「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

水辺づくりと川とのふれあい
岩手県奥州市 大曲の水辺に夢をつくろう会

 先人たちが恩恵と災いを受けながらも、ともに生きてきた川(北上川)と水辺が、ヨゴされ壊され、捨てられているのに驚き、この病める水辺に豊かな自然の回復を願い《夢》の水辺づくりと、事毎に自然と隔離遮断されている子どもたちに、自然の良さ、大切さを肌で感じてもらう体験学習活動を平成12年1月に地域に提案、同年2月水辺観察会を実施し、『川の見える水辺づくりと・花と緑のある体験広場づくり』をスタートさせた。


活動推進にあたって

○求めるのでなく自分たちに何ができるか問いつつ、できることから ○楽しみながら達成感のある活動を ○張り切りすぎて疲れないように ○人工的にならないように自然を残しながら、を大事にしながら推進することとした。


水辺環境保全を目指し、周辺草刈り等作業と花壇づくり

 平成12年3月、1回目の水辺周辺の刈り払いと、花壇づくりを地域住民の作業用機器持参と労力奉仕で活動開始。同年6月地域の思いを表したシンボル花壇∞無限大に、地元小学校児童と地域住民で植栽し1500株の花苗とともに地域の協働「結」の大きな「夢」がまず開花した。そのあと少しずつ、すべての人々が安らげる水辺空間づくりを推進してきたが、平成14年7月、6号台風で水辺が壊滅的な被害を受けた。しばし呆然の中、水辺ふるさとにかける「思いまでは流されない」と、再始動8月6日、100人で復旧作業し、18年も水辺に彩りを添えるだろう。
年間の草刈り等作業
平成12年 延べ310名
平成13年 延べ395名
平成14年 延べ293名
平成15年 延べ307名
平成16年 延べ200名
平成17年 延べ230名


子どもたちの自然体験学習

 平成12年8月イカダ体験で子どもたちの感想が「楽しかったが、臭かった」が以後の水質調査の引き金となり、以下の体験学習を継続実施している。
①毎年4月エコクラブを結成、②4月~11月まで月1回パックテストを中心に水質調査、③7月に川舟にて水生生物調査、④9月にモクズガニ牧場見学と放流・後日捕獲追跡調査、⑤10月年間の活動のまとめと学習発表。
 ほかに平成16年には、会員で製作した川舟の原木から完成までの見学学習と、17年より全国水質一斉調査に参加している。


川とのふれあい事業

 平成12年8月手づくりのイカダで初の川遊びを実施、それまで遠かった子どもたちと北上川の距離が縮まり、川に・水辺に関心を示し始め自然との出会いのすばらしさを肌で感じるようになってきた。
 一方、北上川の流れにチャレンジし、川遊び体験を通じてふるさとの自然を見つめ直し、また親子の絆や地域住民相互の連携を機会を提供するとともに、川舟文化の継承活動と位置づけ、平成15年夏より『北上川大曲の水辺・川まつり・手こぎレース』企画・開催。年々川舟を使った手こぎレースに住民の応援と歓声が沸き上がりふるさとの旧盆の祭りとして定着しつつある。
 特に、平成16年より川舟文化の継承として会員で川舟を製作その復元された舟でのレースデビューに水辺の住民より大きな拍手が送られた。


川に学ぶ

 ここ大曲水辺が、昭和22・23年、100年に一度といわれた台風(カサリン・アイオン)で命と、生活、農業基盤に甚大な被害を受てから間もなく60年、地域に当時を知り、災害を体験した人々も少なくなり、川岸に住む住民に川の、恐さ、川の暴威意識が希薄になりつつある今、様々な水災害に対処してきた先人たちの教訓を、近代防災意識とともに次世代につなぐことを柱に「川に学ぶ」を企画、各方面の協力のもと実施している。

(1)「川とのかかわり&自然との共生」フォーラム 平成12年12月1日
 記念講演と、5人のパネラーによるフォーラムと小学校児童の「水辺を描いた作品展」あわせて1年間の水辺活動写真展示会開催。100人の参加者と児童20人も参加した。

(2)「豪雨災害に対する今後の防災対策」 平成16年12月1日
 講演会開催、最近の集中豪雨災害と少子高齢化地域での災害対応力の強化等。参加者70人。

(3)「リバーレスキュー講習会並びにカサリン・アイオン台風被害に学ぶ災害・防災展示会」開催 平成17年7月23日
 会発足以来地元小学校児童の水質調査と川まつり等地域を巻き込んでの川とのふれあい活動が継続実施されるにともない安全性も強く求められ開催となった。

(4)「環境フォーラム」開催 平成18年1月25日
 あしたの日本を創る岩手県協議会主催。実践事例発表で白山小学校エコクラブが「北上川とのふれあい活動を通じて」と題し、この6年先輩より受け継いできた水辺での体験学習《川への思い・願い》川を守ろうと発表した。


すべての人々が安らげる水辺空間

 地域の協働、行政の心地よいサポート、仲間との連携で、台風被害を乗り越え、「夢」一つ一つ実現。今では、子どもたちの遊びの場、デイサービス利用者の癒しの場、高齢者自身で維持管理の活用の健康広場等、多くの人が体験しながらの憩いの広場となった。


これから

 緑と花壇をとりまく草花、その向こうに広がる北上の流れと束稲山、この豊かな自然ふるさとを、地域の仲間と守り、次世代にしっかりつなぐ活動をつづけたい。
活動組織(非法人の住民団体です)
①発足 平成12年1月29日 名称・大曲の水辺に夢をつくろう会
②会員 当初10名、会費、会則なし。現在会員393戸(地域420戸)、会則あり、総会、収支報告、年間の活動報告等全戸に情報公開している。会費年100円以上。
③活動母体 4地区より選出された運営委員(30名・平均年齢65歳)が中心となり、活動(作業)内容により、チラシ・有線放送で呼び掛けている。
④活動場所 岩手県奥州市前沢区白山地内 北上川右岸12745.36平方メートル。区と河川法による使用協定締結済(区と国交省占用協定締結済)