「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<子育て支援活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

「子どもの居場所づくり」活動を核とした活気あるふれあいまちづくり
群馬県渋川市 金島地区楽しいまちづくり推進委員会
はじめに

 この事業は、平成13年9月、金島公民館の事業を側面から支援する公民館運営委員会が、翌年の公民館開設50年を祝っての記念事業で何をしようかと審議したことから始まる。この時、地域の多くの人が参加し、皆の心に残る事業にしようと考えた。それにはボランティア精神でお金をかけない手作りの事業にすることであり、内容として、子どもたちの要望を取り入れた恐竜(オブジェ)づくりと記念誌の発行に決めた。


恐竜制作活動

 恐竜は地域在住の設計士に図を書いてもらい、ジュース等のアルミ缶を再利用した長さ13メートルの巨大恐竜とした。公民館だよりで制作する児童を募集したところ、約30人の応募があった。また金島中学校美術部の生徒も協力してくれることになった。これには平成14年度から完全学校週5日制の実施による子どもたちの週末活動の支援が求められていたことが大きく作用した。作業日は土曜日を当て、骨組である竹材の切り出しやアルミ缶の洗浄、針金通しなどの作業をして制作を進めた。子どもたちは大人に混じって生き生きと活勤し一生懸命取り組んだ。そのアルミ缶は、子どもたちをはじめ地域の人たちに協力して集めていただき、実に約2万個も使われた。
 恐竜は大・小2体制作され、地域で名称募集したところカナゴン、シマゴンと名付けられた。カナゴンは高さ6メートル、長さ13メートル、シマゴンは高さ2メートル、長さ3メートルである。完成した時、制作に携わった私たちが充実感を味わったのは当然としても、見学者があげた驚きの声と賞賛の言葉は今でも脳裏に強く残っている。これは当初の目的を十分達成できたことを実感した時でもあった。
 そして11月10日に金島公民館50周年記念式典を挙行するとともに恐竜オブジェ除幕式を行なった。


推進委員会の結成

 これらの記念事業が予想以上に成功を収めたことにより、継続を望む声が地域から上がり、平成15年4月、金鳥地区楽しいまちづくり推進委員会が結成された。
 翌16年度の渋川市制施行50年記念事業に呼応して、郷土を愛する子ども育成と将来の夢と希望を育む場づくりを考え、今回の表題のテーマの取り組むことにした。すなわち、D51蒸気機関車(モニュメント)、風車、丸太列車(通称金星号)の制作、趣を添えた花壇づくりなどである。


平成15、16年度活動内容
活動テーマ 「子どもたちの異年齢の交流と地域間交流」

1.趣旨と方針
 子どもたちの関心を惹き、その後の有効活用が図れるようにとD51蒸気機関車、風車、丸太列車等を制作することにした。それに先立って、公民館だよりで募集した児童と推進委員会で実物のD51蒸気機関車をはじめ、ぐんまフラワーパーク、碓氷峠鉄道文化むらなどへ視察し、具体的な構想を練ることにした。

2.事業期間
 平成15、16年度

3.活動内容 手づくりによるD51蒸気機関車(モニュメント)、風車、丸太列車の制作及び花壇づくり

4.設置場所 金島ふれあい公園内 渋川市金井1999番地

5.組織

(1)名称 金鳥地区楽しいまちづくり推進委員会
(2)構成員 公民館運営委員、ボランティア、児童生徒等
(3)会議 必要に応じて開催、建築関係者の会議は別に設けた

6.作業等概要
(1)D51蒸気機関車制作活動
・D51蒸気機関車(モニュメント)等の杉丸太は、自治会長所有の山林から無償提供を受け、ボランティアと地域協力者の応援を得て、3日がかりで切り出しを行なった。
・蒸気機関の部分は、地域内の解体業者が所有していたガソリンスタンドで不要となった地下タンクを利用し、外周のタールを削り取った後、黒色に塗装した。
・車輪部分は、不用となった電線ドラムを提供していただき加工して白色に塗装した。車輪の模様を出すのに苦労した。
・客車部分は、トタン葺き屋根、廃材利用のアルミサッシ窓、吊り輪はJRから無償提供していただいたもの、座席は材木で作った。外周は青色を塗装して車両は3等列車をイメージした。
・全長23メートル、高さ3メートル、幅2メートル、実物の75%に制作し可能な限り実物に見えるように付属品を取り付けた。
(2)風車づくリ
・風車は高さ3メートルで、羽根の部分は高速道路の遮音版を利用し塗装した。回転部分は自動車のデフレンシャル部分を改造した。シャフト部分は鉄管を利用し建家は材木で外周は黒色で塗装した。風の方向や強弱により左右自由に回転するようにした。
(3)丸太列車づくり
・丸太列車は木製で2両編成、屋根はベニヤ板で制作し、けん引は軽4輪自動車で行なっている。全長は9メートルで、8人乗車できる。
(4)花壇づくり
・花壇づくりはミューズクラブ(更生保護女性会員が中心)が担当した。先進地へ視察に行ったり、県行政事務所の堀口数子氏の指導も受けたりしながら構想を練った。
・花壇は木材で枠をつくり、盛り土をし、様々なタイプのものをつくり、多角的に楽しめる情緒あふれる公園づくりを目指した。
・常に四季折々の花で楽しめるように、金島中学校美術部の描いた季節の花のコンパネ12枚を取り付け、常設アート展とした。
(5)成果
 次のようなことが主なこととしてあげられる。
①やや大がかりな制作を心がけたことで地域住民が持っている潜在的知識や能力が最大限発揮され、活性化が図れた。
②大人と子どもの世代間交流や地域間交流が図れた。
③各種団体が一つの目標に向かってボランティア作業をすることを通してより一層の協調性が増した。
④自治の力を発揮することで、地域の連帯感が生まれた。


平成17年度の活動内容

活動テーマ 「子どもの居場所づくり」
1.趣旨と方針
 忍者屋敷を制作する動機は、国や県が推進している子どもの居場所づくりであるが、何より親子のコミュニケーションの場づくりを完成させたいという地域の熱意が大きかった。また今年度は昨年度制作したものを活用する活動にも重点を置いた。
2.事業期間 平成17年度
3.活動内容 手づくりによる忍者屋敷(モニュメント)、丸太列車の運行、読み聞かせと絵画展、花壇づくり
4.活動場所・組織 平成15、16年度に同じ
5.作業等概要
(1)忍者屋敷制作活動
・忍者屋敷の構造は、床下0.9メートル、高さ2.7メートル、幅1.1メートル、長さ25メートル、木造平屋建、一部屋根とした。
・今回の木材や竹も自治会長所有の山林から無償提供を受け、その杉丸太(4メートル)の切り出しは、ボランティアと地元協力者の応援を得て行なった。切り出し後、皮むき作業、防腐剤塗布を行ない、地中1メートルに柱として建てた。杉皮は後に屋根の一部に活用した。
・外壁部分は、廃材コンパネを2枚重ねの構造とし、赤城山、子持山、小野子山を形取った。外観は、公民館だよりで募集した親子が茶色、白色、緑色等に塗り、また防犯上所々に開放の窓をつくり安全の確保を図った。内壁部分は、金鳥中学校美術部員が忍者や竹からイメージしたかぐや姫などを描いた。
・忍者屋敷の仕掛としては、床が開閉したり扉が回転することで姿を消したり、床に傾斜をつけることで体の感覚を失わせたりして、構造に各種の工夫を凝らした。また物見櫓を立てるなど、忍者屋敷の雰囲気を高める工夫をした。
(2)花壇づくり
・花壇づくりは昨年度に引き続いて、季節の花を植栽し花いっぱい運動を進め、活動の一層の充実を図った。
(3)D51蒸気機関車の活用
・昨年度制作したD51蒸気機関車の客車内で、ボランティアによる読み聞かせや、児童の絵画展及び紙芝居を行なった。
(4)丸太列車の活用
・丸太列車の運行をふれあい公園内を利用して行ない、児童や子どもたちを楽しませた。同時に地域の活性化に努めた。
(6)成果
①各種団体の大勢の人たちが、活動で互いに汗を流したことにより一層の協調性が図れた。特に忍者屋敷制作日にはボランティアが1日約40人分の昼食を作り、それを食べながら小、中学生と大人たちが語り合いコミュニケーションが図れたのがよかった。
②NHKテレビ「首都圏ネットワーク」で中継、エフエム群馬で放送されたことにより、県内外から来場者あり、金鳥地区のイメージアップと地域間交流、さらには地域の活性化が図れた。
③この事業を実施したことで、他の地域への波及効果が生まれた。


終わりに

 平成13年の話し合いから始まって、昨年度で一通りの完成を見た。ここに至るまでには多くの方々のご指導、ご支援いただいた方らであり、その一つ一つは到底語り尽くせない。金島地区で成し遂げられたのは次のような力の結集であると考え、感謝しつつ、まとめとしたい。
(1)歴代のまちづくり推進委員長が熱心に取り組んでくれたこと。
(2)地域に素晴らしい人材がいて、活躍してくれたこと。
(3)計画に対して、大勢の地域住民が協力してくれたこと。
(4)資機材に対し、よき提供者がいたこと。
(5)何よりも地域の子どもたちはもとより、県内外からの来場者が増して、賑わいの中に、子どもたちの歓声がいつも聞こえていること。