「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 内閣官房長官賞

ボランティア・サークルによるトヨタの地域社会貢献活動
愛知県小坂井町 トヨタ自動車株式会社トヨタボランティアセンター
トヨタボランティアセンター開設経緯

 トヨタ自動車は、「良き企業市民」を目指して、従来からの資金的貢献に加え、人的貢献推進のため、社員のボランティア意識や社会ニーズの高まりを背景に、1993年5月、社員・家族・OBを対象にボランティア活動を支援する組織、トヨタボランティアセンター(以下:TVC)を愛知県豊田市の本社内に設立しました。
 全国の各事業所(10か所)・工場(10か所)にも窓口を設置し、TVCでは、社員の自主性を尊重し、安心してボランティア活動ができるように、①啓発活動、②情報提供活動、③活動の自立に向けたサークル支援活動を主な業務としています。開設と同時にボランティア登録制度を導入し、趣味、特技、国際交流、地域社会、福祉などの登録者が活動したいメニューの選択を導入しています。活動メニューは、地元豊田市の社会福祉協議会やボランティア団体などと連携し情報を収集、毎月、登録者に活動先を紹介し、コーディネートしています。(05年度の活動実績は、活動件数:977件・活動者数:約2万4000人でした。)


サークル活動支援

 年間、約700件のボランティア活動や研修会などをきっかけとして、同じ意志を持つ人たちが自主的にボランティア・サークルを結成し、地域のニーズに対応できるよう支援しています。具体的には、
(1)おもちゃシューリーズ
 おもちゃ図書館からの要望で1年に3回、ボランティアでおもちゃを修理していた従業員が、その後サークルを立ち上げ、今では、地域からの要望で、地元豊田市の子育て総合支援センター内に、おもちゃ病院を開院し、毎月、第1土曜日に活動しています。

(2)ほっとハーモニー
 漫才や落語、手品を披露したり、津軽三味線やオカリナ、フルート演奏など、敬老の日や子供会といった、地域の行事に欠かせない演芸・演奏サークルもできました。

(3)大型車運転友の会
 特殊技能を活かしたものでは、大型車運転免許を持った社員が、イベント時などにマイクロバスの運転をしたり、駐車場の誘導・整理をしたりするサークルを結成しました。今では、様々な地域や団体から、送迎としてのマイクロバスの運転要望が来るようになり、年々活動数が増えています。

(4)JDRトヨタ
 社内のボランティア初心者を対象に、気軽にできる活動を企画することから始まったJDRトヨタ(企画ボランティア)では、地域の様々な団体からの要望を伺い、それぞれの団体の社会見学や味覚狩りなど1年に4、5回のイベントを開催しています。サークル結成以来、親と一緒に暮らす事のできない子どもたちを招待し、夏休みの1日を思いっきり楽しんでいただこうと、味覚(ぶどう)狩りを開催しています。また、知的にハンディを持たれた青年たちとのふれあいバーベキュー&ゲーム大会や災害時の避難訓練を実施したり、独り暮らしのお年寄りの方々のために奇数月に給食会を開いているぬくもりの会(地域のサークル団体)を支援するため、1年に1度、社会見学(遠足)を協働で企画しています。2005年2月、名古屋港水族館に出かけた時には、総勢80名(当社社員ボランティア:25名)が参加し、独り暮らしのお年寄りに社会参加のきっかけになるお手伝いをさせていただきました。2000年には、視覚に障害を持たれた方々と一緒に豊田市のお祭り『おいでん総踊り』へ参加することを企画。この活動では、視覚に障害を持たれた方々にどうやって踊りを覚えていただくか?が課題でした。考えた結果、ボランティアと障害を持たれた方がペアになり、3か月間、毎週、月曜日に手取り足取りで踊りの練習を実施。その年、チームは、市長特別賞を受賞しました。今でも当日、障害を持たれた方が、賞を受賞した時には、チーム全体で喜びあい、今年で、6回目の参加を迎えます。障害を持たれた方からは、「今まで、おいでん祭りは、嫌いだったが、これで、やっと豊田市民になれた気がする。」と喜んでいただいてます。

サークル名 活動内容
サークル名 活動内容
TOMORROW
(点字)
視覚にハンディを持たれた方に少しでも多くの情報をお届けしたいとパソコンを使っての点訳や音訳されたテープをCD化。
収集 社員の皆さんから送られてくる古切手やベルマークの仕分け。
ヒアツーハート
(聴導犬育成支援)
聴覚にハンディを持たれた方をサポートする聴導犬を応援し、PR活動。
むーびっつ
(聴覚障害者用字幕映画)
TV番組・映画などに字幕スーパーをつけ、聴覚にハンディをもたれた方に楽しんでいただけるよう活動。
かたぐるま(肩もみ) 肩もみ&マッサージにより、お年寄りの方などとふれあう。
10 翻訳サークル 語学力を活かして外国⇔日本語の翻訳をしています。アジアの子どもたちに送る絵本の翻訳など。
11 通訳サークル 地域の方々と外国の方々の国際交流のお手伝い。各イベントなどで活動。
12 五WD(イベント支援) 長野オリンピックでの活動がきっかけの仲間たち。イベント運営のお手伝い
14 トヨタDIY(工作) ペットボトル工作や風船アートの技術を活かしイベントなどで活動。
15 森林キーパーズ 足助町などの森林での間伐や下草刈りなどを実施。また、イベントでは間伐材を使った工作コーナーを出展。
16 衣浦農園 畑を借りて、様々な野菜を育て、障害を持たれた方を招待し芋掘りやとうもろこし狩りなどを実施。
17 あいくるボランティア(田原) 地域イベントでの車椅子介助やゲームコーナー出展など。
18 知恵の輪(東富士) 地域イベントでのバザーコーナー出展や運動会などでお手伝い。
19 シャウン(士別、送迎) 士別の駅が、車椅子対応になっていないため、車椅子利用者を1つ前の駅から自宅まで送迎運転。
20 家具転倒防止 災害時要援護者宅の家具を転倒防止。
 上記の他にも左記のようなボランティア・サークルが、合計で20サークル活動しています。


トヨタグループ災害V(ボランティア)ネット

 近い将来必ず来るであろうと言われている大災害(東海・東南海・南海地震)。トヨタ自動車をはじめとしてグループ各社の拠点が多くある愛知県は、これらの巨大地震の震源域に位置しており、現実に災害が発生すると、かなり広範囲にわたり被災し、その復興にはかなり時間がかかるものと思われます。
 被災者の復興支援は、最終的には、それぞれの地域住民の助け合い活動が中心となります。そこで、トヨタグループ各社の連携で、少しでも被災者の自立復興を支援することができればと考え、トヨタグループ13社で、トヨタグループ災害V(ボランティア)ネット(以下Vネット)を2003年4月に立ち上げました。
 Vネットは、社員が自主的に登録し、情報・物資運搬仕分け・営繕・スタッフ・なんでもグループなどから成っています。登録者の中には、一級建築士・アマチュア無線・看護師・大型運転免許・通訳・手話などいろいろな資格や特技を持った社員など、現在、約840名が登録しています。実活動に向けての事前準備として、スタッフとしてのボランティアコーディネーター研修会やシミュレーションを主体とした勉強会を実施しています。
 毎年秋には、広く地域の方にも参加を呼びかけ災害体験イベントを実施。各グループ毎の活動訓練や災害時要援護者の避難サポート訓練を展開するとともに、豊田市視覚障害者福祉協会の方々や豊田市手をつなぐ親の会(知的にハンディを持たれた方)や身体に障害を持たれた方を招待し、実際に模擬の被災現場を再現し、本番さながらの避難サポート体験を実施。障害を持たれた方には、めったにできない訓練ということで高い評価をいただいております。(2003年―2005年:参加者延べ:約900名)
 2004年には、各地で災害が多発しましたが、7月17日~18日にかけて発生した北陸豪雨災害では、Vネットとして、24日・25日の2日間で57名の登録者が今立町の支援活動に参加しました。また、10月23日に発生した新潟中越地震(震度6強)では、日本経団連や愛知県社会福祉協議会などの呼びかけにより、11月24日~12月19日までの間で、23名(5回)が被災地支援活動に参加しました。
 防災対策活動としては、特に災害時要援護者と言われる方を対象に家具転倒防止サークルによる家具転倒防止活動を実施しています。活動当初、対象をどこに置くかを検討した結果、『65歳以上の独り暮らしのお年寄りなど自力では実施が難しく、しかも防災ハザードマップ情報でより危険な地域にお住まいの方から取り組もう!』ということになりました。独り暮らしのお年寄り宅では、民生委員さんに立ち会っていただき、お年寄りとのコミュニケーションも大切にしています。
 具体的には、ボランティアがすべてやってしまうのではなく、食器棚のガラス飛散防止フィルム貼りなどお年寄りの方でもできることには参加いただき、和気あいあいと家具転倒防止活動の時間を過ごすようにしています。活動が終了する頃には、こぼれるばかりのお年寄りの笑顔や「これから安心して暮らせるわ。本当にありがとう!」と涙ながらの感謝の言葉をいただき、活動者は、やりがいと達成感で満たされています。こういった活動を地道に実施するうちに評判が広がり、今では、活動地域が広がっています。(2003―2005年:51軒、参加者:218名)


活動の拡がり

 こうした活動の中で、せっかく顔見知りになれたのに、もっとお役に立てることがあるのではないかという声があがりました。特に独り暮らしのお年寄りは、家に閉じこもりがちになる傾向があり、地域社会では、それが問題となっていました。独り暮らしのお年寄りがなるべく社会参加できるようなきっかけ作りを促進したいと相談を受け、この結果、JDRトヨタ(企画ボランティア)と家具転倒防止サークルとが新たな活動を生み出しました。
 2006年1月に実施した家具転倒防止活動実施地域を対象とした「独り暮らしのお年よりの社会参加促進お手伝い!『ふれあい・いちご狩り』」です。『ふれあい・いちご狩り』には、総勢81名(ボランティア:21名)が参加。社員ボランティアは、家具転倒防止活動時で出会った方々と久々に対面したり、新たなお年寄りとの出会いがありました。参加されたお年よりも、初めてのいちご狩り体験や班対抗のゲーム&クイズ大会などで盛り上がり、帰る頃には、また、こういう企画を実施して欲しいと強い要望をいただく程でした。
 地域の病院の先生によりますと、風邪が流行る寒い時期にも関わらず、今年は、この地域で体調を崩されるお年寄りが少ないとのこと。参加者皆さんにお伺いしたところ、いちご狩りを大変楽しみにし、体調管理をしっかりされたということでした。今後も地域の方々と協働で『できること』をしていきたいと思います。