「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

子どもから大人まで笑顔あふれるサロン運営
神奈川県横浜市戸塚区 特定非営利活動法人いこいの家 夢みん
背景〜自ら生み出す力
 ドリームハイツは築42年を迎える大規模集合住宅です。横浜市の中でも、急速に高齢化が進み、2015年には住民の50%が65歳以上になると予測されています。
 入居当時は、自然環境の良さに加え、広さの割に分譲価格が安かったこともあり、多くの子育て世代が入居しました。反面、駅から遠い、バス道路の渋滞、教育施設が少ないなど日々の生活面では多くの不便さを抱えていました。
 そんな中、「足りないものは自分たちの手で!」と住民有志が集まり自主保育がスタート。「何もない所から自分たちに今必要なものを、自分たちの力で生み出し育む力」「何度も話し合いを積み重ね、一つ一つ実現していく力」を、若い親たちが自然と身につけていくきっかけとなった活動でした。その後もOBの親たちが中心となり、「食事サービス」や「家事支援」など、親の介護や自分たちの老後へ向けて、次々と課題解決のための活動が生まれていきました。

活動開始〜高齢化へ向けて
 「高齢になっても自分の好きなことや、やりたいことを続けながら、いつまでも自分らしく暮らしたい」…19年前、ニーズ調査や場所探しなど1年間の準備期間を経て、多くの賛同者を得ながら、「夢をかなえる場所・ムーミン谷のような温かい居場所」をめざして『いこいの家夢みん』がオープンしました。さらに1年後には、拠点を買い取るなど、地域内外の多くの方から支援をいただき、その後も、事あるごとに周囲の知恵と熱意と労力を結集し、一つずつ目の前の問題を解決してきました。

法人化と介護予防
 購入した団地の1戸を改装し、「高齢者のための交流サロン」として活動開始しましたが、2000年にNPO法人となり、横浜市の「通所型介護予防事業」を受託したのをきっかけに「介護予防」に力を入れるようになりました。委託を受けた6年間の活動の中で、「早期からの介護予防」の必要性を実感し、アンケートやヒアリングを基に、地域のニーズに合わせ様々なプログラムを現在も継続しています。その結果、プログラム数の増加と共に、年間延べ入室者数が7千人を超えるようになりました。(2013年実績:開室日301日・入室者7422人・1日平均24.7人)

変化の年〜団地から空き店舗へ
 団地の1戸を拠点とした活動は、近隣住民の理解が必要不可欠です。利用者数の増加に伴い、2014年4月、近隣への住環境の配慮から、近くの空き店舗へ活動場所を移転することになりました。バス通りに面した新拠点は、通りからも中の様子が見えやすく、手作りの窓飾りの看板と、赤いA型看板が通りがかりの人の目を引き、気軽に立ち寄れる、「コミュニティカフェ夢みん」として再スタートを切りました。長年続いた「ランチサービス」廃止など、一部プログラムの変更はありましたが、狭いながらも従来の「アットホーム」な雰囲気を大切にしながら、新たな利用者を迎えています。何よりも良かったことは「高齢者限定」が外れ、年齢に関係なく子どもから若い親も含め、多世代が夢みんを利用できるようになったことです。

活動内容〜住民誰もが利用できる集いの場
 新拠点では、従来の介護予防プログラムに加え、子どもの学習支援、住民の自主活動場所の提供、気軽におしゃべりできる場(おしゃべりカフェ)等、新企画も増えました。利用時間は平日午前10時から午後4時まで。週1回から月1回のものまで、企画・アイデアを持ち寄り様々な曜日別プログラムを展開しています。
・趣味、楽しみの場として…健康麻雀・囲碁・手芸・コーラス
・学びの場として…パソコン・トーンチャイム演奏・カルチャーサロン
・交流の場として…おしゃべりカフェ・歌声喫茶
・健康促進の場として…健康体操・看護師による健康チェック・相談
 以上は、毎月定例で月別プログラムとして近隣に全戸配布。住民自らがやりたいこと、関心のあることを見つけ参加、70代、80代になっても新しいことにチャレンジするなど意欲的な姿が多数みられます。顔見知りがいる身近な地域で、安い料金で気軽に参加できることが利用者増加につながり、その結果、自然な形での見守り、孤立防止へと役立っています。プログラムの合間や終了後のコーヒータイムも楽しみの一つで、おしゃべりに花が咲き、どの曜日も笑顔があふれる交流の場となっています。
 また、隔月実施で4年目を迎えた「専門家を交えた介護者相談会」の他、この4月から子どもへの支援としてボランティアによる「こども英語教室」も始まりました。今後は休日やプログラム時間外の自主的な集いへの場所貸しなど、多世代にわたる人とのつながりや、居場所として、さらに多くの住民に有効活用されることを目指しています。

運営〜地域の人と共に
 今年度、運営委員7名、ボランティア約50名で日々の活動を担っています。講師3人、看護師1人も近隣地域の住民。その他カルチャーサロンの話し手、支える会など地域内外の多くの方の協力の下で運営しています。スタッフ、ボランティアはいずれも60代から70代後半が中心。担い手側も時には利用者として参加するなど、自分にできることを選びながら、柔軟な体制で活動を継続することが、自らの介護予防にもなっています。
 夢みんの主体は運営委員会です。発足以来、多くの人が横並びで運営に関わり、合意形成のための話し合いを大切にしてきました。結論を急がず、あえて面倒な話し合いを重ねることで、意見が違っても合意点を見つけ出す、一人一人が自分のこととして考え意見を言う、主体的に役割を持つことで、大小の問題点を乗り越えてきました。

課題
 この春で発足19年目を迎え、会も構成メンバーも熟年期に入っています。この間、周囲の環境、個人が置かれた状況も変化し、この先3年後・5年後に向けて担い手の世代交代が長年懸念されていますが、報酬をしっかり払えないことがネックで、若い人の働きの場とならないのが現状です。今後、地域の中で会の役割がどう変わっていくか、それに担い手が対応できるか(現状維持はどこまで続くか、それでいいか)、どう変化させるか(少数で事業化するのが良いか、多くの人で、できることを結び合わせながらゆったり進むのか)等、高齢化による社会の変化に対応できる力をどうつけていくかが大きな課題となっています。地域にある諸団体のネットワークを活かして、地域全体での解決力が問われています。