「あしたのまち・くらしづくり2011」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

コミュニティ再生のまちづくり・くらしづくりを市民主体で―「ワ―っ!すいかでハローウイン」がすいか祭りになったよー!―
熊本県熊本市北区 NPO法人小町ウイング
里山再生と地域資源の見直し
 当団体は、平成12年3月に設立されました。植木町小野泉水公園から連なる横山という里山の環境保全や新たな観光名所としてのシンボルを目指して活動を開始しました。15年度「熊本県地域の夢大賞」という熊本県地域づくり政策の企画部門で大賞を受賞しました。その賞金40万円の3分の2の賞金と残り3分の1を熊本のシンガーソングライターのむたゆうじさんに協力を依頼し、コンサートチケットを売り資金づくりをし、「地域の夢づくりコンサート」を開催しました。里山整備資金の活動費をこのようにして集めました。里山が輝きのある里地として地域活性化につながるようにと夢を見ながらの活動でした。裏山にある小学生と植樹活動を開始したのをきっかけに観月会コンサートやそばを収穫しながら環境コンサートなど植木町の地域魅力アップ事業助成金を活用して、地域資源の魅力に気づいてもらおうとイベントをしながらの活動です。今では、楽しい思い出ばかりとなっています。マスコミにも取材され、水の涵養のための植樹活動や循環型生活の大切な資源であることなど周辺地域の住民の方に認知され成果が出てきました。周辺地域が動き始めたのです。そこで、新たな課題の挑戦に取り組むことにしました。
 植木町は、22年3月に平成の合併で熊本市となりました。日本一のすいか出荷量の生産地として全国的に知られた町です。近年は、核家族化の影響で大きなすいかが食べきれないことやゴミ出しに困るという理由で消費されないということを耳にするようになりました。地産地消としての食育にも影響すると思いました。また、JAの統合で「植木すいか」というブランド名もなくなっていました。「何とか地産地消を生かした町の活性化を図り、農業者の応援にもつながればうれしい」という気持ちから私たちは、平成18年から里山の環境整備と共に植木生産出荷の最盛期の5月にすいかのイベントを開催することにしました。それは、子どもたちにふるさとの味覚を伝え、食育につながるものをと考えました。里山で「すいかでハローウイン」というイベントを企画実施したのです。特産品の収穫祭という意味合いを出しました。大成功となりました。子どもたちの興味は、すいかの早食い競争につられ、口いっぱいに頬張りおいしい笑顔がほころびました。そしてその後は、自分流のすいかの面作りです。五月晴れの太陽と共に子どもたちの熱心に面作りをする顔に親たちも喜んでいました。毎年5月と8月の2回開催してきました。
今年でこのイベントを始めて当団体としては、7回目になります。参加者も年々、上手になったり、時の話題の顔をくりぬいたりと楽しみにしているようです。すいかを食べないと面作りができないために自然と子どもたちの口に入ります。

「すいか祭りイン田原坂」として「すいかでハローウイン」の登場
 平成20年より、植木町の産業振興課とJA青年部、商工会、観光協会そして小町ウイング等が実行委員会形式でこの年からの1月から会議を重ねて「すいか祭りイン田原坂」と題して特産品のすいか祭りを開催することになりました。ここ田原坂は、西南戦争の激戦地として知られています。植木町の産業の祭りと新幹線開通で歴史観光の発展等の効果を期待しながら熊本市北部としての発展を願っての祭りを希望して取り組みます。様々な団体の力が一つになり町の産業振興として進展すれば地域づくりをしていた当団体も嬉しく思います。100人規模でやっていた当団体の活動も広がります。
 「すいかでハローウイン」も年々参加希望が多くなり抽選して限定人数を選定するほど人気となり県外からも、このイベントに参加したくて来場される方もいます。
 産業振興課もこれに力を入れて、九州JRの観光ツアーとして取り組みました。このようなお客様のおもてなしをするために、当団体はさらなる挑戦をしました。21年にすいかの皮から中身まで捨てないでいいようなレシピコンテストを企画実施しました。それを新たにすいかレシピ集として翌年に選定し作成しました。さらにすいかのアイスクリームを商品化して取り組みました。これを食べるために宮崎から毎年参加したという声も聴きました。昨年は、亡きばってん荒川さんが歌ったドーナツ盤が見つかりました。昔、営農をするきっかけに作られ農家の女性たちが踊ったというすいか音頭であり、当団体がCDにして踊りを復活させました。昨年ANNニュースに取り上げられていました。今年は、さらに踊る人口も増えて来場者や田原坂民謡保存会も参加されていました。このように、地域の宝探しをしながらよそ者であった私たちが住民となり、市民参加のまちづくりに貢献し様々な仲間とつながりながら活動し続けられたのは、人間が大好き、町が大好きになりたかったからかもしれません。流した涙と汗を継続していく中に、違った価値を得るということを皆さんも体感してみてはいかがでしょうか。価値創造を自分たちの中に獲得できる財産となります。
 すいか祭りとなり、20年度は、5000人の参加者だった来場者も、21年度は6000人、22年度は1万1000人、23年度は1万500人と増加傾向の来場者となっています。今年の会議も既に開催されていました。今年は3月11日の東北の大震災で自粛するムードが高まっていましたが元気のある所は、元気を出して応援しようという実行委員会のメンバーの意見や町も頑張ろうという機運が高まり、売り上げの一部や来場者にも義援金箱を設置しながらの開催と成りました。第4回目のすいか祭り実行委員会として継続し参加できたことで地域づくり(現火の国未来づくりネットワークのメンバー)の成果がありコミュニティの構築の一役を担うことができた喜びでいっぱいです。また、市民活動主体から多くの人の力で広がり、様々な人と繋がっていきました。来年から政令都市を目指す熊本市の北の玄関としてのすいかが広がりを見せることでしょう。

コミュニティカフェ(地域の縁側)としての保健室しらかば
 当団体のもう一つの活動の場として19年度から私たち専門職を生かした(保健師、看護師、介護支援専門員等)居場所を介護保険外で開設しています。新たな地域福祉の活動として取り組んでいます。
 ここは会釈程度の挨拶しかしていないような新興住宅地です。ここでも独居や夫婦世帯が増加しています。
「どこにも行く場所がなかー」「あたりを見廻してもカーテンが閉まっているし、友だちは、デイサービスや亡くなっていないしー」という相談が多くありました。人との交流を求めている人がたくさんいました。公民館に行くと「何しに来たなー」と言われるし寂しいものです。馴染みの関係や新たな互助の仕組みづくりが必要です。これは、「コミュニティカフェ」や「縁側」「居場所」といわれるもので超高齢社会には必要になると思います。自宅横に併設して提供しています。お茶のみ感覚での相談場所として提供しています。
 運営は、利用料200円、相談は、1時間1000円です。会員会費や寄付金や野菜の収益、助成金等ボランタリーの活動として取り組んでいます。週1回コミュニティカフェ講座を開催しています。介護保険や後期高齢者医療では行政担当者を招いたり、地域の住民の中から歴史講座をしてもらったりしています。いわゆるシニアライフワーク講座として取り組める講座を開催しています。男性は、制度や歴史に関心が強く、女性は、食生活に関心があるようです。町の栄養士さんや食改善グループにお願いして食事会も開いています。一人暮らしの人は、地域の人と食事会することを楽しみにされています。また、地元のおばあさんから藁苞づくりや納豆づくり等を教えてもらった時は、参加者から経験できない知恵を学ぶことができたと感動の言葉を聞けました。最近では、照れくさそうな壁を乗り越えてそば打ちや団子汁等で、男性が率先して力を発揮されるようにもなりました。

地域支え合いの必要性
 保健室という特色を生かし、健康チェックは毎回しています。健康にはみなさん意識も高く、筋力強化のためのタオルを使ったストレッチ体操も好評です。介護保険を利用している要支援の参加者は、軽度の認知症があるが皆で支え、その人の関心事を引き出して自然な関係が築け、生活の質が改善するなど居場所の成果が出ています。(パーソンセンタード・ケア)です。
 また、高齢者だけでなく小学生たちも長期の休暇には、ここを訪れて世代間相互の交流やワークショップ等をしています。子どもが参加することにより賑やかになることや、高齢者の優しさを子どもたちも学んでいるようです。
 居場所としての取り組みが新聞やテレビ等に紹介されて地域力が育つことは、大変いいことです。ビジネス化が課題であるとメディアも報道しています。その地域の実情や、共に支えることの実践がキーワードです。この実践の中で、支え合いを大切に思う人が育つと考えます。
 保健室しらかばは、昨年、居場所ネットワークとしてフェスタを開催しました。居場所のネットワークが広がりました。
 地域資源は「思い」であり「人」です。人に見える形にすることで地域の支え合い、互助機能ができます。例えば参加者の顔が見えないと安否確認に行ったり、互いに心配されるようになりました。これが地域コミュニティ再生につながっています。これからの時代ニーズは、形よりも質が求められる時代です。行政にも、市民のパイプ役として、自分たちのまちづくりの目線で地域社会を考えてほしいと思います。
 居場所・コミュニティカフェで馴染みの関係が深くなったことは、これからの高齢者が増える地域福祉で大切な資源となりました。しかし、メディア等で言われているようにビジネス化が課題です。持続可能な地域の拠点にしていくためにも、経済的にも安定した運営ができることが必要です。ともあれ、地域を元気にしていけるように努力したいと思います。