「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<食育推進活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 内閣官房長官賞

野菜大好きな子どもを育てる「緑をたっぷり召し上がれ」事業
神奈川県横浜市緑区 緑区食生活等改善推進員会

 横浜市食生活等改善推進員協議会に属する緑区食生活等改善推進員会(愛称:ヘルスメイト)は「私たちの健康は私たちの手で」を合言葉に地域でのふれあいを深めながら「運動・栄養・休養」の調和のとれた生活習慣の確立をめざして健康づくり活動を続けています。また、仲間の輪を広げることにより地域ぐるみの健康づくりをめざしています。横浜市は18区からなり、緑区は北部に位置して緑に恵まれています。その中で平成18年に結成37周年を迎え、現在136名の会員で健康づくりのためのボランティア活動を行なっています。


事業の成り立ち

 近年の活動では子どもからお年寄りまで、区民全体の野菜の摂取量増加を目指した「緑をたっぷり召し上がれ」事業に取り組みました。おやこの食育教室、子どもや若い世代へのふれあい交流等の活動で地域の食育推進へと展開しています。
 事業の成り立ちは平成15年に活動テーマを「心と体においしい食事・伝えていこう家庭の味」に定め、これに基づき、家庭の味とはどのようなものか、また食文化の伝承を活動の中で推進していくために、「おふくろの味」について実態調査を実施しました。
 料理の種別は野菜料理が一番多く、おふくろの味は、201品目にわたりました。このことは食文化が多様化され、料理の種類が広がってきたことが回答に表れたものと考えられます。
 「おふくろの味」の多くは野菜料理で占められていましたが、健康日本21では野菜を1日に350グラム以上摂取することを目標に掲げています。しかし平成16年度国民健康栄養調査の結果からも平均266.7グラムで目標量には到達していません。そこで緑区民は日常の食事において野菜料理が定着しているのか、野菜を目標量食べているのかを把握するために摂取量調査を行ないました。
 結果により、野菜は食べていても摂取量が不足していることがわかりました。また、若い人ほど野菜を食べていませんでした。この結果より基づき平成16年度より、「緑をたっぷり召し上がれ」事業を企画し緑区福祉保健センターと協働で実施しています。この事業は、あらゆる年代を対象に野菜のおいしさを知り、毎食野菜を食べる習慣を身につけ野菜の摂取量の増加を目的にしています。


料理・ウォーキングマップ集作成

 料理、ウォーキングマップ集「緑をたっぷり召し上がれ」は、会員が、わが家の味を持ちより130余りの料理の中から豊富に出回っている地場産の野菜を中心に、春夏秋冬各10品を選び本にしました。レシピの脇には、地域の方々から聞いた野菜の話しや子どもたちに出荷される前の野菜を伝えるために、収穫前の野菜の写真を撮り一言メモとして載せました。昔から親しまれている、おふくろの味も掲載し、次世代の方々に受け継いで欲しいと願っています。
 一番おいしい旬の野菜を食べるために、緑区でとれる農作物の時期を調ベカレンダーにしました。
 本の後ろに掲載されていますウォーキングマップは各地域おすすめのコースを、ヘルスメイトが何回も歩いて作成しました。緑区内の身近な所で1〜2時間くらいで歩ける所を選び地域で採れる野菜ものせて、直売所も紹介しています。この本は、私たちの汗の結晶と共に、心というスパイスを盛り込みました。また、緑区にもこんな素晴らしい所があったのだ!と再発見することができます。一部200円にて有償配布を行ないましたが、皆さんに親しまれ好評のもとに3000部完売しました。


イメージソングCD製作

 冊子を製作している時にイメージソングを作ろうという提案が持ち上がりました。緑区の野菜とウォーキングマップの風景が目に浮かぶような歌にしたいと考え、春夏秋冬ごとに収穫される野菜、果物と各地区の名所を歌詞にしました。曲は地域の方の協力を得てポップ調とクラシック調の2曲完成しました。ポップ調は区内の小学生にも協力してもらい一緒に歌いました。練習を重ね35周年の式典に歌をお披露目し区民の皆さんに聴いてもらいました。また、会員、会員の家族、地域の方の協力でCDを自主製作し、原価にてお分けしています。できた曲は親しみがあり、子どもたちが、歌から季節の野菜を覚え口ずさみ、幼い子も曲が流れると自然と身体を動かしリズムを取ります。


「緑たっぷり体操」創作

 その様子を見て、振りをつけたらもっと歌が親しみやすくなると思い、体操を創作しました。クラシック調は、スローテンポなので太極拳を取り入れ、ストレッチの要素も考慮しながら作りました。年配の方にもわかりやすくゆっくりしました。ポップ調は、エアロビックスの要素を取り入れ運動不足解消、肩こり予防を目的として作りました。図解したプリントも多方面に配り、活動時に体操をしています。
 家庭でも気軽に体操を楽しめるように、ビデオの作成に取り組みました。出演は、振り付けをした人が担当し小学校のコミュニティールームの一室を借りて撮影をしました。編集は、ヘルスメイトや福祉保健センターのアドバイスやアイデアを持ち寄りました。緑区管内の保育園、学校などの給食施設に配布し体操の普及とともに野菜大好きな子どもたちの育成に努めています。


オリジナル「緑たっぷりクッキー」の開発

 野菜大好きの子どもたちを育てるためには、幼児期から野菜に親しみ、おいしく食べる習慣を身につけることが大切です。おやつからも野菜が取れるようにヘルスメイトが知恵を絞り地場産の野菜を使った「緑たっぷりクッキー」を、5種類(大根葉、ごぼう、パセリ、人参、かぼちゃ)開発しました。
 このクッキーは活動の中で、機会あるごとに作りレシピも配布しています。野菜が苦手な子どもたちも、お母さんがびっくりするほどおいしく食べてくれて苦労した甲斐がありました。また、高校生と一緒に「緑たっぷりクッキー」を作り、楽しく食べながら野菜の必要性を伝えることができました。


イベントウォークの開催

 平成17年度には緑区福祉保健センターと協働で「緑をたっぷり召し上がれ」のイベントウォークを行ないました。冊子の中から「谷戸めぐり」「緑の田園ウォーク」の2コースを選び、緑と農産物との出会いをたっぷり盛り込み、ウォークの後は旬の野菜(小松菜、さつまいも、里芋、ズイキの酢の物)と「緑たっぷりクッキー」を試食しました。「緑たっぷり召し上がれ体操」も全員で行ない、地元の農家の協力で旬の野菜を直売してもらいました。このイベントウォークは地域の人たちとのふれあいができ大勢の人々に緑をたっぷり味わってもらうことができました。
 一つ一つの課題を達成していくうちに自信が増し、積極的に楽しく活動をしています。食育をテーマに、独自のパネルシアターとエプロンシアターを作り、夏休みを利用して学童クラブの子どもと、野菜たっぷりスープを作りながら交流しました。高学年の子が低学年の子の面倒を見たり、初めて包丁を握る子もいて、先生方も子どものいつもと違う一面を見ることができたと喜んでいました。


今後の活動

 これからの食育は子どもから大人まで食の大切さを十分に認識し、楽しい食卓を囲んで健康な生活を送ることが大切と考えます。今後の活動として再度区民の野菜摂取量の調査を実施し、事業の成果を検証していくとともに、子どもたちとのふれあい交流をしている中で野菜の大切さをさらに広めていきたいと思います。あわせて緑の中でおいしい空気を扱いながらウォーキング、体操と微々たる力ですが福祉保健センターと協働で、これからの日本を担う子どもたちが健康で野菜大好きな子どもに育って欲しいと願いつつ活動に努めたいと思います。