「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 総務大臣賞

離島の子どもたちと語り合い! 今と向き合い夢を描く
沖縄県那覇市 学生団体学生+
 私たち学生団体学生プラスは、離島の中高生対象自立・自律支援、進学支援活動(離島語り愛活動)、目的意識形成活動(シマ塾)、ゆんたく大学活動を行っています。
 当団体の活動は、一人の離島出身者が、「15の春」という、高校のない離島から15歳の若さで島を巣立ち、親元を離れる経験を経て、それに伴う挫折や葛藤を同じ離島の後輩たちに味わせたくないという想いからはじまりました。
 15の春を迎える中学生が「将来の目的を持って島を旅立って欲しい」そして「島の誇りを抱え、将来生まれた島へ貢献・還元できる人材になって欲しい」、沖縄の高校のない離島23島すべてにネットワークをつくり、15の春は早く大人になるためのチャンスの旅立ちにしたいという思いで活動を行っています。
 当団体は学びや経験のないUターン・Oターンを解決するため、「学生プラスの活動に離島出身の学生を年間10名参画させる」というミッションを掲げています。
 離島出身の大学生、専門学生、高校生が当団体の活動を通し、共に目的を持ち、島や後輩、自身のために活動することで、「学校の中途退学」や「学び・経験のないUターン」を防ぎ、「貢献・還元できる人材モデルの仕組みを構築」を目指しています。
 活動の対象者である高校のない離島に住む中学生は、15歳という早い時期から島を離れ、精神的にも大人になる段階で、大きな環境の変化についていくことが難しく、挫折して島に帰ってしまう現状があります。
 私たちは、課題を解決しミッションを達成するために二つの活動を展開しています。
 一つ目は、中学生が離島から旅立つ前に「島を出ること」や「進学する意味」を深く生徒に考えてもらい、じりつ意識、進学意識の向上を目指す活動です。離島語り愛活動は、実際に大学生が離島へ行き企画を行っています。
 活動は主に「Retalk(リトーク)」、「地域Retalk」、「環境保全活動」の三つがあります。
 Retalkとは、離島の中学生と語り合いやワークショップを行うプログラムで、物ガタリ・ドリプロ・フィーリング・シェアリングの四つで構成されています。
 物ガタリとは、大学生が積極的に自己開示し、テーマを設定した上で、「モノ」を通して自分自身の経験や体験談、失敗談等から、伝えたいメッセージを込めて、「学んだこと」「成長できたこと」をプレゼンテーションするプログラムです。
 ドリプロ(ドリームプロセス)は、大学生と中高生が語り合いをします。「島からの進学の悩み」「今抱えている悩み」「将来やりたいこと」について一緒に考え、言語化、視覚化していくプログラムです。
 フィーリング・シェアリングは、上記のプログラムで学んだこと(インプットしたこと)を大学生とまとめ、参加者の前で発表(アウトプット)するプログラムです。
 地域Retalkは、地域住民や先生方、教育委員会の皆さんと、語り合いをします。島のことを詳しく聞いたり、Retalkで話した内容の共有を行っています。
 環境保全活動では、島への感謝の気持ちを込めて、中学生に呼びかけをし、一緒に清掃活動を行います。
 生徒たちを対象とした活動のみならず、地域を巻き込んで行う活動も行うことで、地域住民とのコミュニケーションを図り、信頼関係を構築していく上でも重要な取り組みと位置付け、実施しています。
 また、この離島語り愛活動は、「BORASUTA(ボランティアスタッフ)」と呼ばれる大学生や専門学生が中心となって企画を行います。「島のこどもたちのためにできること」を考え、熱い想いを持って活動に参画しています。
 企画を受けた中学生からは、「高校進学前に自分の道を考えることで、しっかり自分が何をしたいのか(目標・目的)をわかった上で高校に進むことができた」「親に感謝することができた」「自分になにができるのか考える機会を得ることができた」という声があがりました。
 二つ目の活動は、離島出身の高校生を対象に、目的・目標を持ち、達成に向けて学校生活や進路選択を充実してもらうことを目指し、継続的に支援するための、目的意識形成活動(シマ塾)です。
 高校進学後の生徒たちを支援し、離島出身の高校生・大学生・専門学生が輝くことのできる活動の場を作っており、みんなでスポーツ(みんスポ)、講演会、離島タイムス、情報誌の発行等を行っています。
 離島出身の高校生・大学生・専門学生を対象に開催した講演会では、「島から進学してきたことをポジティブに捉え、夢を実現するために意欲的になる」ことを目的に、舟浮島出身の池田卓さんを招待して講演会を行いました。約50名以上が参加し、「学生プラスに入って自分を変えたい」「自分の島に恩返しがしたい」と感じた離島出身の大学生が、この取り組みをキッカケに当団体へ入会し、活動を共にする参画者を増やすことができました。
 離島タイムスでは、高校のない23島27校に、島から出た先輩たちの学生生活や当団体の活動紹介、高校のイベントなどを取り上げ、各中学校の教員と連携を図り、3か月に1回の頻度で学内に掲示しています。
 情報誌は、「進学してくる際に役立つことのできる情報を提供すること」を目的に、高校のない離島の中学生約600名全員に配布しております。島から出て来た高校生や大学生の学校生活や私生活、いくつかの質問、離島出身の社会人の話などの情報を掲載しています。離島の中学生は、「先輩の声を見ることができ、自分自身につなげることができた。」「不安や心配していることを経験している人からの声を実際に目で見て、将来を見つめ直すことができた」という感想がありました。
 離島出身の高校生は不安などを一人で抱え込み、「誰に相談したらいいのかわからない」といった悩みがあり、明確な目標や目的を持つことなく学校に通う高校生たち。そんな状況下で、様々な経験や学びをしないままUターンを選択してしまう生徒も少なくありません。
 当団体は、離島出身の高校生に対して「継続支援」だけではなく、彼らのために自主的に活動できる場を提供し、大学生と一緒に企画作りや離島タイムスの発行等を行うことで、「目的意識」を高める活動も行っています。企画や活動へ参画し大学生と交流を深めていくことで、高校生の悩みを聞くことができるなど、高校生自身も負担が減り、Uターンを防ぐ一つの手になります。
 今年度開催したビーチパーティーでは、14名の離島出身の高校生(伊是名島・伊江島・与那国島・石垣島・南大東島)が参加しました。高校生の現状を把握し、相談に関しては、大学生ができる限りのアドバイスをしたりすることができました。また、高校生からは「自分の出身以外の離島の友だちができ、交友関係を広げることができた」という感想があげられていました。また、「悩みや不安を聞いてくれて良かった」「大学生と話せて良かった」「こういった企画をやったことないから大学生と一緒にやってみたい」という感想もありました。企画に参加した大学生からも、「離島の現状を知ることができた」「企画に参加して自分にできることがしたいと感じた」など、活動の必要性や同じ沖縄として、離島に貢献する意識が高まりました。
 最後に、上記の二つの活動に影響を受けた2人の学生のエピソードがあります。
 一人目は、数年前、実際に当団体の企画を受けた生徒で「支援する立場(参画者)」になった離島出身の大学生です。その石垣島出身の女子大生は、大学に入学した当時は自分の過ごした島に関心はなかったが、当団体の活動を通して離島の現状を知ることができ、「当事者として貢献したい」気持ち、「離島の問題を解決したい」と、自分自身の必要性、当事者意識が芽生えたといいます。
 もう一人の、伊是名島出身の男子学生は自分の島が大好きで、恩返しをしたいと考えていた学生です。本島で開催された企画に参加し、「生まれ島のために」と活動に参画することを決意し入会。日々の活動に全力で取り組んでいます。彼は、学生プラスのメンバーのみならず、離島で生まれ育った子どもたちの離島の課題について、学生を中心に社会全体が真剣に取り組んでいけるよう、これから社会に出ていく後輩のために、誰かが動いていかないと、15の春の問題は改善しない問題を離島出身の当事者だからこそ、分かり合えることがあるので、サポートしていきたいといいます。
 これからも彼らのような、離島出身者たちが自ら島に貢献・還元したいという若者を、一人でも多く創出していけるよう、離島の中高生や大学生、専門学生に対し、語り合いやワークショップ、参画できる活動の場を提供し、じりつ(自立・自律)意識・目的意識の向上、主体性や自発性を育むことで、社会へ出て「島に貢献・還元できるモデルの仕組み」の構築を目指して活動を行っていきます。