「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域のみんなで親林と親農の場づくり
兵庫県神戸市須磨区 北須磨団地自治会
はじめに

 私たちの街北須磨団地は、六甲山系の西端の山に囲まれた自然豊かな須磨区北部の丘陵地に開発されたニュータウンとして昭和42年に産声をあげ、翌昭和43年に『北須磨団地自治会』が設立されました。
 以来『友愛のまち』づくりを目指し、友が丘ふれあいのまちづくり協議会、友が丘地域福祉センター、友が丘防災福祉コミュニティ、青少年育成協議会、いこいの家運営委員会、北須磨団地婦人会などを中心に地域全住民が一丸となって取り組んできました。
 今回は、その活動の中より、40周年の記念として取り組んできた事業について記し、そのうちひとつの事業については、記録など詳細に報告をいたします。
 まず、北須磨団地のまちづくりを振り返り、次世代に向けたまちづくりをすすめるために『40年の40人ワークショップ』を立ち上げました。ワークショップは回を重ね、これから取り組むべき課題を大きく①安全・安心、②健康・福祉、③子ども・子育て、④環境・マナーの4つのテーマに決定いたしました。
 私たちの取り組みが評価され、地域活動をより積極的に具体的に協働と参画のまちづくりがすすめられるように神戸市との間にパートナーシップ協定が締結され、行政の応援もいただきながら次のような活動を展開しております。
(1)健康・福祉の面では、特に高齢者が多くなり、また、若者の同居者がいないご家庭も少なくない現状から、高齢者などを地域住民同士が「見守る」「支え合える」ためのしくみづくりを検討しています。
(2)子ども・子育ての面では、支援の取り組みとして「子育てHOT広場」「子育てのびのび広場」などを実施しています。
(3)安全・安心の面では、「明るくて歩きやすい道のあるまち」を実現するために灯りの調査を実施し街灯の増設など照度アップと住民による「灯りのいえなみ宣言」により「門灯点灯運動」を展開中です。
(4)環境・マナーの面では、地域周辺の豊かな自然を守り、伝える取り組みとして「みどり壁通信」の発行と地域内の各公園への掲示を行なっています。
 長い間野菜などを植え育て収穫を楽しんできた子ども会がお世話していた畑が諸事情で休止となり、放置されて荒れた状態になっていた緑地内の遊休地を地域の皆が楽しみ学べる教材園に利用することにしました。
 今回は特に(4)の環境・マナーをテーマにした、緑地内の北須磨友あい自然教材園、その周辺の竹林と雑木林の保全・整備について、その活動記録(状況)とその成果について記します。


活動記録(状況)

(1)北須磨友あい自然教材園事業について
 『40年の40人ワークショップ』環境・マナー部会では、「豊かな自然を伝えるまち」「マナーを守れるまち」の2つのテーマを掲げ活動をしてきました。
 その中から、遊休地の利用と緑豊かな周辺の竹林・雑木林の保全・整備をすることが決定されました。
 一方、「子ども・子育て」部会では、学校の放課後小学校の低学年向け「のびのび広場」の活動内容についても検討していました。
 自然教材園や竹林・雑木林は、環境・マナー、子ども・子育てのためだけでなく健康・福祉、安全・安心などまちづくりとし取り組むべき全ての諸問題にも対応しており、重要な事業と位置づけています。

今日までの取り組み経緯など
 平成21年7月森林ボランティアグループ『よこおみち森もりの会』と話し合い、40年以上手入れが出来ず放置されてきた友が丘地域南西部に広がる竹林・雑木林の整備保全を依頼お願いすることになりました。
 神戸市との協定の締結により、友が丘5丁目3の302㎡の土地を借り受け、自然教材園として開園することになりました。
 自然教材園は、健常者・身障者・老若男女の如何を問わず全ての地域住民が集い、良い汗をかき安全・安心で楽しく過ごせる癒しの場とし、また自然環境教育に寄与するとともに、生物多様性の自然回復のまちづくりに役立てることを目的にしました。
 森もりの会とは密接に協力し、友が丘地域福祉センター近くの緑地帯(雑木林)入り口より、自然教材園までの遊歩道の整備(車椅子でも通行可能な道幅と緩やかなスロープ)、安全柵の設置、不要な雑木の間伐などをしています。
 遊歩道の保全・整備や各種作業は、これからも引き続き継続して対応していただくことになっています。
 自然教材園として開園する土地は、当団地の子ども会が長年利用していたところですが、ここ5年近くは利用せず放置され、荒れ土地になっていました。
 この土地を以前のような土地に戻し教材園として野菜などを作るため、5月20日に開園式を実施し、同時に除草作業を60余名の地域の皆さんと共に楽しみました。この作業には、身障者施設「こんにちは友が丘」からも5名の皆さんが加わってくれました。
 5月30日には、教材園の担当役員が集まり、耕耘機を使って土地を耕し、畝づくりをし、やっと自然教材園らしい姿に生まれかわりました。
 6月3日には、自然教材園の実行委員会を開き、安全対策、畝の割当、作付、散水や工具の保管、設備、設置などについて検討をいたしました。
 ここでは、「須磨友あい自然教材園規則」も制定し、収獲物を活動参加者に分配するためにエコマネーも発行することにしました。
 6月8日には、友が丘地域福祉センターから自然教材園まで給水用のホースを、森もりの会と協力し設置しました。
 6月12日には60名が参加し、さつま芋(紅あずま、鳴門金時、他)600本を植えました。
 それぞれの畝管理は、友が丘地域福祉センター、公園管理グループ、寿会・健友会グループ、婦人部・子供会グループ、自治会、保育センターが担当することになりました。
 残りの畝には、正月用の葉牡丹他季節の花も教材や体験として育てます。
 7月24日の梅雨があけた暑い日には、子どもを多く含めた各グループから56名の方が参加し、はびこった草の除草を行ないました。
 10月30日には、竹林の道開所イベントを開催し、自然教材図の収穫祭(芋掘り)も同日に行ない、収獲したさつま芋は、イベントにも提供し、また参加者に配布しました。
(2)竹林の整備と保全(よこおみち森もりの会 協力)
 50年近く前の地域開発以来長年放置された自然教材園に隣接する緑地(雑木林・竹林)が荒れ放題になっていました。
 40周年記念事業のひとつとして居住地周辺の「この豊かな素晴らしい自然を次世代に繋いで行こう」「地域の皆が憩える場所にしよう」と決定しました。
 しかし、誰が?何時?どうやって?地域も高齢化(42・6%)が進み地域住民のみでは無理との結論となりましたが、「隣の横尾地区で森林ボランティアとして活動している『よこおみち森もりの会』に協力をお願いしてはどうだろう」となり、現在に至っています。
 森もりの会、神戸市建設局西部建設事務所、須磨区まちづくり課との打ち合わせを繰り返しながら企画を提案し、合意に達して平成21年9月より毎月2~3日の活動が始まりました。(1年間で概ね35回の活動)
①竹林の整備と竹林の道(遊歩道)づくり
 倒竹が多く、また、密集した竹でその作業は困難を極めましたが、一年近くが過ぎた現在では、見違える程の竹林になりました。
 竹林内の遊歩道も完成し、癒しの空間づくりが完了したことにより、10月30日には、神戸市や須磨区の代表の参列を得て開所式を行ないました。
 遊歩道は、80歳の高齢者や身障者の方も安全で安心して散策をしていただけるよう段差の少ない、緩やかなスロープ、幅広で自然の景観に違和感を与えないようなものとしました。
②伐採した竹材の利用(リサイクル)について
 倒竹、間伐した竹などは数えきれない程の量があり、現在は定寸に切断し積み上げている状況です。
 極僅かではありますが、須磨地域のイベント(妙法寺川さくらまつり、神戸まつり等)に健康足踏み竹や水鉄砲、竹トンボのクラフト材として、400セット以上を提供しました。
 須磨消防署北須磨出張所の簡易担架(10セット)にも提供、他のボランティアの数グループ(須磨FRSネットのグループなど)にはクラフト用やそうめん流し用に、また近隣の方には、園芸や竹垣用の素材を提供しました。


その効果

 私たちのこの活動は、平成19年10月にスタートし、企画。運営委員会など会議を重ねながら実際の事業実施は、その緒に就いて1年であり、大きな成果、効果が出るのはこれからと考えていますが、事業を展開してきて感じたこと、気づいたことを記します。
(1)自然教材園では、地域の全ての住民が自然の中で集い「野菜を植え育て収穫をし食する」ことを「楽しむ・切磋琢磨する・教わる・・・」が体験出来、食の安全・安心、農業についても考える機会となると思っています。
 次世代を担う子どもたちには、最高の生きた教育現場であると確信しております。
(2)竹林の保全・整備と遊歩道づくりでは、前述のとおり既に見違える程の景観になりました。
 しかし、自然環境の保全や整備は、終わりのない活動、作業です。「継続は力なり」と言われますように、続けることのみと考えています。


これから

 これからになりますが、北須磨友あい自然教材園では、さつまいもの後にはタマネギを植えており、今後も途切れることなく、地域の人たちが土に触れて、農に親しむ企画を立て、実施していきます。
 竹林では、タケノコの季節には、竹林の保全と景観を考え、ルールを定めてタケノコ狩りも楽しんでいただけるようにします。
 また、竹林内では、間伐をした竹を使ったおとなとこどもの竹細工教室を行なう予定です。
 竹林や雑木林の中には、多くのコナラやクヌギの木があり、これを間伐して、椎茸の植菌作業の体験も行ないたいと考えています。


むすび

 北須磨団地自治会は、土地の所有者である神戸市のご支援もいただき、北須磨友あい自然教材園および竹林を核にし、この地を地域の親林親農ゾーンとして日本の原風景の里山をイメージし、地域の住民とよこおみち森もりの会等の近隣の団体の協力も頂きながら、整備を続けていきたいと考えています。