「あしたのまち・くらしづくり2008」掲載
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

目指せ!湯にばーさるなむらづくり ―農業、観光、環境が調和したむらづくり―
熊本県山鹿市 平小城活性化協議会
平小城活性化協議会とは

 平小城地区には、九州山口地区温泉好感度調査、泉質の部門で1位となった平山温泉がある。20年ほど前から観光開発が進んできたが、開発に対する住民の意識はまだ低く、観光客を農業の活性化に繋げようという気運はなかった。平成12年頃から観光客を農業の活性化に繋げられないかと調査研究が始まり、平成15年に鹿本農業改良普及センター(現鹿本農業普及指導課)の指導の下、観光を利用した農業振興の新しい組織である「平小城活性化協議会」を農業、観光協会、学校などの各関係機関29名で設立した。
 活動していく中で、地域活性化の基本は環境を守ることであると気づき、平成17年、協議会活動の基本を下記の5項目に絞り「山鹿市平小城校区環境づくり協定」として、校区住民全員で締結した。
①ホタルの飛び交う自然環境を守ります。
②豊かな田園環境を守り育てます。
③環境に優しく活力ある農業を目指します。
④開発する時は皆に情報を公開します。
⑤住む人の心ふれあう地域を目指します。

 活動をより地域に広げ、充実させていくために検討を重ね、現在は平小城校区民全員を会員とし、会長を校区長、各組織代表者、区長会、ボランティアなど54名を代表、それに県・市・農協などの関係機関が加わり、「環境部会」「農業部会」「観光部会」「広報部会」の4部会を組織化し活動している。
 平成18年度は、県のUDアドバイザー派遣事業等を通し勉強会を4回行なった結果、徐々にではあるが住民の理解と関心が高まった。19年度は国土交通省の支援により、「UDの考え方を取り入れた地域づくり推進調査」を行ない、UDの視点で地域づくり活動を見直す必要があるとの認識も広がった。地域資源を活用し、これから到来する本格的な高齢社会を考慮した、誰もが住みやすい地域を目指し「湯にばーさるなむらづくり―農業と観光 環境が調和したむらづくり―」を合言葉に活動を行なっている。


協議会の組織
協議会長・校区長
環境部会 農業部会 観光部会 広報部
 平小城区長会
 老人会
 保育園
 小中学校PTA
 ボランティア
 土地改良区
 農業委員会
 関係機関
 菜の花米生産組合
 湯の里市
 菜の花会・加工部
 関係機関
 平山温泉観光協会
 関係機関
 ボランティア


活動記録と現在までの成果

① 農業部会
~ひらやま菜の花米生産組合~
 平成12年平小城地区の温泉旅館から「早春は、何もなくて殺風景だから、菜の花が広がる風景が欲しい」との要望があり、9戸の農家が景観作物として菜の花を植えたことから始まった。14年からは、減農薬・減化学肥料・地域循環型農業を目指し、「菜の花」を緑肥として水田に鋤き込む稲作を開始「ひらやま菜の花米生産組合」を設立した。同時期に、山鹿市の「地産食品開発助成事業」を申請し承認され、山鹿の特産品としての「ひらやま菜の花米」の確立。さらに、菜種から搾った「菜の花油」の開発、菜の花を利用した「農村体験ツアー」を実施することになった。
 平成15年第1回目の「菜の花でお出迎え」春の農村体験ツアーを実施し、以後体験事業を協議会全体で行なう「都市と農村ふれあい交流事業」へ変換し、現在に至っている。また、JAと連携し「ひらやま菜の花米」の旅館への年間予約販売を開始した。
 平成16年、組合員全員がエコファーマーの認定を受け、九州米サミットで、平成14年普通作部門、18年減農薬部門で最優秀賞を受賞した。
 ひらやま菜の花米生産組合、平山温泉観光協会と鹿本地域振興局とで年1回「ひらやま菜の花米」と他の米との比較試食会を実施しており、旅館関係者からも好評である。
 小学校への食育として、平成15年から「田んぼの学校」を開始した。小学5年生と一緒に、種モミの温湯消毒と種まき、田植え、稲刈りを行ない、収穫したモチ米は「平小城ふれあい祭り」の会場で一緒に餅つきをし、舞台上から餅投げを行なっている。また、小学生は3月の学習発表会で体験したこと・学んだこと(食・命・農の大切さ)の発表を行なっている。平成18年より学校給食で菜の花米の利用が始まった。「ひらやま菜の花米」が出た時は、残飯が少ないと聞く。加えて、環境に優しいBDF燃料を活用した農耕作業も行なっている。

~ひらやま湯の里市~
 平成12年頃から、農産物の直売所を作ろうという動きが起こった。平成14年、JA生産組織の代表者15名で「平小城ふれあい市場」開設に向けての会議を実施。7月に会員54名で名称を「ひらやま湯の里市」とし、安全で安心、そして新鮮な農産物を提供することを目的として、土・日のみで開始した。当初は野菜の種類が少なかったが、県の農業普及センターの指導の下、栽培講習会及び展示圃を設置し品数を増やした。
 平成17年会員も105名と増え、毎日営業に切り替えた。平成19年5月には地域唯一のスーパーマーケットだったAコープ(JA系列のスーパー)が、JAの統廃合により閉鎖された。採算の面からは厳しいが、交通事情の悪い平小城地区で、高齢者などの交通弱者の生活を助けようと、湯の里市がAコープ跡に入り、Aコープが果たしてきた役割の一部を担っている。
 農産物以外にも、地元の人たちによる「木工芸品」「手芸品」などの販売も行なっており、お年寄りの生きがい作りにも一役買っている。また、地元旅館業者への農産物の情報提供を行なって地産地消活動も進め、開設当初の3倍近い売り上げとなっている。

~ひらやま菜の花会~
 地産地消の農産物加工所「菜の花会」は、平成15年1月に平小城の活性化に私たちも参加しようと9名の元気な女性で設立した。県や市が開催する「料理」や「漬物」の講習会に参加し加工技術を身につけ、地元の農産物を利用した加工品づくりを行ない「湯の里市」を中心に販売している。製品に温泉水を利用し地域の特色を出している。
 農協の倉庫を利用した予約制のバーベキューも行ない、体験ツアーの時には郷土料理作りの貴重な存在でもある。いろいろなイベントでは弁当類の販売も行ない好評である。

~都市と農村の交流事業(年3回の農村体験ツアーの実施)~
 平成15年度から、1泊2日の農村体験ツアーを春と秋の年2回開催し、17年度からは冬を加え年3回行なっている。春は、菜の花を眺めながらのウォーキング・タケノコ掘り、苺狩りなど、秋は菜の花米の稲刈り・芋掘り・ミカン狩りなど、冬は山遊び・竹炭焼き・野菜の収穫など。夕食は菜の花会による郷土料理やバーベキュー、冬はいのしし鍋などで交流会を行ない参加者と意見交換を行なっている。リピーターも多く、農村体験を通して消費者との交流が深まり、平小城のファンが増えている。
 後継者が少なく竹林が荒れてきているが、冬の体験ツアーで竹炭焼きを行なうことにより、古竹を間引き、竹炭を水の浄化に役立て、参加者には里山保全の重要さ、大変さを理解していただくように努めている。

② 観光部会
 平山温泉観光協会は「地域と一体化した観光」を目指して、平成11年3月に平小城校区内の温泉施設10軒で設立された。現在、平小城校区内の温泉施設24軒中15軒が加盟している。街路灯の設置や、道路の清掃を年間3~4回行ない、いろいろなイベントの折には、無料入浴券も提供している。平山温泉郷のカレンダーを製作し校区500戸に配布するとともに年3回の体験ツアーにも協賛している。

③ 環境部会
 「ホタルの飛び交う豊かな自然環境を守ろう」をスローガンに、住む人たちの心ふれ合う地域づくりを目指し、「環境づくり協定」の遵守、「花いっぱい運動」「河川の水質検査」「UD推進事業」などを中心に活動を行なっている。

「UD推進事業」
~字名サインの検討~
 広域合併が進む中、①地域の子どもたちに地区の名称を正確に伝えていくこと。②平小城の統一感。③地域への理解を深めるとともに利便性と快適性を同時に実現できることを目指し、地域の字名を表示したサインを作っている。

~誘導サインの検討~
 当地区では、計画的に温泉客や通過交通者を誘導するためのサインが不足している中に各旅館が個別に設置した看板が乱立し、来訪者に混乱を生じさせる原因となっている。
 各旅館が設置した個別のサインを規制することは難しいが、今後設置するサインの基準または、サインの統合整理が可能となるように、平小城地区のゲート性を持ち、方向性のみを示すゲートサインと、安全な場所で現在位置と目標を確認することができる総合案内サインをモックアップ検証中である。

「地区のシンボルマーク作り」
 小学5年・6年生と一緒にシンボルマークを作った。平小城地域とはどのようなところか再考し、地域の一体感を作ることに役立った。マークは、地域ブランドづくりへ利用開始した。

「河川の水質を守る努力」
 大切な水環境を守るため、平成16年から、小学校5年生と一緒に県の「川の健康診断」による河川の水質調査を開始。平成18年度からは熊本県立大学とも連携し、より正確な水質調査を開始した。河川の土砂の浚渫、葦などの切除も住民の手で実施している。
 このように河川環境に感心が高まる中、当地区には下水道がなく温泉排水が直接河川に流れ込み水質を悪くしていたが、竹炭を利用した自家製排水浄化装置を作った旅館もある。このような取り組みの結果、ホタルが確実に増えてきている。

「花いっぱい運動から 菜の花プロジェクトを目指して」
 花を景観作物、地域循環型農業に利用するだけでなく、油や油粕も生産販売し、その収益金を活動資金に利用するコミュニティビジネスも行なっている。この運動には、保育園から老人会まで協力してもらっており、世代間交流の場となっている。
 今年から、使用済みてんぷら油などの回収を開始。BDFに利用し資源の地域循環をより推進したい。

④ 広報部会
 活動を広く知ってもらうために、平成17年度から情報提供や公開を開始した。現在は「平小城だより」の発行、パンフレット制作、ホームページ・ブログへの掲載などを行なっている。