「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

自然環境を「心の教室」として取り組む・親水のまちづくり
山形県酒田市 酒田市子どもと白鳥を愛する会
目的

 酒田市は、全国的にも有名な、山形県内を縦断している最上川の下流に位置しており、背景には雄大な日本海、北東には優雅に聳える鳥海山を望み、広大な田園風景の自然環境は、この地域の財産でもあるのです。また、市内を横断している新井田川と幸福川・豊川があり、「心のふるさとの川」として、市民の心に息づいております。
 最近、青少年の「心の教育」が叫ばれてまいりました。心の教育は、箱物の中で黒板を背に語り継がれるものではなく、自然環境の中での活動より受ける喜怒哀楽により育まれるものであると思います。この考えに基づき、この恵まれた自然環境を「心の教室」して活用することを目的で、平成5年に「泉学区白鳥を愛する会」を、泉学区コミュニティ振興会を母体に設立をして、町を流れる幸福川に白鳥を呼んで活動を続けてまいりました。
 この間、周辺の住宅地の整備と同時に環境の変化に伴い、白鳥の生息環境に適した新井田川に活動の場所を変えてまいりました。この間12年の活動実績が地域並び関係機関より認められ、市民の要望もあり「酒田市子どもと白鳥を愛する会」に平成17年度より改名をして、酒田市民全体を対象に活動の輸を広げて現在に至っております。


内容

(1)児童交えての白鳥への給餌活動
(2)白鳥の生態と習性の出前授業
(3)児童福祉のシンボル白鳥モニュメントの設置
(4)ログハウス 自然学習舎 はぐくむ の設置
(5)泉小学校交通安全登校旗の寄贈
(6)毎年、継続して行なっている、小学生・地域住民・酒田市環境衛生課・県魚協・県河川担当課共同の水質検査と魚類を投網で捕獲して、生殖している魚類の調査活動


効果

(1)児童交えての給餌活動について
 ものを愛する心・思いやる心・労わり合う心が育まれる。水質検査並び魚類調査活動でも、水環境の良し悪しの勉強となり、児童たちは、汚れの原因をグラフ等に表し、地域に回覧方式その他手作り看板を設置して環境浄化を呼びかけております。

(2)なお、水環境にあわせ「地球温暖化」については、子どものうちから知識を与える必要があり勉強をしている。その内容は、地球の表面を水と陸に分けると、陸が3に対し水が7の割合であり、なお、水を分けると97%が海で、2%が氷と雪であり、1%が湖・川・地下水などである。地球温暖化により、氷・雪が解けて今世紀の終わりには、60センチ以上の水位が上がり埋没する地域が出てしまうのです。そのような災害を未然に防ぐ意味でも、一人一人が、「、今できることから」注意をする必要があるのです。

(3)なお、泉小学校交通安全登校旗を登下校時の交通安全の意識高揚の効果があります。

(4)白鳥の生態と習性の出前授業の内容と効果について
①白鳥は、秋、飛来して、春、帰るのは何故なのか?
 白鳥の故郷は、酒田市より北西約4000キロにあり、周辺は湿地帯で、9月上旬より翌年の5月上旬まで凍結してしまい、食べ物をとることができなくなる。そのために、生活の場所を求めて飛来するのであり、そして、南の地方で越冬して、5月上旬の解凍する時期までに、子孫を繁殖するために帰るのである。また、酒田市に子孫繁殖に適した自然環境のないのも帰る理由の一つです。
 5月上旬までに帰った白鳥は、直ぐに巣作りをはじめ、卵を産み抱卵の時期を経て、7月中には孵化が揃い、生まれた雛は、9月上旬の凍結する2か月間で親鳥より、餌のとり方、泳ぎ方・飛び方・いわゆる、自立するための全ての技を教えられ、9月には、親兄姉とともに4000キロの長旅に出るのです。白鳥が逆V字形を組んで飛ぶのは、先頭に親鳥・兄姉鳥と、幼鳥は最後に並ぶ姿は、幼鳥を風の抵抗から守って飛びやすくする思いやりの行動なのです。これは、君たちが幼いころ、風の強い日に、お母さんと買い物等に出かけるさい「おお寒い」とお母さんの後ろに隠れると歩きやすくなるでしょう。このことと同じで、お母さんの愛情の表現なのですよ。このような厳しい生活を続けて白鳥は、約18年~20年の生涯を閉じるのです。
②白鳥の行動を観察すると、白鳥はよく喧嘩をすると言うが。
 喧嘩ではありません。君たちが、悪いことをすると、お父さん・お母さんに叱れる。学校では先生に注意をされる。このことから、良いこと、してはいけない悪いことを覚えて、立派な人間に成長していくのと同じであり、白鳥にも集団生活でのルールがあります。
 そのルールを乱すと注意されて、立派な白鳥として成長していくのです。その姿を見て、喧嘩をしているというので、白鳥には大変迷惑な話なのです。
③白鳥より水環境の大切さを学ぶ。
 飛来する白鳥は、綺麗な羽に生え変って来ますが、春、帰るときには、越冬した川・湖沼の水の汚れに比例した体で帰ります。この姿を観察して、地球上の全ての動物が生きていくうえで大切な空気・水環境の大切さを学びます。
④出前授業後には、必ず感想文を書いてもらいます。自分の思ったことは、抵抗なく文章に表れます。このことから文章力が身に付くのです。

(5)児童福祉のシンボル白鳥モニュメントを設置して
 5月上旬まで子孫繁殖のために帰るには、酒田を飛び立つのが3月末ころがギリギリの時間でもあるのです。ところが、4月上旬、一家族(7羽)の白鳥が残りました。その理由は、1羽の傷負い白鳥がおり、傷の回復を待っていたのです。ある朝、傷負い白鳥を残して旅立つ場面に出会いました。旅立つ家族の悲しみ、置いていかれる白鳥の寂しさで、しばらくは、狂い鳴きの時間が続きました。見ている自分も、一冬手がけた白鳥に涙が止まりませんでした。しばらくして、家族は、遥かバイパスの上空に消えていきました。と思いきや、再び川に舞い戻り狂い鳴きをするのです。しばらくして旅立っていきました。残された白鳥に「太郎」と名前を付けて、「太郎。秋、家族が来るまで頑張ろうね」と一対一の付き合いが始まりました。田植えの時期に太郎は餌場にいない「太郎…。太郎…。ご飯だよ…」と呼ぶと、遥か遠いところで、痛んでいる羽を羽ばたいて居場所を知らせ、ヨチヨチ歩いては、川に入り餌場に来るのです。この感動は他の人では分かりません。秋、太郎は、家族の来るのを今か今かと待ち、逢えた喜びに春まで戯れて遊び、春の別れに、また、鳴き狂うのです。太郎は、片方の羽では大空を逞しく舞うことができない。この姿を、現在の青少年を取り巻く環境に重ね合わせ、太郎の片方の羽を家庭環境に、片方を地域環境に重ね合わせ、青少年が「夢はばたく」には、双方の環境のバランスが大切である。として、白鳥モニュメントをつくり、世界の児童福祉のシンボルにして、酒田市より世界へ(児童福祉の向上)を呼び掛けよう。と決心をしました。ところが、資金がない。作りたい一心で、財団法人河川環境管理財団に助成金のお願いをしました。青少年の健全育成は国民皆の願いです。失敗したら自殺を覚悟での事業でした。最終的に財団よりご理解をいただき「国民的啓発運動の部」の助成金決定の通知をいただきました。御礼の電話は涙で声になりませんでした。自殺をするかも知れないと予感していた家内のホッとした顔が忘れることはできません。
 平成10年7月20日、当時の酒田市長・教育関係者・地域住民挙げての除幕式、祝賀会の風景は、この文章を書きながらも懐かしく思い出され、涙が止まりません。中学校の朝礼時全校生徒に、この「太郎物語」をお話しすると、方々よりすすり泣きが聞こえてくることに感動を新たにしました。
【規格】総工費・約400万円、総高・約4メートル。高さ1メートルの八角形台座中央に、高さ約2.5メートルのギリシャ調飾り柱を立て、その上に、実物大の白鳥が、優雅に羽ばたいているモニュメントを飾り、台座には、子ども像4体を飾り、正面名盤に【夢羽ばたけ】裏面名盤には、児童福祉の文字を刻んであります。
 「青少年よ 白鳥のように 純白で 逞しく 優雅に 夢はばたけ」と合掌するものであります。

(6)ログハウス 自然学習舎 はぐくむ を設置して
 会設立以来の希望は、風雪の日でも、心配なく学習できる場所づくりでした。行政はじめ多くの市民より会の活動が認められ、ログハウス 自然学習舎 はぐくむ の設置の実現を見るに至りました。その経過は、国際ソロプチミスト酒田の皆さんが、青少年の健全育成への協力金として、酒田市に寄付をしておられるのです。この寄付金が、酒田市生涯学習課の推薦で、国際ソロプチミスト酒田の承認をいただき実現したのです。

(7)このログハウス 自然学習舎 はぐくむ の建物は、自然環境にマッチしており、市民の注目の建物です。県河川担当課では、酒田市商工会議所女性会設立25周年記念植樹計画に協力して、ログハウス 自然学習舎 はぐくむ隣の空地を埋めたててくれ、手作り公園整備事業として、記念樹並び草花の植栽も済み、春から秋までには、四季折々の草花を眺め、秋から春までには、白鳥との触れ合いのできる、市民の憩いの場として大変良い環境になり、今後の管理運営は、本会、商工婦人部・心のふるさと新井田川の会と三つの会で行なわれていきます。なお、植樹祭には、市長・商工会議所会頭の参列で盛大に終りました。


全体的効果

 青少年の健全育成は、青少年と地域住民が共同参加する事業を行なうことです。その意味においては、会の現在までの効果は、大変多くの効果をもたらしたと確信しております。


今後の活動計画
(1)現在までの活動内容の一層の充実を図る。その一つの方法として、地域住民より青少年の健全育成の意識高揚の方法として、「スワン貯金箱の設置運動」。白鳥にちなみ、【スワン】体に害がある煙草1日1本を少なくしていただき貯金をする。そのお金を地域の青少年健全育成活動資金に活用する運動の展開。貯金箱は、白鳥モニュメントの小形の物をつくり、企業・関係行政機関などにおいていただく運動を展開する予定です。
(2)青少年を伸ばそう市民会議のテーマ「大人が変われば子どもが変わる」で活動をしておりますが、どのような変り方をすれば良いのか漠然としております。
 そこで、名刺並びに各団体の会報などに「らしさをすてずに・らしく・いきよう」の文字を入れて呼び掛けて、個人個人が「らしさをすてずに・らしく・いきよう」行動をすることで、青少年はその背中を見て育ちます。これにより、刑法判少年の件数の減少を期待して、運動の輪を白鳥を愛する会より広げて行く予定です。