「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

死ぬまで元気で地域で暮らす!(シャングリラ計画)
北海道旭川市 西神楽エコ農村共生対流推進協議会
 北海道旭川市南西部に位置する西神楽地域は、旭川空港近郊の田園地帯である。全国的にも有名な美瑛町に隣接し、近年人気の旭山動物園に25分、富良野市なども車で1時間圏内にあり、美しい景観や自然、観光地に恵まれている。旭川市の中心市街地までは車で20分程度で、中心市街地には、医療・福祉施設やデパート等商業施設など、生活に便利な施設が集中しており、田園環境と都市的利便環境との両方を享受できる地域である。
 近年、少子高齢化が急速に進み、西神楽の四つの地区(瑞穂・中央・聖和・千代ヶ丘)の人口は平成100年には約4500人であったが平成25年には約3500人と15年間で約1000人も減少した。人口減少は65歳以下の流出によるもので、西神楽地域の高齢化率は43.3%と旭川市全体の28.7%に比べ著しく高い。冬期集住の試行を実施する聖和地区では、世帯数197世帯で65歳以上の高齢者が217名に上る。この中で居住先の除雪など積雪寒冷期の労働負担や、病院への通院や買い物などに必要な足の確保の困難さなどが要因で、農村からの人口流出が生じ、地域の活力低下が急速に進行している。
 人口高齢化に伴う諸課題や、農村に滞在して農作業を体験し安全な食を確保したいなど都市住民の意向に対応すべく、都市と農村の連携を見据えた冬期集住や夏期滞在のための実態調査、地域住民の意向調査、当地域の土地利用状況を考慮し、新たな居住形態を踏まえた農村整備のあり方、農村住民の冬期集住と都市住民の二地域居住を組み合わせた「新たな地域共同体」のあり方を提案した。
 西神楽地域の四つの地区の一つである聖和地区での冬期集住は、一人暮らしの高齢者に対して冬期生活を支援するため、高齢者が4人1組となって、改修した空き家で生活し、食事の宅配サービスを受けるという取り組みである。冬期集住の取り組みでは、冬期集住の試行に参加した全18名の方々から、「除雪から解放された」、「食事の提供や共同生活により安心感がある」、「一人暮らしより便利」、「離れて住んでいる子どもたちも安心してくれる」などという感想が多く寄せられ、ほぼ全員が満足という結果となり、この取り組みが当地域の高齢者に大きな安心感をもたらした。また、当初想定していなかったマスコミ各社の取材により、本事業内容が短期間にも関わらず地域に周知され、取り組みが浸透している。これにより、地域内企業からの集住施設の除雪支援や、集住施設の近隣住民からの様々な支援(副食の提供や施設訪問支援)を受けるなど、互助の高まりがあったことは大きな成果であった。さらに、本州在住者を対象とする二地域居住にも取り組んでいる。具体的には、本州在住者が6月から10月くらいの期間にかけて西神楽地域の空き家を借りて家族で居住し、菜園での作物づくりや周辺農家への援農などを通じて農に触れ合うことにより、うるおいのある暮らしを体感する取り組みである。西神楽エコ農村共生対流推進協議会は、これにより得た家賃を冬期集住の経費に活用しており、年間通じて空き家を活用するシステムを構築している。
 瑞穂・中央・聖和・千代ヶ丘各地区の市民委員会・老人会を中心とした住民組織と、地域NPOや各種地域団体と地元企業のCSR活動にて参加協力体制が構築されている。また、旭川市や北海道開発局の河川・道路・農業部門との連携も様々な場面で実施され多くの成果を残してきた。
 小規模高齢農家や大規模農家に向けて、農業支援員制度導入協議会を立ち上げ、都市の若者等が有休時間を活用した農業支援を行うための地域ライセンス取得の研修を実施し、様々な場面で援農支援を試行してきた。また、新たな直売所の創設や販路拡大・朝市・夕市など小規模農家支援に向けた取り組みも各種取り組んでいる。施設農業者向けには、LED照明導入により生産性の向上で製品出荷量の向上を図り、今後地域ソーラー発電による農業エネルギー自給に向けた取り組みも着手したところである。
 生活環境整備では、高齢者の冬期集住を進めて大きな成果を上げている。また、通院送迎サービスや買い物支援サービスも利用者が増加してきている。高齢世帯の課題でもある冬期間の除雪も、都市住民の夏場のパークゴルフ場利用者に利用券を提供することで多くの方々の除雪ボランティアが登録され都市と農村の交流が進んでいる。さらに地域の空き家情報を整備する中で、旭川市とも連携し移住者の体験入居や空き家情報提供を現地案内し、新規就農プログラムで施設農業の促進に向けた様々な情報提供を行っている。
 瑞穂地域のさと川パークゴルフ場は、地域自らが造成し維持管理・運営を行っている。シーズン4万人以上が来場し、売り上げは1800万円近くになり、65歳以上の高齢者14名が雇用され全国でも初めての試みで11年目を迎えた。また、聖和地区で始まった、冬期集住・二地域居住プロジェクトでは、独居高齢者が安心して暮らし続けられる仕組みを作り事業化に向けて試行を継続し6年目を迎える。さらに、西神楽発の「ウインターサーカス」は、富良野・美瑛・トマムの広域で、NEXCO東日本を始め多くの団体や企業・デザイナーが参画し10年目を迎える。この様に西神楽発祥の様々な活動は、地域の主体的な取り組みが特徴で地域が一体となって運営した結果、地域の連帯感や互助の精神が醸成され地域の誇りを取り戻し、活性化に大きく寄与したと考える。