「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

歩いて気づいたまちづくり「なんとかなんないの」から「なんとかしなきゃ」へ
茨城県水戸市 水戸女性フォーラム
はじめに

 水戸女性フォーラムは、平成5年水戸市主催の女性大学講座修了生が「女性の視点から水戸市を見つめ直し市政に積極的に参画しよう」と自主的に結成した会です。発足以来一貫して「人にやさしいまち まちにやさしい人へ」を合言葉に活動してきました。私たちの活動の特徴は、まず自分たちの足で歩き、自分たちの目で見、自分たちで調べ、さらに実際にやってみてその上で関係機関に提言してきたことにあります。
 その間、まちづくりシンポジウム・街並み景観ウォッチング・歴史的文化遺産の利活用についての学習会・観光食マップ作成など多面的な活動を展開してきました。
 これらの活動の原動力となったのは、自分たちの歩いた街角で「なんとかなんないの!」とつぶやいたことから始まりました。ひとりの小さな「つぶやき」が話し合っていくうちに「何とかしなきゃ」という共通の思いになり行動になっていったものばかりです。
 そして15年の間に広く市民を巻き込み定着していった活動が多くあります。これらの活動が、さらに進化したものになるよう検討を重ねているものを紹介します。

公共トイレを変えた

水戸市銀杏坂公衆便所は、ひどい臭いだ
「なんとかなんないの」から「なんとかしなきゃ」
    そして公共トイしが変わった

[ステップ1](平成5・6年)
 市内の公共施設24か所とデパートのトイレ点検を行なった。「さわやかで、使いやすく、安全で機能的なトイレとは」をテーマに利用者にやさしい構造・機能の研究を行ない「活動をとおしての提言集」を発行した。これに反応して直ちにデパートのトイレは、改善された。
[ステップ2](平成6年)
 水戸市銀杏坂公衆便所を利用者の五つの視点(高齢者・身体障害者・母と子・若い女性・観光客)でワークショップを実施し提言した。
[ステップ3](平成8年)
 銀杏坂公共トイレの改築に伴い、水戸市担当職員との懇談が行なわれ、直接使いやすいトイレについての提言をした。
[ステップ4](平成9年)
 「水戸市銀杏坂市民ギャラリー」として1階が公共トイレ、2・3階は、ギャラリーとしてオープン。外見から見ても昔の公衆便所からは、想像もできないほど美しく文化の薫り高いものとなった。
 特に1階トイレの部分には、数々の提言が取り入れられ改善された。その一つに、水の飲めるコーナーが設けられたことがあげられる。高齢者の中には、トイレを使用したついでに、薬を飲んだり、口をすすいだりしたい人もいることを考え提言していたことであった。

「花一輪ボランティア」のはじまり
 数々の提言が取り入れられたトイレの完成を見た会員たちは、オープン当日より自発的に手洗い場に花を活ける活動を始めた。それ以来現在まで10年間欠かさず、この活動は続いている。毎週1回交代で花を活けるこの活動を「花一輪ボランティア」と名づけている。
 この活動は、市民にも理解され、時には花瓶に入りきれないほどの花があったりして私たちを喜ばせてくれる。また、銀杏坂公共トイレ以外の公共トイレなどでも、花が飾られているのを見るとこの活動の広がりを感じる。


公共トイレから学校トイレの改善へ

[ステップ1]
 平成14年、学校トイレの現状と課題を探った。
[ステップ2]
 水戸市立大場小学校でアンケート実施。あわせてワークショップを行なった。
[ステップ3]
 「水戸市立大場小学校改築トイレ提言集―デザインと利用を考えて―」を作成。
[ステップ4]
 水戸市立第二中学校の校舎改築に伴い、生徒が、トイレにどのような関心を持っているかを知るためにアンケート調査を行なった。結果を踏まえて「水戸市立第二中学校の校舎改築に伴う学校トイレ提言書」を水戸市教育委員会へ提出。
[ステップ5]
 現在提言が取り入れられ、トイレ改築が行なわれている。

 今後は、市内小中学校のすべてのトイレが、児童生徒の参画で改善できるよう連携を深めていきたい。


中心市街地景観ボランティア「クリーン作戦」

水戸市の玄関 銀杏坂の歩道は、
 植え込みの中のゴミ
  張り付いたガムが目立つ
「なんとかなんないの」から「なんとかしなきゃ」
  そしてクリーン作戦がはじまった

 水戸には、いくつかの祭りがあるが、夏の「黄門まつり」と冬の「梅まつり」は、多くの観光客の集まる祭りである。水戸駅から銀杏坂を歩いてみると、植え込みの中にゴミが絡まるように入っていたり、空き缶やビンなども落ちている。歩道には、薄黒いガムのかすが張り付いているのに気づく。非常に見苦しく水戸の印象を悪くする要因になっている。
 「なんとかしなきゃ」と平成12年から、黄門まつりの前の7月と、梅祭りの前の2月に中心市街地の歩道のゴミ拾いとガムはがしを重点的に「クリーン作戦」として行なってきた。
 初めは、会員だけであったが、市内の事業所のボランティアグループや水戸市の広報紙などで市民に呼びかけたところ、家族連れで参加してくれた団体や水戸のサッカーチーム「ホーリーホックサポーター」の方も参加しくれて、協力者は年々増えている。


水戸のまち大好き会員が、自主的に観光案内を始めた

「食事のおいしい店を教えて…」「園内のみどころは?」
  「梅は、何分咲き?」「ちかくの見学場所は?」
「なんとかなんないの」から「なんとかしなきゃ」
  そして観光ボランティアがはじまった

 水戸の梅祭りは、水戸市の大きな行事の一つ。偕楽園の梅を愛でるために、毎年たくさんの観光客が水戸を訪れる。観光客の皆さんに「水戸に来てよかった」「また、友だちを誘ってこよう」と思ってもらえるよう、それまでの学習を活かし、平成9年2月から、自主的に観光案内を始めた。
偕楽園に関して研修を重ね、観光案内に磨きをかけた
 平成10年2月には、「観光ボランティア」として、会全体の活動として取り組むことになった。案内の場所も園内から、JR偕楽園駅前に移った。JRを利用して偕楽園を訪れる人たちが、一番不案内であることを予想してのことであった。名称を「梅の駅」観光ボランティアとする。
 毎年「表門からの入園」や「大名庭園として」、「梅の名所として」など視点を変えた見所案内を続けた。来園者とのコミュニケーションなどを通して様々な要望も見えてきた。これらをまとめて関係機関提言。今では総合案内所として対応している。
「水戸のまちなか散策(お土産・お食事どころ)」マップ完成
 質問の中で多かったのは、「水戸でおいしいものは何?」「どこのお店で食べられるの?」「どのお土産がおすすめ?」など。このことなら熟知している会員が多く、さっそくマップ作りになって、会員のおすすめマップが出来上がった。取り上げた「お食事どころ」「お土産品」ほとんど会員が食し確認しており、自信をもって案内している。
テレビドラマ「水戸黄門」で紹介され全国ネットで放映された
 現在配布しているものは、「黄門様がまってるよ」のキャッチフレーズを入れ、改定を加えさらに充実したものとなっている。テレビドラマの「水戸黄門」は、幅広いファン層を持っていると聞く。平成19年4月よりテレビドラマ新「水戸黄門」がスタートしたが、それに先立ち「今夜!水戸黄門復活」のPR番組で偕楽園や千波湖、黄門様の紹介にこのマップが使われた。私たちのマップが認められたことになる。


「あそび横丁」ボランティア

まちから子どもの遊ぶ姿が消えた
「なんとかなんないの」から「なんとかしなきゃ」
  そして「あそび横丁」ができた

 平成14年から学校完全5日制となり、子どもたちの休日は増えたが、遊び場は増えなかった。
 子どもの集まるイベント会場で、子どもたちの「休日の過ごし方」についてアンケートをとった。その結果子どもたちは、どう休日を過ごしてよいか戸惑っている姿があった。では、子どもたちは、どんなことを求めているか。

「読書フェスティバル」で「あそび横丁」を
 年に2回行なわれている子どもを対象としたフェスティバルで、「お手玉」「折り紙」「あやとり」などの昔遊びや「なわとび」「輪投げ」「ニュースポーツ」のように体を動かす遊びで、あそびのコーナーを作り子どもたちに遊びを提供した。毎年150人以上の参加者がありリピーターも多い。この「あそび横丁」については「あそび横丁の手引き」を作成して市内のコミュニティなどで利用できるよう公民館に配布し利用を呼びかけている。

シャッターのおりた店舗が多い
  人通りがすっかり減った
「なんとかなんないの」から「なんとかしなきゃ」
  「まちの駅みと」案内人として

 水戸市はかつて、水戸駅から大工町まで歩道いっぱいに人が歩き、両側の店舗は、商品があふれていた。今では、シャッターのおりた店舗がいくつもあり、人通りもまばらになってしまった。また、せっかく訪れてくれた観光客も休むところも少なく、情報を提供してくれるところもない状態が続いた。
 このような状態のとき、水戸商工会議所より「まちの駅みと」開設の話が持ち上がった。どうしたら賑わいのあるまちにできるか、「なんとかしなきゃ」と考えていた矢先。まず、まちの駅でまちの案内人を引き受けた。
 「まちの駅みと」は、色々な事情で2年おきに3か所移動したが、開設以来少しずつ立ち寄ってくれる人が増え、昨年の利用者は、1年前にくらべて1か月平均200人の増加となった。
 まちの駅の主な活動としては、
①壁面を利用した作品展示活動
・市内の幼稚園児や保育所の作品
・趣味の作品
・私のお宝展示
・会員持ち寄りのひな飾り(3月3日にはひなまつりも実施)
②体験教室(会員の趣味をいかした教室)
・皮手芸
・布手芸
・折り紙
・囲碁など
③商店会や他団体との協働のイベント
・ハローウイン(地元商店会と)
・成人のつどい(水戸市の行事)
・黄門祭り(水戸市の行事)
 まちの駅を中心に、町内に活気が出たことから、地元NHKより放映され活動も定着してきた。今後は、このような賑わいの拠点を街なかに増やす活動に力を入れたい。