「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

ひろがれ ひろがれ! こころの輪
東京都大田区 あおば生活学校
子育ての経験を生かして
 2000年3月、新年度に向けた話し合いの中で、当時、社会に起きていた神戸児童殺傷事件など、子どもを取り巻く痛ましい問題に話が集中した。「せめて自分たちの住む地域からは子どもにまつわる悲惨な事件が起きないようにしたい」「私たちは子育ての経験をしたのだからきっと役立つことがある」と皆の意見が一致し、活動がスタートした。子どもが集まる最寄りのA児童館を訪問し、生活学校運動と私たちの思いを伝えた。5月、「おべんと持って児童館へ行こう」の学習会を実施、その日から児童館を利用する子どもたちと自由に遊ぶことを始めた。
 当時この児童館には1~3年生の学童保育50名と自由に遊びに来る子どもを含めて約80名が利用していた。この中に中学生男子6、7名がおり、カセットテープを持ち込み、足を投げ出して座り、コーラを片手にガンガン音楽を聴く、2、3人で連れ立ちガムを壁になすりつける、遊具を壊すなどをして職員の注意を引く行為をしていた。小学生も玩具の取り合いなどで大声で泣く、足蹴りをする女の子がいたりなど館内は騒然としていた。私たちは4、5人で週に2回(l回2時間程度)子どもたちと遊びながら、子どもの話をよく聞く、ほめる、スキンシップを心掛ける等を続けた。

館内が変わった―落ち着いて行動する子どもたち―
 1年ほど経過したある日「子どもたらが落ち着いてきました」と職員が嬉しそうに聞かせてくれた。後日分かったのだが、中学生は自分たちで反省をして身を引いていた。「うるせいばばあがいるなあ」と言いつつ、その眼は嬉しそうだったと館長が聞かせてくれた。職員でなく地域の大人が「僕たち私たちを見ていてくれる」ということが子どもたちの安心感に繋がることが分かり嬉しかった。どのメンバーも自分の子どもを育てた時と同じように自然体で子どもたちとふれあっていることに気づいた。
 こうした実績に自信を得て、2006年4月からメンバーが住むB児童館とC児童館にも遊びに行くようになった。現在も各児童館に月1回は行き、手作業などをしながら子どもたちとのふれあいを楽しんでいる。
「あおばさんが来てくれると子どもたちがホッとするみたいですよ」
「あおばさんと一緒の時の子どもたちの表情は違っています」と児童館の職員の言。
 最近C児童館で目を引く張り紙を見つけた。「あおばさんと工作をします・・やさしいことばでいろいろおしえてくれます・・たくさんほめてくれるのでうれしいきもちになります・・」

小学校との関わり
 児童館で実施していた「お煎茶の体験」は子どもたちが優しい気持ちになったり、小さなハートが暖かくなったりなど気持ちが落ち着き友だちと仲良くできる良い方向になっている。道で会った元気のいいM子さんが立ち止まり「こんにちは」と見事な挨拶をした。私も見習わねばと思うほど立派だった。
 2005年度からスタートしたA小学校の「夏休みわくわくスクール」に、万華鏡、こま、フリスビー、ブンブン飛行機等をつくる講座を準備し参加している。ここに「お煎茶の体験」講座を加えているが、1回に50名もの参加者がいるなど好評で、校長先生はじめ諸先生や親の参加もあり、子どもたちが一生懸命サービスする役目をしたりなど微笑ましい。
 「お煎茶の体験」が授業やクラブ活動にまで発展している。お煎茶の体験授業に参加した3年生からの感想に「授業で椅子に腰かけている時も背筋を伸ばして手を膝にのせます」「家でおばあちゃんにお茶を入れてあげます」「お茶は苦かったけれど美味しかったです」などとあり、担任教師からは「児童の様子がよい方向になっています」等々が届いている。
 夏休みわくわくスクールは他の小学校からの依頼が年ごとに増え、今夏は6校を受け持つことになった。他に支援学級の児童と万華鏡作りをする約束もあり楽しみにしている。

「東日本大震災復興支援活動」―子どもたちとのマフラー編み―
【実施期間】
平成23年11月初旬~平成24年2月中旬
【実施場所】
・マフラーを編んだ場所=区立大森西児童館、大森中児童館、大森児童館
・マフラーの届け先=①宮城県東松島市役所復興政策部市民協働課、②宮城県東松島市赤井市民センター赤井地区自治協議会
【実施に向けてのこと】
 11月、12月は子どもたちと毛糸のマフラーを編む計画になっていた。これを一歩進めて被災地へ届けようというメンバーの熱い思いがあった。
 「大田区被災地支援ボランティア調整センター」へ行き、日常活動している様子を説明し、マフラーの見本を見て頂いた。『もし役立つのであれば子どもたちと一緒に進めたい』と申し出た。早速、大田区が支援している「宮城県東松島市役所市民協働課」へ繋げてくれたので、担当職員と直接話ができ、現地の様子を伺うことができた。「12月初め“サンタをさがせ”という親子150組参加のイベントを計画、このときに配りたい」という要望に応えることになり、各児童館職員の同意を得た。子どもたちにも被災地の悲しい思いをしているお友だちに暖かいマフラーと心を届けようと呼びかけた。子どもたちは一生懸命編み、メッセージをつけてくれた。メンバーは暇を見つけて編み、友人、知人の協力も得た。先方の希望を聴きながら3回に分けて発送、合計350本(このうち子どもが85本編んだ)を届けることができた。
マフラーを受け取った多くの子どもたちから喜びのメッセージが書かれたパネルをいただいたので、児童館の子どもたちも嬉しそうだった。ささやかな支援活動だったが、子どもたちとのふれあいの中で実施できたことを嬉しく思っている。

「愛」の力で生活学校運動をすすめていきたい
 私たちは、子どもたちからたくさんのエネルギーをもらっている。子どもの笑顔が活動の原動力になる。未来の平和を創りだす子どもたちの力になるように、お互いの知恵と力を結集してこの活動をさらに進めていきたい。
 「自分ができることを できるときに できるだけする」・・・は当校の合言葉で、これをベースにして活動を展開している。