の方の食料はどれぐらいかと言いますと、約1000kカロリーぐらいなんですね。ですから、実は中身よりは、包んでいる方がエネルギーが多く使われているんだという勘定になりますので、したがって「こいつは高カロリーだ…」という漫画のタイトルに繋がる訳です。
 しかもですね、この容器包装材の材質的なことを言いますと、紙、プラスチックというのが出てきますけれども、いずれも非常に高い比率で、包装材として使われていると。紙というのは、新聞とか本とか使われるイメージがありますけれども、4割近くは包装材になっていますし、プラスチックも6割近くは包装材に使われているということです。
 その典型的なものがこういうトレーになる訳ですけれども、これ実は同じ様に、京都の50軒の家庭のゴミから引っ張り出したトレーですね、こちらが発泡トレー、透明トレー…僅か50軒でこれだけ出ますので、いかに沢山のトレーが日本では消費されているかという訳です。
 ちょっとした買い物をしますと必ずこういう形でトレーがついてまいります。勿論、包装材は全部なくす訳にいきません。必要な包装材も沢出ある訳ですけれども、ちょっとやり過ぎではないか。人参一つとりましても、レモン一つとりましても全部ついてくると。しかも、日本の場合まだサービスでレジ袋がついてくると。こういう形態はどこまで許されるのかいろいろ考えてみたいと思います。
 包装材というのは、それなりに意味がある訳でして、元々は食品を保存するという非常に重要な役目を果たしてますし、場合によっては酸素を入れないようにして腐敗を防ぐ様な役目もある訳です。それから、内容の表示。何が入っているか、あるいはいろいろな決まり、消費期限なんかも含めまして、表示をしないといけないという役目を持っています。それから、運搬が利便になるとか、或いは装飾性、見た目が良くなるといういろんな面の役割を包装材・容器は持ってる訳ですけれども、どうも必ずしもこれで満足している訳ではなくて、装飾性、過剰包装にウェイトが掛かり過ぎているんではないかと、この辺も議論の対象になるんではないかと思います。
 包装材の中でも最近よくレジ袋の話が出てまいりますけれども、そこのところを見てまいりたいと思います。家庭の中のプラスチックの比率というのを見ますと40%くらいがプラスチックで、そのうちの20%ぐらいがレジ袋で占められているということですから、家庭ゴミを容積で見ますと、約1割近くがレジ袋とかそういう包装用の袋で占められている、これが現実です。
 したがって、もしも皆さん方がマイバッグなり風呂敷を持って動きますと、これぐらいプラ袋とか紙袋が節約できると、こういう計算が出てくる訳です。
 「温故知シンプルライフ」と変なこじつけをしましたけれども、要は風呂敷というのは、いかにいい包む材料であったかということをちょっと考え直して見たいと思う訳です。
 かなりプラスチックの包装材が多いというお話をしましたが、何故その辺を問題にするかと言いますと、化石燃料であるプラスチックというのは、今問題になっています温暖化の原因の二酸化炭素を出してしまう。
 紙とか木のものはそれなりにバイオマスですので、カーボンニュートラルと良く言われる様に、一方では出しますが一方では二酸化炭素を吸う役割を木や草は持ってる訳ですが、そこでこちら(紙、木)よりはこちら(化石燃料)の方が問題になると。バイオマスよりは化石燃料の消費を如何に減らしていくことが重要かということになる訳です。
 今更ながら、ゴミというのは最初からゴミではありませんで、いろんなものからゴミになっていく訳ですから、その元を辿って行きますと、結果的には地球の貴重なエネルギーや資源に辿り着きますので、ゴミを減らす或いはゴミを出さない様に努力をする、こういうことは、行き着きますと、単にその自治体のゴミを減らすということでなくて、地球環境、或いは資源、エネルギーを如何に節約していくかということに繋がる訳です。そういう意味で、この全国の方が集まっておられる省資源、省エネルギーの意味は出てくる訳です。
 それを解決していく為には、パートナーシップが大切だということを良く言われております。
 いろんな取組みがある訳ですけれども、この三者が協力し合って環境問題を解決していこうということが今の流れになっています。

 その際、情報を共有するということが、この三者の連携に非常に重要なポイントになっています。情報をなかなか出し合わないということになりますと、不信感が出てくるという訳です。今問題になっています不二家の問題なんかも含めまして、なかなか本当のことが漏れてこないということが原因になっていますので、ちゃんとした情報を出し合うことが信頼回復に繋がっていくという訳です。
 包装業界、それなりに今努力をしておりまして、昔の様な正に過剰包装という時代から少し変わっています。例えば、これは2005年のパッケージのコンテストで表彰を受けたものですけれども、こういう非常に簡易な包装が実際に賞を受けて奨励される様な状況になってきていますので、その業界で努力されていることも事実なんですが、 一方ではまだなかなか進んでいない部分もあるという訳です。
 我々消費者側は、市民側は、いわゆる「消費者から持続者へ」という流れがこれから重要になってくる訳です。
 容器の話がおそらくまた出て来ると思いますけれども、1回当たりにどれくらいエネルギーを使っていっているかを計算しますと、ガラスビンが環境的には何度も使うのが一番いいという結果になっていますけれども、消費者の使い勝手という面では、余り使われないという状況になっています。
 「グリーン投票」というタイトルを付けましたけれども、これから重要なポイントで、皆様方もグリーンコンシューマーとしての役割が重要になる訳です。環境に配慮したものを率先して買い物のときに選んでいくということをやりますと、次第にこれが売れ筋になっていきますので作る方も売る方も、環境に配慮したものを世に出していく。そうなりますと全体的には環境が良くなっていく方向に進むだろうと思います。それをついつい見栄えだけで買ってしまうと宜しくないということで、グリーンコンシューマー運動というのが非常に重要になってまいります。
 これは日本から始まった訳ではなくて、イギリスとかあちらの方から始まった運動ですけれども、日本では、そういう環境のために少々高くっても買いましょうというところまで消費者のレベルが上がっているとは言い難い訳でありまして、この辺がまだまだ課題が残っているというところです。
 とは言え、最近は「グリーン購入ネットワーク」と言って、できるだけ環境に配慮したものを選ぶ全国的な組織も出てまいっております。

 これつい最近出ました本です。私も推薦していますけれども「グリーンコンシューマー」という本で、京都の環境市民というところの秋本さんが書いた本で、日本におけるグリーンコンシューマーが、どこまで来てどこが課題かということがうまく整理されている本です。
 グリーンコンシューマー運動というのは、ついついリサイクル製品を買いましょうという風に聞こえるかも知れませんが、実は一番重要なポイントは、ここ(1)なんですね。「必要なものを必要なだけ買う」。これがグリーンコンシューマーの第一原則でして、しかも「できるだけ長く使えるものを買う」と、ここが次のポイントなんで、ここ(2)だけを強調されがちですけれどもそうじゃない、そういうことを強調しておきたいと思います。
 日本は循環型社会ということで、さかんにリサイクルと言われておりますけれども、どうもリサイクルは一所懸命やるグループはあるんですけども、一方ではファストフードとか、或いはコンビニとか百円ショツプとか、どんどん安いものが出てくるとこういうことで、どうも「矛盾環型社会」ということで、一方では一所懸命努力する人と、一方では安売りばっかりをするグループがあるという格好になっている、リサイクルが栄えてなかなかゴミが減らないとこういうことです。
 この漫画、私が書いた漫画で一番良く使われる漫画ですけれども、どんどん溢れてくる使い捨て商品を一所懸命戻しているのがリサんですけれども、本当は、この人(左から二人目)が指摘している様に、「元栓を閉めた方が早道じゃないか?」と、これは正にそうでありまして、ここを閉めないで開けっ放して一所懸命努力してましても、なかなか省資源省エネルギーには結びつかないと、こういうことを表してる漫画で、良く使われる漫画です。私は幸い著作権は問いませんので、是非又ご利用下さい。
 便利になるということは、非常にいい面もあるんですけれども、裏返しますと、沢山の資源やエネルギーを使っていることにつながるという漫画です。これ「お茶の時間」というタイトルを付けましたけれども、昔は、お茶の時間はこうやって(左)たしなんで、ゆっくり文化を楽しんでいた訳です。そのときには、殆どゴミは出ません。これ(左から2番目)が昔の通常のスタイルですけれども、お茶殻が少し出ます。でもどんどん短くなりまして(3番目)、5分くらいで飲みたい人はティーパックを使います。最近はそれも大変だということで(右)、自動販売機からペットボトルでお茶を飲むというスタイルになっていっているんですけれども、実はその裏で常に使われていくのが資源とかエネルギーです。
 即ち便利になる快適になるということは、必ずその裏側で沢出の資源やエネルギーを使っていることの結果なんだと、ここを矢張り考えないといけない訳です。
 これ実は、イギリスで漫画展を去年やったんですけれども、一番受けた漫画の一つです。ちょっと余談になりましたけれども。
 そういうことで、こんな調子でどんどん地球の資源エネルギーを使っては使い捨てていっていますと、だんだん危機的な状況になりまして、今いる間にも揺れてきている状況になってきているんですよと、「いつまで、持続できるか?」というタイトルの漫画です。
 結論的ですけれども、こういう資源とかエネルギーが限られた中で、これからどうやって引き続き持続可能な社会を築けるかということを考えますとき、今の様に世界中から資源、エネルギー或いは食糧も買い集めて、いい生活をするというのは考え直さないといけない、人間食べるものがなくなると大変ですから、農を中心にした地域での循環共生型の社会を目指さないとだめだろうという、これはあくまで私の見方です。
 これをちょっとイメージ的に描きますと、こういう地域でできるだけ循環する社会の中で、しかしこういうコンピューターも必要ですし、便利な生活もある程度はやっていかないといけないんですが、そのためには自然エネルギーを大切にする様な、要は、その地域地域で小規模な循環ができる様な社会を創っていくということがこれから重要だろうと。今グローバル化の時代ですけれども、地球の中での持続可能な社会をやつていくには、ここは一つの重要なターゲットになっていくんではないかと考える訳です。
 今日の「問題提起」としまして、「つつむ」文化というのは最近は利便性が優先されて来ましたけど、ここは考え直さないといかん、もう使い捨ての文化になっている、本来的には「つつむ」という美しい文化が使い捨ての文化になってきているということを考え直さなくてはいけない、したがって、今一度リユース、或いは長持ちをする文化へ戻さないといけないんではないかと。これはひいては温暖化を防ぐための脱石油と言いますか、化石燃料への文化ということをやっていかなくてはいけないんではないか、ということを私側から問題提起させていただいて、終わらせたいと思います。どうも有難うございました。

問題提起
・「包む」文化
 利便性が優先され、
 現在は使い捨て文化になってしまった。
 今一度、リユースなどをして、
 長く大切にする文化ヘ
 そして
 脱石油文化ヘ