「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

心安らぐサービスを目指して
島根県大東町 NPO法人ほっと大東
1.ほっと大東の生立ち
(1)大東町の人口構造(推移)
S55 S60 H2 H7 H12 H17 H22 H24
総人口 16,832 16,665 16,114 15,403 14,607 14,602 13,062 13,514
75歳以上 951 1,102 1,281 1,551 1,870 2,390 2,684 2,698
65歳以上 2,396 2,732 3,177 3,744 4,112 4,357 4,407 4,381
15~64歳 10,865 10,506 9,948 9,200 8,452 8,412 7,900 7,554
0~14歳 3,571 3,427 2,989 2,457 2,043 1,833 1,655 1,579
高齢化率 14.23% 16.39% 19.71% 24.30% 28.15% 29.83% 31.56% 32.41%
後期高齢化率 5.64% 6.61% 7.96% 10.09% 12.80% 16.36% 19.22% 19.96%
(単位:人)
(注:毎年末但し24年は5月末実数)

○特に大きな産業を持たない典型的な中山間地域。昭和30年のピーク時には2万1667人だった総人口が、上記のとおり急速に過疎化、少子化及び高齢化が進行している。
○こうした状況下、最優先として取り組むべき少子化対策について効果的な具体策なく、未だに少子化、人口減少傾向に歯止めがかからない。
○大東町は平成16年11月、近隣6ヶ町村と合併し、雲南市大東町となる。(雲南市の現在の総人口約4万2千人)
(2)ボランティア団体「ほっと大東」の立上げ
○平成9年3月
 当地唯一の総合病院である「雲南共存病院」(現雲南市立病院)を退職した看護師が中心となって住民参加型ボランティア団体「ほっと大東」を結成。
・発足時の会員…24名(元町職員・県職員・会社員・主婦等参加)
・ネーミング~「ほっと安心してもらえるサービスをホットな思いで提供する」
・主な活動~高齢者及び障害者を対象に助け合い活動。(清掃・買い物・食事・通院介助・付添い・話相手・死場勤め等)
○平成9年11月
 ミニデイサービスを開始(会員の自宅開放、高齢者の居場所の提供~サロン)
(3)ほっと大東の転機
○平成12年5月
 さわやか福祉財団インストラクターによる講演会開催(NPO法人設立、介護保険事業参入を推奨される)
○平成12年8月
 NPO法人設立総会(正会員数37名 賛助会員22名)
活動分野
①医療・保健・福祉(助け合い・移送サービス・介護保険事業など)
②子どもの健全育成(預かり保育)
○平成12年11月
 NPO法人認証
 特定非営利活動法人ほっと大東設立登記(県内14番目)

2.ほっと大東の事業展開
○平成13年1月
 介護保険事業開始
①居宅介護支援事業所「ケアプランほっと」
②通所介護事業所「デイサービスほっと」~当初定員15名、現定員30名
○平成13年3月
 小学生及び幼稚園児の預かり保育開始
○平成13年6月
 預かり保育の内、小学生は大東町の放課後児童対策事業として受託(旧大東幼稚園舎を無償で借り受け、ちゃれんじクラブとして再スタート)
○平成18年9月
 雲南市福祉有償運送サービス運営協議会開催、承認を得る。
 中国運輸局島根運輸支局にて許可・登録(中島福第5号)
○平成21年5月
 通所介護事業所「デイサービス新庄」開設(定員25名)
○平成22年10月
 認知症対応型通所介護事業所「デイサービスゆけむりの里」開設(定員12名)

3.取り組みに当たっての考え方
○発足時の基本的な考え
・行政は今や万能ではない。(人員、人材、財源不足)
・「困った時はお互い様」「地域の課題は住民の支え合いで解決」
・フォーマルなサービスだけでは、支えきれない。インフォーマルな活動も必要。
・地域住民の役に立ちたい「いずれ自分が通る道」
・お金は二の次、参加することで自らが生かされる。
○NPO法人設立時の思い(子育ての支援)
・21世紀最大の課題と言いえる「高齢化」と「少子化」に挑戦したい。(元幼稚園教諭の会員の思いを尊重、子育て支援に取り組むことに)

4.多くの課題への取り組み
○通所介護事業の開始に当たって
・当初は訪問系の介護事業を考えていたが、当地では圧倒的に通所介護事業所が不足しているとの情報を知り、あえて通所介護事業に方向転換した。
・その結果、特に建物(会場)と資金調達という大きな課題に直面
解決策
 建物~倒産した元縫製会社の2階建て建物を借用(3年後に買取)。その後開設した二つの通所介護事業所も遊休建物(買取)。
 資金~寄付金による資金調達を決断、会員による寄付金の依頼活動。
 実績~900人を超える住民から700万円を超える浄財を集める。その他、厨房設備、各種備品など提供が得られた。(当時、補助制度はもちろん、融資を受けれる窓口は全くなかった)
・建物の増改築、車両の調達、当面の運転資金等に充当、借入金なしで営業開始。
○預り保育の会場の確保
・当初、通所介護事業所と同じ建物内で実施したが(世代間の交流)、狭隘な建物に加え、子どもたちが幼く、元気の良さが高齢者との交流には繋がらなかった。
 解決策 大東町が計画していた放課後児童対策事業実施に当り、事業の委託を受け、同時に会場も空いていた旧大東幼稚園舎を無償貸与を得た。
○人材の確保
・地元病院を退職した看護師が中心となって発足した経過もあり、その後も同病院の退職者の参加が相次ぎ、今まではほとんど人脈による採用で事足りた。(看護師・居宅介護支援専門員・介護福祉士・理学療法士・ヘルパー・管理栄養士・調理士・保育士など)
○福祉有償移送サービスの取り組み
・団体発足時より、マイカーによる高齢者の通院の手助けを行なっていたが、介護保険事業参入後は福祉車両による移送を行なったため、利用者は150名にまで増えた。(白タク行為として違法ではあったが、町内の4タクシー業者が1台の福祉車両も持っていなかったことと、全国的にも多くの団体、個人で取り組んでいた~国交省も容認していた経緯あり)
・平成16年3月
 国交省より「移送サービスに関するガイドライン」発出。具体的には自治体で運営協議会を設置、地域での合意が必要となった。運営協議会の設立の機運は全国的にも盛り上がらなかったが(業界の反対)、県に連名での「要望書」の提出や雲南市(16年11月合併)に協議会立ち上げを要望。
・平成18年9月
 行政担当者の努力もあり、2回の運営協議会開催を経て「ほっと大東の福祉有償移送サービス」が承認され、9月29日運輸局の許可取得、10月1日事業開始にこぎつけた。スタート時の利用登録者は110名

5.ほっと大東の現在の活動状況(平成24年5月末現在)
(1)介護保険事業
イ)居宅介護支援事業所
①ケアプランほっと
・居宅介護支援専門員(ケアマネージャー) 6名(内常勤5名)
・利用者数 171名
口)通所介護事業所(介護予防通所介護含む)
②デイサービスほっと 利用定員30名
③デイサービス新庄 利用定員25名
ハ)認知症対応型通所介護事業所(介護予防通所介護含む)
④デイサービスゆけむりの里 利用定員12名、利用定員計67名
(2)介護保険事業外の事業
⑤ミニデイサービス
・対象者~介護保険対象外の高齢者
・週1回開催
・利用会員数18名
・利用料1000円(1回)
⑥助け合い活動
・掃除・買物・食事・通院介助・付添・話し相手その他 ・利用料500円(1時間)
⑦福祉有償移送サービス(中国運輸局島根運輸支局登録)
・対象者~単独で公共交通機関が利用できない移動困難者
・利用登録者132名
・利用料~タクシー料金の半額以下(基本料金20キロ以内200円、20キロ以上400円+1キロ100円)
・登録車両台数12台(内福祉車両9台)
・登録運転手14名
⑧雲南市の放課後児童対策事業~雲南市からの受託事業(ちゃれんじクラブ)
・対象者~大東町内の小学生
・利用登録者83名
・利用料~(基本料金)半日500円、1日1000円
⑨幼稚園児の預かり保育
・対象者~大東町内の幼稚園児
・利用登録者23名
・利用料~(基本料金)半日500円、1日1000円

6.活動を振り返って
・豊富な人材(有資格者)に恵まれた
(准)看護師 26人
介護福祉士 9人
幼稚園教諭(保育士) 8人
ヘルパー2級 10人
理学療法士・作業療法士・管理栄養士各1名その他調理員・運転手等
総会員数93名
・地域住民の理解と支援
・地域の課題(ニーズ)に積極的に挑戦(介護保険事案外の事業は全て不採算)
・雇用の場(自らの生き甲斐の場)の提供=地元高齢者の採用~調理員(8名)・運転手(14名)など

7.今後の課題と目指すもの
・安定した雇用の確保(職員の高齢化は否めない事実)
・立ち上げ当時の“熱い思い”を如何にして後輩に伝えるか(初心を忘れない)
・地域住民への感謝(恩返し)の気持ちを大切に
・「ほっと大東があって良かった」「ほっと安心した」など~一人でも多くのサポーターを
・NPOらしいNPOであり続ける(自主性・先駆性・柔軟性・迅速性など)
・地域、行政、企業との協働の推進など