「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

「つながれば、支えあえるし、分けあえる」小さなコミュニティから確実に人のつながりを作る活動
愛知県刈谷市 特定非営利活動法人我がまちの縁側
 「つながれば、支えあえるし、分けあえる」を実践し、小さなコミュニティから確実に人のつながりを作ることを根幹に、子どもから高齢者、障がいや病気をもっても、生まれた場所で活き活きと暮らしていけるまちにしたいとの想いで活動を行なっています。
 愛知県西三河地域にある刈谷市は、自動車関連企業の本社が多く、工業のまちとしての印象が強いのですが、昭和30年代は中心市街地の商店街アーケードに近隣市町村からも多くの人が集まり、道に人があふれるほど栄えていました。現在は他の地域同様にシャッター商店街となり、古くからある中心市街地は高齢化が進み、高齢者世帯が増えています。その一方で新たに住宅地となった場所へ転居してくる若い世代もあり、混在している地域となっています。活気があった当時の商店街に生まれ育ち、まちに育ててもらったという設立者はまちへの恩返しがしたいと平成19年に特定非営利活動法人我がまちの縁側を立ち上げ、民家を利用し駄菓子屋併設の小規模デイサービスを開設しました。
 デイサービスに併設する駄菓子屋では、就学前の子どもは買い物を通して計算する力が自然とつき、高学年の子どもが年少の子どもに計算をしてあげるなど兄弟でなくても付き合える場所であり、デイサービスを利用する高齢者と顔見知りになり話をするようになります。子どもは近所付き合いを学び、付き添ってくる保護者も懐かしく子どものころを思い出します。高齢者も駄菓子屋の店にくる子どもたちと付き合い、接客をして役目を担っています。また、地域住民も地元の祭りである万燈祭りに欠かせないお囃子の練習に参加する子どもを増やそうと、子ども会から夏休み期間中に使用できる金券を発行し、参加を促すなど駄菓子屋を活用しています。
 昔、縁側に近所の人が集ったように、積極的に地域へ開かれたデイサービスとして存在するとともに地域の資源として、住民同士ではできない人と人をつなぐ役割としての活動を積極的に行なっています。

★場を作りつながる
 誰もが集う場所を心地よいものとして感じてもらうため、一日おしゃべりカフェを企画し、以前町内にあった映画館が廃業する際に寄贈された、映画のビデオを使ってのミニシアターや創作作家によるまちの絵の作品展を開催し、障がいのあるなしに関係なく様々な世代の交流の場としました。この企画では高次脳機能障がいの人や、発達障がいの子どもたち、知的障がいの子どもと母や高齢者サロンに通う仲間、単に映画やまちの絵に興味があるといった一般の住民などが訪れ、市内に必要な場とは何かとの意識の掘り起しを行ないました。
 今年度は地元文化に着目し、文化の発信を身近な場所からなくさないように地元施設の活性化として地区内の映画館へ働きかけ、「黒部の太陽」の映画製作にかかわったスタッフを招いてトークイベントを映画上映にあわせて開催し、20名程の参加と映画館への集客を行なっています。

★まちに出てつながる
 地域のまちづくり協議会に参画し、「安心・安全・防災に強いまちづくり」をテーマに公民館、地区長、婦人会、子ども会、老人会とNPO、ボランティアによる触れ合い交流まつりを平成21年度より開催。まずは互いに顔見知りの関係になり、いざという時に助け合える関係づくりの第一歩となるように企画し、参加者も毎年増え、地区に住んでいる赤十字奉仕団の団員の方や地域の中学校もボランティア参加して300人以上の地域の交流の場になっています。このふれあい祭りでは、地区単位の個人のつながり強化をすることで、災害時などに支援の手が届かないまま放置されることなく、声を掛けあう仕組みを構築していきます。
 その他に障がいをもつ人や子ども連れの方や高齢者が気軽に外出できるように他のNPO団体と中心市街地活性化事業として平成23年に刈谷お出かけ便利帳作成委員会をつくり、400を超える施設のバリアフリーについて訪問調査を行ない、その結果を名古屋造形大学教授と学生の協力のもとWEBによるツールを作成して情報発信を開始し、バリアフリー体験会を開催して、実際の外出時に役立てるように啓発を行なっています。
 平成25年秋には地元の童話作家を研究するグループと刈谷出身の童話作家・森三郎ゆかりのマップを作成予定です。

★行政とつながる
 子どもたちが育っていく過程において自分で行動できる範囲に選択できる資源があること、高齢者となっても住み慣れたまちに住み続けられるよう、まちや暮らしを良くするために市民一人一人が他人事を自分事としてとらえることができるよう、刈谷市行政が進めてきた「わがまちのしゃべり場」「わがまちのつむぎ場」に企画段階から参加し、ボランティア活動センターと市民、行政が同じ目線でまちづくりを考えるワークショップを平成19年より継続しています。このワークショップから新たに活動グループがいくつも生まれ、連絡を取り合いながら人やまちにかかわる活動が進んでいます。
 住み慣れたまちに様々な資源があることを気づき、なくさないようにしていくには関心のある人を増やし、関わる人を増やしていくことが大切だと考えます。システムや仕組みをつくる前にひとりひとりの市民がまちへ愛着が持てるように、住民同士が関心をもって交流できるよう気軽に参加ができる機会を提供し、点と点のつながりを市内の至る所につくり、線にしていくような活動を行なっています。