「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

多田地区の豊かな自然を守ろう
愛媛県西予市 多田エコグループたんぽぽ生活学校
飛ばそうエコの種
   咲かせようエコの花
      大好きなこの町に・・・

 私たちの暮らす愛媛県西予市宇和町多田地区は、市の北西部に位置し、北は大洲市、西は八幡浜市と隣接しています。地区内を流れる川は、伊予灘へ注ぎ込む肱川の源流です。
 国道56号線と県道宇和八幡浜線にはさまれて、扇型に広がる小盆地の多田地区は、古来、豊かな水を利用して、稲作を中心とした農業が営まれており、豊かな自然に囲まれた農村地域です。現在、戸数は、718戸、人口は1529人です。平成16年に東宇和郡4町と西宇和郡1町で合併、西予市となり11年目になります。

 グループの活動は、平成9年、町のゴミ焼却炉からダイオキシンが出ていることが判明「なんとかしなくちゃ、住民にもできることを」と始まりました。公民館で開いた最初の学習会に15人ほど集まりました。それ以降、月2回の学習会が定例会となっています。
 「多田エコグループたんぽぽ」というグループ名は、大地にしっかりと根を下ろすたんぽぽのように、私たちも地域のためにしっかりと根を下ろそうと付けた名前です。
 課題として、生ゴミの減量と肱川の汚染対策が話し合われました。

 まず、生ゴミの減量対策として、生ゴミをリサイクルして有機肥料にするためのボカシ(発酵資材)を作る活動を始めました。公民館の別館で、籾殻、米ぬか、糖蜜、EM菌を混ぜ、ドラム缶に3本分を2ヶ月寝かせて発酵させます。それを、台所の生ゴミと混ぜるとEM生ゴミ堆肥になります。ぬか漬けのような強烈な臭いが出るので、最初は誰もが「臭い!」と驚きますが徐々に慣れてきました。できたボカシを畑に入れると、微生物のおかげで甘くて美味しい野菜ができます。メンバーはみんな喜んでボカシ作りに励んでいます。自分たちの手で、少しでもゴミ焼却場に出すゴミ袋から生ゴミを減らし、それでダイオキシンの量が減れば、との思いで続けてきたボカシ作りも19年目になりました。今では、公民館の窓口で必要な人にお分けしたり、町内の産直市場に出荷したり、好評を得ています。また、町内外から活動状況を見学に来ていただくことが増えてきました。

 次に、多田地区は、肱川の源流域にあたるので、生活排水を何とかしよう、と考えました。19キロ下流には野村ダムがあります。ダムの上流に、人口約1万7500人の町があるのはめずらしいことです。野村ダムの水は、3市1町へ生活用水とみかん畑の農業用水として送られています。一番上流域の多田地区の私たちは、合成洗剤をやめ、なるべく石けん洗剤を使うようにしようと、家庭から出る使用済み天ぷら油で廃油石けんを作る活動を始めました。廃油20リットル、苛性ソーダ3キロ、水5.4リットルで牛乳パック(1リットル)25本くらいの石けんができます。これを年に8回ほど作り、地域の文化祭などで販売すると、飛ぶように売れています。作り始めた17年前は、廃油と牛乳パックを集めるのも大変でしたが、今では地域の方々が、公民館へ持ってきていただくようになり、廃油と牛乳パックのリサイクルにもなっています。平成23年度には、「西予市誇れる地域づくり事業」を活用し、廃油石けんを地区内約800家庭に配布し大好評を得ました。

 これらの活動の成果を確認するため、毎年春には、校区内の多田小学校5年生児童と一緒に、地区内河川の上流と下流4カ所で、水生生物調査と水質調査を行っています。川底の石をめくったり、砂をすくったりして小さな水生生物を採取します。大人は童心に返り、子どもたちは大はしゃぎで川に入り、とても楽しく川調べを行っています。サワガニ、カゲロウ、カワニナ、スジエビ、ヤゴ、トビケラ、カワヨシノボリ、アメンボ、ゲンジボタルの幼虫などが多くみられ、水質階級はⅠ~Ⅱ(きれいな水)となっています。川調べも始めて15年になりますが、水質の悪化は認められません。5年程前に完成した農業集落排水のおかげもあって、川がきれいになってきました。ゴミのポイ捨てもなく、9年ほど前から蛍がとても多くとぶようになり、地域の人々を喜ばせています。子どもたちは、普段はなかなか目にすることのない川底の生き物にふれ、川を汚さないことや生き物を大切にする心を学んでいます。
 そして、毎年夏休みには、もっときれいな川を見せるため、西予市内の四国カルスト大野ヶ原高原へ自然探検に出かけて行きます。標高1400メートルの大野ヶ原は、日本三大カルストの一つで、ドリーネ(窪地)や鍾乳洞のある石灰岩地特有のカルスト地形が発達しており、約1000万年も前の地形を留めているといわれています。
 「森の母」とも呼ばれているブナの古木や巨樹が生い茂る原生林は、高山植物の宝庫でもあります。子どもたちは、この活動を毎年楽しみにしています。森の中の小川では、サンショウウオを見つけ、少し下流では、アミカやカワゲラを発見することができます。自分たちの住んでいる場所との比較をしながら、雄大な自然を体感するのです。

 また、年に1回、地区内外の自然観察会も行っています。会員以外にも声をかけ、たくさんの地区住民も参加してもらっています。最近では、鎮守の森の八幡神社、スカイツリーの高さ634メートルとほぼ同じ高さにある大窪山福楽寺、水量100万トンの関地池など地区内の名所を観察場所にしました。愛媛県指定の絶滅危惧種のクララやシロネ、アカハライモリ、トノサマガエル、イシガメ、タモロコなどが、まだまだたくさん生息しています。動植物や歴史を学び、地域をより深く知ることができると参加者に喜んでもらっています。平成20年度には、これまでの自然観察会のまとめとして「すばらしき多田の自然」というリーフレットを作成し、地区内全戸に配布し活用していただいています。

 西予市は、平成25年9月に「四国西予ジオパーク」として、日本ジオパークに正式認定されました。ジオとは大地のこと、そこで育まれた自然や生態系、人々の暮らしを丸ごと感じることができる「大地の公園」がジオパークであり、私たちの大切なふるさとです。まずは私たちが学習し、各町の沢山のジオポイントを案内できるようにと3年前からジオポイント巡りの研修も始めました。
 この他にも、アクリルたわし作り、公民館の花壇の手入れや草引き、空き缶拾い、地区の文化祭への参加、一日研修なども行っています。

 また、西予市には各町で環境グループが熱心に活動しており、現在、6グループ120名ほどの「エコグリーン西予」という団体もあります。私たちも所属しており、毎年行っている水生生物調査は市全体で行い、情報を共有できるようハンドブックも作っております。このように、小さな活動からどんどん広がり、同じ目標をもつ仲間が増えたことは、とても嬉しいことです。

 19年前に15名から始めた「多田エコグループたんぽぽ」も今では45名になりました。メンバーは高齢者が多く、平均年齢は72歳くらいです。でも、青年団や婦人会など地域の団体が消えていく中、54歳~88歳までの世代を超えたメンバーで仲良く活動していることは少々自慢でもあります。最近では多田地区以外からのメンバーも増えています。その上、校区内の多田小学校5年生が、15年前から、総合的な学習の時間などを活用し、年間通して活動に参加しています。子どもたちのおかげで、作業場はとても明るくにぎやかで、夏休みなどには、自主的に参加してくれる子もいて、メンバーの励みになっています。活動以外の場所でも挨拶や話ができ、すてきな3世代交流になっていると思います。盆踊り大会などに帰省したかつての5年生が、「僕、おぼえてますか? ○○です。お元気ですか?」と声をかけてくれる時が「あ~やってて良かった~」と思う瞬間です。
 時々、他の小学校からも廃油石けん作りやエコ活動発表などの要請があり、メンバーで喜んで出かけて行きます。子どもたちが、いつまでも、ふるさと多田を大切に思ってくれるよう環境教育のサポートになればと考えています。

 平成18年には、「エイジレスライフ実践者及び社会参加活動事例」紹介事業で表彰していただきました。それをきっかけに、活動が少しずつ知られるようになり、成果を発信できるようになったと思っています。毎年開かれる市内の環境フェアでも、多田小学生と一緒に今まで5回活動発表を行いました。平成23年度には、「せいよ再発見!地域づくりグランプリ」で審査員特別賞を受賞しました。
 今、18年間を振り返ってみると、私たちの活動は、地域に根ざした小さなエコ活動で、大きなことはできていません。でも、「継続は力なり」だけはメンバー誰もが実感しているところです。会員みんなで、和気あいあいと楽しく、無理なく続けてきました。これは、自分たちの力だけではなく、地域の方々、公民館、小学校等の多大な支えがあったからだと深く感謝しております。
 3年前から電子メールの活用などIT化も取り入れました。自分たちだけでなく他団体との積極的な連携協働でより活動を活発にしていき、広域での活動の情報を共有して自分たちの活動に活かしたいと考えています。
 平成27年度から、愛媛県内の生活学校・生活会議のとりまとめ団体である、えひめ生活学校・生活会議ネットワークの代表を引き受けることになりました。今までは受け身の活動でしたが、今年度からは中国・四国ブロックや全国的な活動も視野にいれて、他団体とのつながりを密にして連携による活動の展開を進めていき、より良いふるさとの創生を目標とします。従来から続けている活動も他地域の事例を参照にして進めていきます。
 地元多田地区の自然を守っていくことは、地域に住むものの役割と考え、身近なエコ活動を続けようと思います。それが地域の活性化、地域づくりにつながることを願っています。

   飛ばそうエコの種
        咲かせようエコの花
            大好きなこの町に・・・