「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

京都発♡ママ達による福島こども応援プロジェクト
京都府向日市 ミンナソラノシタ
 京都発♡ママ達による福島こども応援プロジェクト「ミンナソラノシタ」の歴史。
 2012年春 京都府幼稚園連盟の研修会が福島であり、まこと幼稚園の園長が参加されました。そこで現地の先生方が放射能汚染で外遊びが制限される中、除染や外遊びの変わりに室内でどのように過ごすかを奮闘されている話を聴かれました。
 「京都の私たちに何かできることはありませんか?」の問いに郡山市私立幼稚園協会の安斉園長先生が「あの日から福島の幼稚園の先生方が大変な思いをしているので夏休みに京都に呼んで頂きリフレッシュさせてあげて欲しい」とおっしゃいました。
 これを受け、まこと幼稚園の園長が保護者に呼び掛け福島の先生を招くための資金集め(バザーや募金活動)を1年かけて行い2013年夏6名の福島の幼稚園の先生をお招きして交流を持つことができました。
 この取り組みに参加して、まずは今回の震災がどのようなものだったのか? 原発事故がどのようなものだったのか? 原子力発電所や放射能とはどんなものなのか? 知ることから始めました。
 そこで気付いたことは(単発的な支援も大事だけど持続的に応援し続ける仕組み作りが必要)(原発事故は想像以上に大変な事故だったということ、現在も収束しておらず福島の方々だけではなく皆で考えないといけないこと)(日本には50基を超える原子力発電所があるということ)
 小さな子を持つ母として、何かできないか? と胸を痛めました。
 2012年夏のある日お茶碗を洗っていると耳元で「手提げカバン」と聴こえました。入園入学で必要な物が支援に回る仕組みを創ることができれば毎年安定した支援金が集まる。またそのグッズを使用するこれからの日本を担う子どもたちにも社会の諸問題に関心を寄せるきっかけになるのではないか!
 多くの無関心層を取り込むために考えたことは、知名度がある方々とのコラボ。多くの著名な方々へのお手紙作戦。
 そこで私たちに共感してくださったのが黒田征太郎さん。趣旨に賛同してくださり15枚のイラストを提供してくださいました。この15枚のイラストを2013年夏、京都で投票会を行い皆で人気投票をしました。投票会で1位に選ばれたのが現在のオリジナルバッグのイラストとなります。
 2013年11月に福島へ行き現地の幼稚園ママとの交流会を行いました。
 応援グッズの売上をどのように使用するか? 本当に喜んでもらえるかを知るために福島へ行ってきました。「口に入るものすべて心配だから水も購入している」「県外産の食料を買う」「幼稚園以外では外遊びさせない」「放射能に対する温度差で友だちもいなくなったり避難していった」等々福島で暮らす母の心情を聴かせて頂きました。
 多くのママから「砂を触らせたい」「お団子を作らせたい」「裸足で土に触れさせたい」という声が・・・
 しかし、外に砂を置いておくと、放射線量が高くなるので室内で遊べる砂を。また、福島は寒いので外の砂場では遊べる期間が短い。だったら室内で遊べるものを。というニーズにこたえて、応援グッズの売上で砂を贈ることを決めました。
 応援グッズの制作は、心身障がい者作業所リンデンさんと京都の老舗、一澤信三郎帆布でお願いできることになりママ達で案を出しあい、応援グッズの企画制作に入りました。
 この様子を関西テレビさんが密着してくださり多くの新聞社にも取り上げて頂きました。
 やっとの思いで出来上がったグッズには、寄付だけではなく側に置くことで福島のお友だちを忘れないという想いも込められています。
 皆忙しい中をママ達で力を合わせて何度も何度も打ち合わせをしグッズが完成!
 2014年1月に関西テレビで製品ができるまでを放送。1日でホームページに1万2000件のアクセスが殺到。メンバー4日徹夜。
 2014年2月11日(祝)京都の商業施設新風館のご厚意で「hello!ミンナソラノシタ!」販売スタートイベントを開催。350名の参加。この日からグッズ販売もスタート。多くの方々のお力添えでこの日を迎えることができたことに感謝。京都府私立幼稚園連盟理事長先生のお蔭で、京都の加盟園150ヵ園にミナソラのリーフレット3万部を配布。
 それからの日々は、砂を実現さすために行動行動の日々でした。
 イベントに参加して応援グッズの販売とPRの日々。子どもたちにも手伝ってもらいながら・・・毎月11日は近隣のイオン店舗での黄色いレシートキャンペーンに参加。購入金額の1%がミンナソラノシタに寄付されるので子どもたちとレシートを集めました。イオンさんから頂いた寄付金で郡山市私立幼稚園協会ヘハンドソープを贈りました。
 外遊びを終えた子どもたちは放射線を洗い流すために丁寧に手洗いをします。ハンドソープが足りず先生方が薄めて薄めて使用しているとお聞きし、この応援も現在も続けています。丸菱油脂さまの協力で体に優しいより多くの石鹸が贈れていることにも企業さんに感謝です。
 色々な立場の方々が、ミナソラをツールに福島の子どもたちのために何ができるかを考える。そしてできる範囲の応援をする。こんな優しい輪が広がっていることが本当に嬉しく感謝です。
 オリジナルグッズを園の指定用品に導入してほしいと営業も行いました。園によっては取りまとめて注文を取ってくださったり、各幼稚園でできることを応援してくださいました。
 2014年夏 二度目の福島の幼稚園の先生6名をお招きして交流会。
 そして秋に全国初幼稚園留学を実行(この取り組みを関西テレビさんが密着。京都新聞も大きく記事にしてくださいました)。
 まこと幼稚園が福島の母と幼稚園児を京都に招き短期保養ではなく3週間の滞在。その間子どもはまこと幼稚園に通園するという留学制度。その間福島のママをサポートするのがミナソラ。昨年は秋にどんぐり拾いイベントを行いました。(120名参加)
 近隣の幼稚園の子どもたちがどんぐりを拾いながら「なんでどんぐり拾えないの?」「なんで福島から京都にきているの」等々お母さんに尋ねている姿に嬉しくなりました。小さいころから社会の諸問題に触れたり、感じたり、考えたりすることがとても大事。相手の気持ちに寄り添ったり、共感したり、涙したり。福島の幼稚園では工作にどんぐりや葉っぱを使うことができないので、京都の皆で拾って贈ったどんぐりを大変喜んで頂きました。
 福島の母子と3週間共に過ごしたことで、現地のママの胸の内を聴く。ミナソラメンバーも生活のサポート・観光案内。
 福島から来ていたママも、神経をすり減らして福島で我子を守るために奮闘しているママだったので、本当にリフレッシュできたことと、現地では放射能のことを意識して話せない状況にいるので思う存分自分が感じていることを京都のママ達に聴いてもらえて幸せだったと言っていました。
 また、この留学制度で京都の幼稚園園児にも大きな変化がありました。福島を日本地図で探したり、どんぐり拾いと同様に「どうして福島からお友だちが来ているの?」「福島では何でお砂場遊びできないの」「なんで葉っぱを触ったらいけないの?」「どうしてお外遊びが1日30分しかできないの?」等々問いかけが沢山ありました。京都の子どもたちにとっても福島を近く感じるようになり、ニュースで福島というと「○○ちゃんが居るところだ!」「○○ちゃん元気にしてるかな?」と話をすると多くの母から聞きました。
 2015年2月に「チェルノブイリから学ぶこと」講演会を開催 元NHKディレクター馬場朝子さんをお招きし講演会を行いました。
 NHK ETV特集で流された映像を元に、現地で取材を通じて感じたことを話してくださいました。テスト勉強をすると倒れる子どもたちのために試験をやめたり、体育の授業もまともにできない現状。日に3度も小学校に救急車が来る現伏。チェルノブイリ原発事故から30年近くが過ぎようとしている今なおこのような状況なのかと驚きました。また、ロシアでは年に2度国策で非汚染地ヘクラスや学校単位で3週間以上の保養を年に2回行っています。給食も非汚染地から食材を運び提供しているとのこと。少しでも子どもたちの健康を守ろうと必死に頑張る現状をお話ししてくださいました。ロシアの母も日本の母も我子の健康を願っています。
 2015年5月に福島県郡山市私立幼稚園協会主催「こどもがまんなかフェスティバル」が行われました。5500名を超える参加者の大きなイベントに、ミンナソラノシタから砂の寄贈ができました。
 放射線を気にしなくても良いオーストラリアのホワイトサンドという特殊な砂を8トン寄贈しました。
 初めて、砂に触れる小さな子どもたちイベント一番乗りのお子さんのママは、幼稚園以外では外遊びをしていないと話されていました。
 ミンナソラノシタのグッズを購入してくださった全国の皆様、ご寄付をいただいた方々、砂の寄贈実現に向けて共に頑張ったメンバーたち。
 皆で力を合わせて砂が贈れたことに感謝の気持ちで一杯でした。
 そして福島の子どもたちが嬉しそうに遊ぶ姿に、本当に幸せそうな気持ちになりました。
 イベント終了後、4ヵ園で砂を分けられ今も福島の子どもたちが遊んでいるそうです。
 時間の経過と共に福島の現状は深刻になっています。
 国や東電の対応への不満はありますが、今の生活に皆精一杯。
 また、避難した人、避難しなかった人、賠償金をもらった人、もらわなかった人、避難したけど戻ってきた人・・・本当に多くの立場の方々がいるために、本心で連帯し一致団結することが難しい現状にあることも知りました。
 子育てだけでも、ママ友関係だけでも大変な中で、相手が放射能に対してどのような考え方を持っているのか? 探り探りの付き合い。
 子どもの甲状腺異常も日に日に増えていることを見ると、これからが本当の意味で大切だと思います。が多くの団体は3年を目途に支援を終了しているそうです。これからのミナソラの役割を強く感じます。
 ミンナソラノシタは原発YES・NOの会ではありません。政治にも距離を置いています。それは多くの人に一歩を踏み出してもらうためです。
 個々が知ることから始めて、一人一人が考えて欲しい。
 どんな未来を描くのかも知ることから始めないと、何も始まりません。
 ミンナソラノシタは京都の幼稚園と福島の幼稚園が繋がっている、多くの方々が応援してくださっている会です。この強みを生かしながら、多くの方々と力を合わせてできることをしていきたいと思います。
 ボランティアの会であるので、今回も応援して頂けたら有難いです。