「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

早寝早起き朝ご飯「薪炊き、朝がゆの会」活動―山代小・中学校・山代ファミリーサポートセンター施設交流事業―
石川県加賀市 NPO法人阿羅漢
法人施設設立経緯
 施設事業開始(2009年8月)法人設立(2006年2月)
 一人の現職の地元中学教師が生徒指導として長年(14年間)この地域の教育問題に携わってきたのが発端で、荒れを繰り返す学校現場や新しく赴任する若い新任後輩教師たちの苦悩を憂い、地域の関係者や行政との論議を重ね、自らが初代理事長として中心となりNPO法人を設立し、さらに区長会を始め関係機関や地域の声を集め、実態を検証し2年間にわたり構想を練り企画し、地域関係者の協力の下、温泉街の中心地にある3階建ての空きパチンコ店舗を再利用し、山代ファミリーサポートセンター施設事業の開設にこぎ着け、これまで3年間様々な施設事業が展開されてきました。

施設事業内容
 山代ファミリーサポートセンター施設複合事業(21年度、22年度、23年度)

1.子育て支援つどいの広場「すまいる広場」(市委託)
2.スーパー学童(学童保育)「ちゃれんじゃー」(市委託、毎月チャレンジ活動実施)
3.夜間学童保育(接待さんコンパニオンさん支援)「たそがれハウス」
4.自立支援ホーム(障がい者・若者支援住宅)「ドリーム」
5.里親(ファミリー)ホーム(県委託)
6.地域巡回相談業務「やましろ」(市委託)
7.地域開放教室「やましろ」(文化スポーツ各種教室)
8.地域交流拠点事業「やたがらす」(地域交流・ボランティア情報拠点)
9.高齢者介護予防支援事業「いきいきサロンあらはん」(市社会福祉協議会委託)

関係行政機関の施設に関するコメント
 平成21年度より山代温泉の中心地において、子育て支援や子どもの健全育成を目的に夜の学童保育や自立援助ホーム開設など、表面化できない繊細な問題を真摯に受け止め献身的に事業展開している。地域の福祉ニーズを常にキャッチし、高齢者や障がい者も利用できる事業なども積極的に取り入れ、公共性のあるNPO法人として活動している。(加賀市社会福祉協議会 事務局長)

応募事業要旨と目的
「生活保護や就学援助家庭が全体の20%を超える劣悪な子育て環境の全国有数の温泉場地域において、さらに仕事関係などで親のいない寂しい夜を過ごす子どもたちや、自立を求める若者に対して、生活能力の向上やあわせて地域のコミュニティ機能を向上させること」を目的に、
「子育てコンビニとして空きパチンコ店を活用して展開されている、各種事業を複合した施設で、子どもたちをはじめボランティアなどで関わる中高生や青少年、ひとり暮らしの高齢者をも対象に、現行制度にない夜の学童保育支援や自立支援(里親)少人数ホームの施設関係者も取り込んで、「薪炊き、朝がゆの会」と称して早寝早起き朝ご飯の基本的生活習慣の構築を目的にした活動」を実施することを要旨とする事業です。

 早寝早起き朝ご飯、とはなかなか行かない温泉場の子どもたちの生活があります。夜更かし、遅起き、朝飯抜き、が日常の中で特に支援や特別な指導が必要な生徒を中心に、自己肯定感や有用感を育てつつ、基本的な生活習慣の構築や、安定した学校生活を送る重要な生活リズムを身につけることを目的とします。学校生活全体の落ち着きも左右するのがこの取り組みであり、地域のコミュニティ機能の構築も目的の一つです。食材など奉仕家庭を中心に募集していますが、関係機関や各種団体などに協力を要請し街を挙げての事業に発展させたいと考えています。

応募事業内容
・小中学校、学期間の毎週火曜日、年間40回程度。「朝がゆの会」午前6時半準備、7時会食、7時半後片付け。中高生やボランティアスタッフ中心に準備、参加者は小中学生や地域のひとり暮らしの高齢者など
・前日準備会、午後5時から(材料、道具準備、薪集め、薪づくりなど)中高生または参加児童
・食材集め、前日または週末中心、食材など奉仕家庭訪問回収など、中高生中心
・その他、広報活動(チラシやポスターづくりや街宣活動など)

事業の経費など特徴
 参加者の会費が0円、つまり無料なのは参加者自体がボランティアスタッフとして前日の薪集めや準備などに参加協力するからです。毎回前日のスタッフやボランティアの人数を基準に人数分の朝がゆを準備します。従って「働かざる者食うべからず」で必ず自分の労働の対価としてこの朝がゆにありつける仕組みになっています。また地域の方々は食材などの提供奉仕によって、誰でも遠慮なく参加できるシステムになっています。
 そして高学年は薪割りや、薪づくりの作業、低学年は近所の野原や裏山を駆け巡って自分の食いぶちの薪や小枝集めが必要になってきます。また托鉢とは行かないかもしれませんが、申し出のあった各家庭を回っての食材集めも大変有意義な地域探訪の機会になり、人間としての成長に欠かせない営み、コミュニケーションになるものと考えます。

薪炊き、薪づくりと里山保全について
 山代ファミリーサポートセンターではこれまで施設に関わる関係者や地域の人を対象に毎月1回ほんものプロジェクトと題して、様々な自然体験活動やほんもの体験活動を行なってきています。かまどでご飯を炊いたり、薪ストーブや薪調理器具を使って様々な手づくり料理にもチャレンジしています。今年度は朝がゆの会を通じて、その原料となる薪づくりや薪割り道場開設などを加えて里山保全への環境教育啓蒙イベントを推進することも目的としています。
 大自然との共存を活動理念に持つ当法人は、これまで施設関係者に対してエコ活動はもちろん、石臼を活用した餅つきやそば打ちなどのスローフード、スローライフに関するイベントや啓蒙なども行なってきました。
 朝がゆの会を通して、薪炊きや災害時の炊き出しなどにも通じる体験を通して、子どもたちの心や地域や関係者の人々の心に、自然環境の再生循環を目的にしている広葉樹林の里山保全事業から、粗食の智恵、孤食を防ぐことや様々な食育に関することも学んでいただく機会となることを願っています。

活動の成果及びエピソード
 活動の新聞報道がきっかけで、ご近所や知り合い、関係団体からは、「先生、この漬け物ちょっと人気で・・・」「私今年、梅干したくさんつけるから・・・」などと、物資の提供奉仕がたくさんありました。もちろん地域の方の協力やお手伝いもありました。遠く遠方からも、「米を2俵ばかり・・・」と金沢方面からも問い合わせがありました。おかゆで体もあったかくなりました、さらに地域の皆さんのご厚意で心も温かくなりました。
 回を重ねると、「皆さんで食べて下さい」今日から、二人のお子さんが参加の、母子ホームで暮らすお母さんからの差し入れもありました。「もうこんなことはしなくて・・・」「先生、気持ちですから・・・」と大きなオムレツや卵巻き、お菓子の差し入れもたくさんいただきました。「私も、仕事が朝早くて、助かります」まさしく朝の学童保育が、誰も指導員がいないなかで、子どもたちや高齢者の集まりで実施されているようです。
 様々な地域の輪が広がってきました。ずいぶんおかゆづくりや薪づくりが上手になって毎回誇らしげな中学生、お手伝い大好き小学生、ラジオ体操帰りの近所の皆さん、この日を楽しみにしている一人暮らしのお年寄りたち、毎回20数名が朝がゆの会に参加しています。 皆さんの笑顔をみてこの事業を開始して本当に良かったと思っています。