「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

目指せ!日本の田舎町再生のお手本づくり!!
―コミュニティビジネスと、ふるさと教育を連動させ、新たな手法で地域再生とホスピタリティ世界一を理念に人生賭けて取り組むまちづくり会社の事例―
青森県大鰐町 プロジェクトおおわに事業協同組合
 青森県津軽地方の最南端に位置し、古くから津軽藩の奥座敷として栄えた温泉町、大鰐(おおわに)。その歴史は開湯800年といわれ、大鰐高原りんごや大鰐温泉もやし、そして近年では、青森シャモロックや大鰐しいたけ等の農産物にも恵まれる、人口約1万1千人の小さな山あいの町である。
 わが町では、平成初めのリゾート開発により、スキー場周辺に「スパガーデン湯〜とぴあ」をオープンさせ、通年観光、そして、首都圏や関西方面からの新たな集客を図ろうとしたが、バブルの崩壊や経営計画の甘さ等から平成7年には閉鎖に追い込まれ、と同時に町は約100億円もの負債を抱えることとなった。
 その頃から、「第二の夕張」「借金まみれの町」等と言われるようになり、町民(特に若者や子どもたち)から笑顔が消え、町の将来に夢を持てない人たちが、次々と去っていった。
 「このままじゃいけない!何としても、大鰐の良いものを再発見し、わが町を希望ある元気な町に再生しなければ!!」との思いで、平成19年8月に、民間まちおこしグループ“OH!! 鰐 元気隊”(おおわにげんきたい)を、16人の仲間と共に立ち上げた。「コアメンバー16人が、ひとり10人集めよう!」と企画した、設立記念フォーラムには、約170名の町民や町外の応援者が集まり、最高のスタートを切ることができた。
 それから、半年間かけ、私たちはワークショップを重ね、大鰐町を元気にする「アクションプラン」を策定した。通常、小さな町では、町役場や商工会がアクションプランを作り、それをまちおこしグループや、各青年部等に提言するのが、ほとんどのパターンであるが、生意気にも我々元気隊は、結成翌年の春には、町長(町役場)に対し、プラン提言をし、@地域の資源まるごとプロジェクト Aみんなが楽しいふるさとづくりプロジェクト Bみんなが一緒にがんばるべしプロジェクト の三本柱で活動をスタートさせた。平成20年度に入り、地元大鰐小学校5、6年生による「OH!! 鰐 元気隊キッズ」の活動も始まり、このあたりから少しずつ町の空気が変わりはじめた。(ような気がした。)この年、元気隊は、各種講演会や「パートナーシップで進める、大鰐活性化のための意見交換会」「おおわに活性化フォーラム」「OH!! 鰐 元気隊キッズによる、大鰐町の未来 アイデア発表会」等を開催。また、元気隊キッズは、平成21年度より、@町内清掃活動と、A元気隊キッズ野菜づくり事業をスタート。その目的は、ズバリ、「ふるさと教育」である。@毎月、町内の観光名所や親水公園、高速道路のバス停等を、大人の元気隊と共に、小学生の元気隊キッズ隊員が清掃します。その際、我々大人の元気隊員は、キッズ隊員の前で、町の悪口や、ネガティブな発言は、一切しない事を申し合わせ、わが町の素晴らしさや、夢のあるポジティブな発信だけをします。A野菜づくりについては、全国の小中学校で行なわれている、学校菜園とは、ちょっと、いやかなり違った手法を用いている。春の植え付け前に、野菜ソムリエの先生をお招きし、これから東京や大阪等の大都市の一流レストランで流行する野菜は何かを学び、そして、作付。秋の収穫までの間、担当の先生や大人の元気隊員と共に野菜を育てます。その間に、授業では、元気隊員や先生が、「ビジネスとしての農業」つまり、生産から流通、営業、販路開拓、販売促進、接客マナー、名刺交換の仕方まで、教え込みます。毎年10月初めの金曜日の夜、元気隊キッズと、引率の先生、そして大人の元気隊員は、貸切バスで東京に向います。そうです!子どもたちが自ら作った「元気隊キッズ野菜」を東京へ売り込みに行くのです。車中では、接客マナーや名刺交換の練習をし、土日2日間、東京飯田橋にある、青森アンテナショップ「あおもり北彩館」での販売体験学習に備えます。到着と同時に、店長さんと名刺交換、そして、「鰐come流朝礼」で挨拶訓練をし、販売チーム、アンケートチーム、試食チームの3班にわかれ、スタート。アッという間に、子どもたちは一流販売員に変身します。夕方まで、3班ローテ―ションし、初日の販売体験の終りです。しかし、元気隊キッズのメインイベントは、ここからです。
 この夜、我々は「大鰐町PR交流パーティー」を開催しております。平成21年から、毎年10月の第1土曜の夜に、都内のレストランを貸し切り、おこなっており、今年で5回目となります。参集メンバーは、都内在住の著名人の皆様。外車販売会社社長、百貨店バイヤー、一流レストランシェフ、フードジャーナリストの先生、世界的木版画家の先生、官僚の方々。その場面でも元気隊キッズは、堂々と名刺交換をし、自己紹介し、大鰐町のPRをします。さらに、著名人の方々は、各々子どもたちと大鰐町のすばらしさについて、目線をそろえて会話します。(実は、この方々には前もって、子どもたちとの目線をそろえることや、ポジティブな発信しかしないことを、打ち合わせしているのです。)
 子どもたちは、私たちと一緒に清掃活動をしていた際に耳にしたことが、本当なんだ!と再認識します。そして、2日間の体験学習を終え帰宅したキッズたちは、両親や祖父母に、こう言います。お父さん、お母さん、そして、おじいちゃん、おばあちゃん。今までみんなが言っていた、大鰐は借金だらけで、何も良い所も夢もない町だから、大人になったら、町から出ていったほうがいいぞ!っていうのは、間違いだよ。だって、こんなにすごい東京の人たちが、みんな“大鰐町は、これからものすごく良い町になっていくんだよ!だから、みんなは自信と夢をもって、大鰐をもっと好きになって下さい!!”と、言って著名人の名刺を差し出すのです。
 そうです!元気隊キッズが、自ら家族に「気づき」を与え、親たちは、子や孫から気づきを拝受するのです。
 とても時間やエネルギーのかかる、アナログ的手法の地域づくり活動ですが、私たち、元気隊は、一切ぶれることなく、この活動を続けることにより、必ずわが町は再生し、そして、この子どもたちが、確実にその魂を受け継いでくれるものと、確信しております。
 これが、私たちが20代の頃から学び、師事してきたしていた萩原茂裕先生「第四の教育」つまり、「ふるさと教育」なのです。
 私たちは今、平成21年6月1日から、「第2のチャレンジ」をしております。まさに人生を賭けた挑戦です。元気隊コアメンバー16名中、9名が出資して立ち上げた、まちづくり会社「プロジェクトおおわに事業協同組合」です。平成16年に町営でオープンした、複合施設「大鰐町地域交流センター 鰐come(ワニカム)」を、町は4年間運営した後、5年目に入り、指定管理者を募集したのです。しかし、町議会は財政難ということもあり、指定管理料ゼロ円で公募という、非常に厳しい条件提示をしたのです。当然民間企業は誰も手を挙げず、まちづくり会社を立ち上げた我々が、管理者(経営者)となったのです。当初、町民のほとんどが、「町でやって、赤字なのに、シロウトのヤツらがやって成功するわけがない!1年で倒産だ!!」と言われ、大ブーイングの嵐でした。しかし、私たちは、本気でした。ホスピタリティ、清掃、笑顔、大鰐産農産物のブランド化・・・全て、世界一!を経営理念に掲げ、大改革をスタート。社員教育の徹底と農産物や加工食品の商品開発、そして販路開拓や他市町村企業とのコラボレーション等により、10ヶ月目で、奇跡の黒字化(前年対比138パーセント)を達成。3年間の指定管理契約期間で、売り上げ目標の200パーセントをクリアし、現在契約2期目、5年目に入ったところであります。
 私たちはこれまでの約4年間、「コミュニティビジネス」の手法を用いて、鰐comeの成功ではなく、大鰐を中心とした、地域全体の元気再生をテーマにがんばってまいりました。これからの目標はサービス世界一といわれるレジャー施設「東京ディズニーランド」やホスピタリティ世界一の「リッツカールトンホテル」等に負けない「おもてなし」を、このたった1万1千人の町「大鰐町」で実現し、それを体験するために、世界中から観光客が訪れ、わが町の産物が発信されるようになることです。
 きっと、「OH!! 鰐 元気隊キッズ」卒業生の中から、我々の志を受け継ぎ、そして実現してくれる人材が生まれるものと確信しております。
 生まれ育った故郷の再生に汗することは、そこに生活する人間として当然の使命であり、あたりまえの行動です。全ては、地域と御先祖様への「感謝」なのです。
 プロジェクトおおわに事業協同組合は、「まちづくり会社」として、これからも「あたりまえのことを、あたりまえに!」汗し、そして知恵を出し、一歩ずつ邁進します。