「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

高齢者の見守り・居場所づくり―おしゃれ茶会の開催―
石川県白山市 美川生活学校
活動のはじまり
 美川生活学校は、昭和43年に「かしこい消費者となるために」を目標に運動が始まったと聞いております。現在は27名のメンバーで活動しています。
 平成17年に白山市となりましたが、合併前の美川町の人口は約1万3千人と石川県で2番目に小さな町で、大きな病院、福祉施設もありませんでした。
 昭和56年頃から今日の長寿社会が来るということで、医療、年金について盛んに勉強していました。高齢化社会だったはずが、高齢社会となり、どんどん高齢化が進んできました。その頃のわが町の高齢化率は12.6%、昭和62年には14%、平成12年には18.6%となり、平均寿命も延び、長生きする時代になって、避けて通ることのできない老後をどう生き抜くか。定例会ごとに話し合いました。
 平成12年から介護保険が導入されるのに伴い、平成11年7月に「介護保険について」の意識実態調査を実施しました。(30歳以上600枚配布、585枚回収)これをきっかけに「おしゃれ茶会」開催に向けての活動が始まりました。

私たちにできることは何か
 一日でも長く心身ともに健康でいたい。そのためにはどうしたら良いのか。お手伝いすることはないか、考えました。
 平成12年、隣町のグループホーム、翌年、富山県にある銭湯の跡地に市と民間とが連携してできた「元気塾」を見学しました。その他に新しく特養が設立されると見学、研修を重ねました。
 並行して、平成14年8月に美川住民を対象に「高齢社会における実態調査」のアンケートを取りました。(40歳以上200枚配布・回収)
 集計すると、一日中テレビを見て過ごしている人が多かったことに驚きました。町の老人福祉センターが遠くて行けない人。行きたくない人、この結果を行政に報告し、町長に私たちの思いを話しました。また、老人会との対話集会も行いました。
 一人暮らしで老人会に参加してない人への対応、介護保険から外れた人への対応、生活学校として何かできることはないかといろいろ考え始めました。
 その結果、「急速に進行する長寿社会の中、慣れ親しんだ近くの公民館、集会場を利用して、自分の家の茶の間にいるような感じで、お茶を飲んだり、お話をしたり、ゲームをして遊んだりと楽な感じで過ごしてもらう。このことが介護予防につながる」との思いを強くしました。

「おしゃれ茶会」の開催
 その頃、「私たちの生活学校(平成15年8月)」(あしたの日本を創る協会発行)に紹介された愛知県幸田町生活学校「生き生きサロン」の記事を読み、連絡をとりました。町の協力もあり、交流会が実現しました。
 和やかな雰囲気で笑い声が絶えない。あくまで参加された高齢者が主役で生き生きしている。また、車いす生活の人が立って「ボール投げ」をしている姿に感動しました。私たちと同じ思いで活動している幸田町のメンバーの姿や頑張りに背中を押され、足を一歩前に出すことができました。
 早速、みんなでネーミングを考えました。「いつもより気持ちも身だしなみもちょっとおしゃれをして来てほしい」という思いを込め「おしゃれ茶会」と名付けました。
 平成15年9月に第1回目の「おしゃれ茶会」をメンバーの多い手取町で開催しました。交流会の1か月後のことでした。
 幸田町生活学校の「生き生きサロン」は午前中のみでしたが、家へ帰っての食事は大変かと思い、昼食を食べてもらうことにしました。メンバーの中に学校給食の仕事をしていた人が数人いたので、その人たちを中心にスムーズに事が運びました。この手作りの昼食弁当は好評で今も続けています。会費は現在400円、メンバーからは200円集めています。

「おしゃれ茶会」の道のり
 困ったこともありました。公民館のトイレが和式のため、膝の悪い人の参加が大変だったのですが、近くのメンバー宅のトイレを利用させてもらい対応しました。その様子を町内会に話したところ、トイレの1か所が洋式に変わりました。これも大きな成果だと思っています。
 また、「生き生きサロン」をスタートさせた老人会からいろいろ言われました。しかし、立場も趣旨も少し違いがあることや、来る人も1回より2回、2回よりも3回と多い方が楽しいだろうと思い押し進めました。
 手取町の次に開催する町がなかなか決まらず、我々の思いから説明しなければならず大変でした。生活学校のメンバーが声かけしながらチラシを配り、参加者をお誘いしました。その頃は敬老会等の名簿もあり、メンバーが力を合わせることで開催できました。
 その後、個人情報保護法の施行により名簿がなくなり最初は困りました。が、逆にそれが幸いし、民生児童委員、町内会、老人会の方々の協力を得ることができ、私たちの目標である「地域ぐるみの活動」へと近づいてきたように思われます。
 回を重ねるごとに声をかけてくださる町も増え、メンバーも慣れ、自分たちも楽しめるくらいの余裕が出てきました。終わった後の反省会ではメンバーの顔がとっても生き生きしていて感想や意見も多くにぎやかです。この達成感が次への原動力になっていると実感しています。また、参加された人が新聞に感想を投稿してくれたり、楽しみに待ってくださる人がいることも大きな励みになっています。
 メンバーで話し合い、知恵を出しながら行った「おしゃれ茶会」は、今年の予定を入れますと50回となります。近年は公民館での開催は年に3~4回です。それ以外に美川老人センター、地区社協の依頼で行う出前おしゃれ茶会も年3~4回あります。
 こうして長く続けられたのは多才なメンバーの力も大きいと思います。定年を迎え、今まで培ってきたものを生かし、みんなで協力し美川生活学校を支えて、おしゃれ茶会を盛り上げています。
 最初の頃開催した町ではボランティアの方がサロンを立ち上げました。また、町内会行事として係を決め実施している町も出てきました。
 最近では「3時間のうちの1時間だけお願いします」と時間を決めての依頼もあります。少しずつではありますが、私たちの手から離れ、自立した活動をする地域が出てきていることは嬉しいことです。

「おしゃれ茶会」のプログラム例
①1・2・3体操…準備体操
②チームでゲーム…仲間意識を持つ
③ビンゴゲーム…既成のビンゴ用紙を使わず、野菜、魚、果物等の名前を紙に書いてもらいます。
④昼食…メンバーの手作りです。久しぶりに会った友だちと笑顔でにぎやかに話の華が咲きます。
⑤午後の最初はメンバーからの出し物。歌あり踊りあり。参加者の飛び入りもあります。
⑥ジャンケンゲーム…1日の運試しのジャンケンで締めです。皆さん真剣です。勝ったらとても嬉しそうです。
⑦アンケートへの記入

参加者アンケートより
・「顔はくしゃくしゃやけど、気持ちは18歳になれた、ありがとう」と帰って行かれたおばあちゃん…第1回の時だったので本当に嬉しい言葉でした。
・「平生はボケが入っている状態なのですが、今日は輪投げをしたり、踊りを見て手をたたいたり、いつもと違い、治ったのではと思う瞬間があった。じいちゃんを連れてくるのに迷ったが、思い切って参加してよかった」と嬉しそうに話していたおばあちゃん…介護予防につながると実感しました。
・「楽しみにしていたよ」と杖をつきながら参加したおばあちゃんの笑顔がとてもよかったです…久々に出会えたとびっきりの笑顔に元気をもらいました。
・「楽しかった。またお願いします」という感想は毎回です。

「おしゃれ茶会」10年を経て
 生活学校の理念であります、「事前活動」「対話集会」「事後処理活動」に基づき、地道な活動を継続してきた結果が今日につながっていると思います。振り返ってみますと、5年間は模索しながらの活動、それから実践して10年が過ぎようとしています。
 今後の課題として、①男性の参加者を増やす工夫、②各町々の幅広い協力を得ることがあります。これらをクリアするための「○○ぐるみ活動」こそ、長寿社会を生き抜く大きな力となると確信し継続しています。