「あしたのまち・くらしづくり2011」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域のきずな~安全・安心のまちづくり~
奈良県橿原市 橿原市ふれあいin新沢実行委員会
 橿原市は11地区の自治地区からなり、応募した新沢地区は世帯数は2170世帯、人口約5700人からなる市内では小地区で、高齢化率が高く市の災害時要援護者対象者が276人で20人に1人の割合で要支援者が必要になっています。地区内には1幼稚園・小学校・中学校があり、周辺には新沢千塚古墳群が散在しており、考古学の資料館があり歴史的財産が豊富な地域で、旧村と県営住宅や新興住宅からなる新旧住民で構成されています。
 また、公共交通機関の空白地帯で、高齢者や生活弱者にとっては買い物難民も今後の地区の課題になっています。
 このような地域の背景を踏まえ、地域で自分らしく住み続けられるための支え合いのケアシステムを構築する必要があり「安全・安心のまちづくり」を目指し、平成19年に自治会、民生・児童委員、地域福祉推進委員、婦人会、自主防災会、PTA、幼稚園、小・中学校等の代表で構成される実行委員会を設置しました。
 地区では、地域で支え合いの共助の精神で、子どもから高齢者までが集える居場所として地区公民館を拠点として地域住民が自分たちの出来ることを活かし、いろいろな取り組みを行なっています。

①高齢者一日入学講座
 昭和64年から、地域の高齢者が小学校で懐かしい子どもの頃を思い出し、子どもたちとふれあうことで楽しい一時をすごしてもらう「高齢者一日入学講座」を実施しています。インフルエンザの流行で中止した一昨年を除き21回を数えました。昨年は45人の高齢者が、図工の時間は3年生の児童59人とクリスマス飾りを作成、音楽の時間は4年生の児童58人と一緒に楽器を演奏したり、懐かしい唱歌を歌ったり、更に児童の合唱を聴いたりして交流を深めました。そして子どもたちと同じ給食を食べ、現在の学校の様子の一端を知ることができ、子どもたちは高齢者が、体が思いのままにならないことを知り、高齢者に対する思いやりの心を醸成する機会となりました。このように地域の子どもたちと楽しい一時を過ごすことから、子どもへの理解・現在の学校教育への理解等により地域と学校の距離を身近なものにしています。

②高齢者を対象にふれあいサロンを開催
 家に閉じこもりがちになる高齢者の介護予防を、人と交わることで元気に暮らせることを目的に、いきいきと活動的な生活をおくるためのきっかけづくりとなる地域のつどいの場です。公民館に来て、音楽や軽スポーツ、クラフト、手芸、園芸、季節の行事、カラオケ、健康講座・チェックなど多彩なプログラムを通し元気に暮らし続けることを趣旨として週1回実施しています。昨年は年間46回開催し、実施プログラム延べ78回、延べ参加者数1600人でした。参加者も社会貢献をと、雑巾を縫って近くの施設に贈ったり、昨年から、毎回参加者が千羽鶴を折り、広島へ修学旅行に行く小学生に託し、2000羽の平和を願う鶴を平和記念館に捧げてもらいました。
 この事業は橿原市の委託を受けた橿原市社会福祉協議会の助成を受けて実施しています。サロンコーディネーターが中心になり、地域の自治委員、民生児童委員を始め地域のボランティアによって推進しています。この事業では一人では来られない高齢者のために送迎ボランティアが活躍しています。

③地域子ども教室の開催
 地域で子どもを育て見守ることを趣旨として、平成17年度に文部科学省の委託事業として平成19年度からは市の委託事業として、月1回休日を利用し小学生・幼稚園児を対象に地域の大人が七夕やひな祭り茶会等の季節行事、クラフトづくり、ゲーム、畑を借りサツマイモを作るなど、自然体験や伝統文化を学び、異年齢交流や世代間交流を行ない、助け合い、規範意識や、感謝する心を育み地域住民の一員としての意識の醸成を行なっています。昨年度は10回開催し、延べ460人の子どもたちが参加し、地域のボランティアの大人たちは延べ120人でした。
 本年の最初の教室では、3月に発生した東日本大震災の被災地の多くのお友だちを励ますため、激励ボードを作りました。いろ紙に子どもたちの手形を縁取りし、そこに思い思いのメッセージを書き、その手形を切り取り大きなボードに貼り付けました。折り紙の花も貼り付け、心温まる激励メッセージボードが6枚完成し、地区公民館に展示しています。

④青色パトロールの実施
 子どもたちの下校時間に合わせ毎日ボランティアが車で地域内の巡回を行ない、子どもの見守りや地域の犯罪抑止力に繋げ、安全・安心な住みよいまちづくりの実現を目指しています。現在活動している登録者は約70人で、二人一組になってパトロールを実施しています。
 平成21年度には前年より犯罪件数が3分の1減少し、管内の警察署から感謝されています。

⑤地域学級
 地域の大人が参加できる地域学級は、学習テーマを園芸として、私たちの住む町を花とグリーンのある町にしようと学習しています。地域学級で土の話、土作り、環境、さし芽、さし木などを学び、自分の持っている“花とグリーン”の知識を少しレベルアップし、仲間たちとすてきな町にするため、地域へのボランティアの足がかりを目指しています。種から苗を作り、さし芽、さし木をして花苗を増やして、はじめは自分の家に、そして近くの幼稚園で園児と共に花壇に花植えをしました。廃材を使ってプランターや剪定枝を使ったハンギング用スタンド作りなど環境にやさしい取り組みも行なっています。

⑥花いっぱい運動
 県の補助金を活用し、公共施設の周辺や通学路に四季折々の花を植え、花の持つ力を住民のための癒しに活用し花育を趣旨に学習会を開催しています。学習会での作品は地区内にある高齢者施設に飾り、入所者の目を楽しませています。

 新沢地区でこれらの事業を推進する中で、すべての住民が参加できる事業を行なうことで、さらなる住民の交流に繋げ、支え合いのまちづくりを推進するために「ふれあいin新沢」のイベントを実施することにしました。

⑦「ふれあいin新沢」のイベント
 地区公民館は高台にあって金剛山、葛城山、二上山の山なみを背景に眼下に広がる地域の田畑や住宅が一望できるすばらしい環境にあります。平成19年から秋の夜長を利用し週末の2日間で「ふれあいin新沢」と題して、市の補助金を活用し、地区公民館や幼稚園・小学校を会場にしてイベントを実施しています。
 地区公民館では公民館活動の発表の場として教室の紹介や子ども教室・高齢者ふれあいサロンの活動展、また、地域住民の作品展示、保育所・幼稚園園児の合同作品展、小学生の作品展も行なっています。また、身体障害者通所施設2施設によるバザーも実施、来場者の協力により大変盛況でした。
 隣接する幼稚園では中学生による吹奏楽の演奏会を開催し、日頃聴く機会のない人たちにも練習の成果を発表しています。当日は古代衣装を用意し、来訪者に着用していただき、夜には公民館周辺の道沿いでは6500個のキャンドルで明かりの街道を作り、来客を幻想の万葉時代へとタイムスリップさせます。キャンドルを並べ、点火・消灯には子どもから高齢者まで約100名の住民が協力しています。また、稲刈り後の田んぼをキャンパス代わりに、中学生がキャンドルで毎年趣向を凝らした絵や文字を描きます。
 また、この地区は周辺に竹藪があり豊富な竹を使って明かりのオブジェをつくり、ソプラノ歌手による野外での祈りのコンサートでは万葉集やわらべ歌の歌唱があり、来訪者に感動を与えることができました。
 年々来訪者も増え、住民だけでなく、市内・市外からも1000人以上の多くの来訪者があり、来られた方に楽しんで帰っていただくために、おもてなしの心を大切に、地区の婦人会が中心となり、少しでも長く明かりの芸術を楽しんでいただくために、おにぎりとお味噌汁での接待を行ない、長い夜を子どもから高齢者までが一緒に楽しめる事業を行なっています。
 今年から新たに、支え合いのシステムを構築し、災害時に自力で避難することが困難な方を対象に、安全に避難できるよう、「災害時要援護者登録制度」を行政と協働で導入に取り組みます。このイベントを利用し、講演会や、命の大切さを明かりに託して啓発を行ないます。
 これらの事業を通して、これからも子どもから高齢者まで一人一人が、支援者として共助の気持ちで自分らしく住み続けられる「安全・安心のまちづくり」を目指し活動を行なっていきます。