「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

福島ひまわり里親プロジェクト
福島県福島市 特定非営利活動法人チームふくしま
 福島ひまわり里親プロジェクトとは、全国と福島をひまわりで結ぶ活動です。2011年5月にスタートし今年で5年目を迎えます。日本全国で累計10万人以上が参加、参加教育団体数は累計1500校を超えました。
 全国でひまわりの種を購入し、育て、花を咲かせていただき、採れた種を福島に送り返して頂きます。この全国のひまわりを福島県内に配布、花を咲かせ、福島で採れた種を搾油、最終的にはバスのエネルギーの一部として活用します。今年は、福島県内に2万5千袋以上配布。市有地、小中高、大学、教育委員会などの教育機関、観光地で、全国の種が育てられています。

目的:「for you, for japan」
■三つの目標

・雇用対策
 東日本大震災後、福島県二本松市の福祉作業所和(なごみ)様では仕事が激減。そこで、ひまわりの種の袋詰の作業をお願いし、その種を全国の皆さんにご購入頂くことで、応援させて頂きました。
 また、全国のひまわりを福島で咲かせた後に採れた種は、郡山市の福祉作業所にんじん舎で搾油、二本松市福祉作業所菊の里にて油からバイオエネルギーにする仕事をご依頼しています。ひまわりをきっかけに被災地での障がい者の自立を支援していきます。

・観光対策
 福島県内の観光は、東日本大震災に比べて84・5%の水準まで回復しています(平成25年 福島県商工労働部調査)。しかし、教育旅行は依然として風評被害を受け、最盛期であった平成19年度から比べると、4割強の水準となっています。
 誘客の手段として、ひまわりを活用。福島県内の観光地などに全国からの想いのつまったひまわりを咲かせ、観光名所を作ると共に、ひまわり見学ツアーや交流イベントを開催。ひまわりをきっかけに福島に来ていただくことで、観光振興を図ります。

・教育対策
 継続して里親さんを募集し、日本全国で福島の復興を願うひまわりが咲き誇ることにより、風化対策を図りながら、教育現場での震災教育・防災教育の導入としてひまわりが使われています。ひまわりの種を通じて全国と福島の学校同士の交流や、学校と地域、親子の交流が生まれています。
 中学校公民教科書副読本、福島県教育委員会発行の道徳教育教材にも、このプロジェクトをきっかけとした全国と福島の子どもたちの交流が描かれています。
【掲載書籍(教育関係)】
・中学校公民教科書副読本 「見る、解く、納得!公民資料」(東京法令出版)
・中学校公民教科書副読本 「ビジュアル公民2014」「ビジュアル公民2015」(東京法令出版)
・ふくしま道徳教育資料集 第V集「郷土愛・ふくしまの未来へ」(福島県教育委員会)
・授業力&学級経営力2015年10月号(明治図書教育書『授業力&学級経営力』編集部)

<活動の工夫>
■遠隔地でも支援可能

 種を購入し、育てることが被災地の雇用・観光対策に繋がります。家の庭でも参加することができるため、被災地に赴くことが難しい主婦、高齢者、障がい者、子どもなど老若男女問わず復興支援を継続的に行うことができます。

■ひまわりをきっかけとした新しいネットワークが構築
 産官学、ボランティア団体、海外、全国のひまわりのネットワーク、町内会と社会福祉協議会、福島県内の旅館組合、まちづくり団体、学校、福島交通、福祉施設などのネットワークが生まれています。
 京都宇治市の企業の事例では、ひまわりの種取りを地域の福祉作業施設に依頼。ひまわりをきっかけに交流と仕事が生まれました

■多彩な分野との連携が可能
 プロジェクトに参加する福井県鯖江市の子どもたちが福島への想いを歌った「ひまわり」は、福島、全国だけでなくニューヨークでも披露。震災の風化対策を狙い、活動が広がっています。
 また、平成27年3月11日には、福島県学校法人石川高等学校の美術部の生徒が震災を後世に伝えたいとプロジェクトの漫画を出版。この漫画を福島県立福島商業高等学校の生徒が声を吹き込み、コミックムービーを制作しています。
 種つき絵本や、福島交通飯坂線と連携した全国から福島に送られたメッセージを展示し走る「ひまわり復興列車」、株式会社柏屋のパティシエがプロジェクトを題材にしたお菓子「ルーロ・ソレイユ」の販売、名古屋モード学園のひまわりをモチーフにしたウェア、絵本のスマートフォン向けアプリケーションなど多彩な分野との連携を行っています。

<活動展開>
1.ひまわり結婚式

 全国のひまわりの種を活用した結婚式を開催。2013年1組、2014年2組、2015年5組(予定)が福島県大越町牧野地区のひまわり畑で結婚式を開催。式場に飾るひまわりも、結婚する夫妻の手で種まき、苗植えを行うことで、地域の人々との交流も生まれています。
 2014年の結婚式には、150名以上が参加。両家の親族だけでなく大越町牧野地区の住民や、福島の未来を担う福島大学の学生2名、郡山女子大学の学生2名もボランティアで参加。福島県外からは、「福島ひまわり里親プロジェクト」のひまわりを育てた長野県の飯綱町立飯綱中学校の生徒14名、教師2名、筑紫女学園大学の学生2名、千葉県のガールスカウト北総地区4名が大越町を訪れ、福島県と全国との交流のきっかけとなりました。
 この取り組みを参考に、広島県海田町や岡山県でもひまわり結婚式が開催され、地域おこし事業としての広がりを見せています。

2.ひまわり甲子園
 プロジェクトのひまわりを通じて生まれた物語を発表する「ひまわり甲子園」の地方大会を今年度は5地区で開催。それぞれの地域でプロジェクトに取り組む学校、企業、個人などが集まることで、地域の繋がりが深まるとともに、東日本大震災の風化対策、防災・道徳教育につながる場となります。また、ひまわりをきっかけに同じ想いの人々が繋がることで、有事の際の防災ネットワークの構築にも繋がります。
 2016年2月21日には、各地方大会の代表者、福島県内の代表者が福島市に集い全国大会となる「ひまわり甲子園2016」を開催予定。自分たちの育てたひまわりが福島に咲いたことを、受け取った福島からの感謝と共に全国の方々にお知らせし、全国と福島のきずなを深めていきます。また、この甲子園をきっかけに福島に訪れる観光対策にも繋げていきます。

3.ひまわり絵本
 「絆」という言葉が幼稚園などの児童には伝わりづらいというプロジェクト参加者の声を受けて作成した絵本。物語を通して、他者を思いやる気持ちや絆を伝えています。NPO法人和の利用者の仕事として絵本に種をつけて、種つき絵本として販売。紙芝居や、アプリケーションなど多方面に展開し、プロジェクトのマスコットキャラクターにもなっています。
 また、絵本の主人公「たびくま」宛の封筒がついており、絵本についてくる種を育てて、たびくまに種を送ると、たびくまからお礼の手紙が返ってくるなど、子どもたちが楽しみながら被災地支援活動に取り組める仕掛け作りを行っています。

4.広島土砂災害支援
 プロジェクトのネットワークを活用し、2014年8月20日の豪雨による広島市土砂災害を支援する義援金を募集。集まった義援金は被災した中山児童館と実際に医療現場に入っていたプロジェクト参加者に寄付し活用して頂きました。
 2015年には、広島県修道大学の学生が、この土砂災害を忘れない風化対策として、同地域でプロジェクトのひまわりを栽培。東日本大震災の風化対策だけでなく、ひまわりを災害から立ち上がる希望の花、復興のシンボルとして活用して頂いています。

5.プロジェクト事例報告集の送付
 プロジェクトに取り組む学校や、取り組みたいがどうしたらいいのか分からない学校に向けて、小中高特別支援の全12校のプロジェクト活用事例を掲載した教育事例集を配布。学校現場でもより活用しやすい仕組みづくりをしていきます。
 また、福島県内、全国の取り組みを参加者に向けて広報する「ひまわり新聞」を発行。福島の現状も伝えることで風化対策に繋げています。

6.未来に伝える活動〜子ども代表理事〜
 福島県いわき市在住の小学5年生が理事に就任。彼女は、福島富岡町出身。現在も避難区域として住むことの出来ない町で、震災後、彼女は家族とともに茨城県鉾田市に避難しました。父は仕事のため、単身赴任をし、震災によって家族が離れ離れに暮らす経験をします。その後、いわき市湯本に引っ越し、家族全員で再び暮らすことができるようになりました。故郷に帰れない想いや、家族と離れて暮らした経験から、日常を過ごしていると忘れがちな「当たり前」のことがありがたいことであると気付き、そのことや福島の今を日本中に伝えたいという想いを受けて、理事就任が実現しました。
 全国的に東日本大震災の風化が進んでおり、特に小学校では、震災時の記憶が少ない子どもたちも増えています。また、今後は震災の経験を持たない子どもたちが増えていきます。福島の子どもが福島の現状や震災での気づきを自分の言葉で講話することで、同世代の子どもたちにより伝わりやすいことが期待されます。また、大人に対しても、それまでの視点以外から講話ができることで、震災の風化対策に繋げていきます。

<今後の展望>
・広島の折鶴のように福島のひまわりの種をそれぞれの学校・地域で育て、福島に持ってくるという物語を作ることで、福島への教育旅行のきっかけを創出します。
・ひまわりを通して福祉作業所への社会的な関心をより高め、福島県内だけでなく、全国の福祉作業所の新たな仕事のきっかけを創出します。
・2020年の東京オリンピックの会場や聖火リレーの開催場所でもひまわり栽培を進めていきます。復興のシンボルとして咲き誇るひまわり畑の中で聖火リレーを行い、全世界に「他者を思いやる心」を目に見える形で残し、「震災があったからこそ良くなった福島、日本」を国際的にピーアールしていきます。