「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

人とまちを“魅せる”私たちの挑戦
愛媛県八幡浜市 特定非営利活動法人八幡浜元気プロジェクト
清掃活動が原点
 八幡浜元気プロジェクト(以下、YGP)が誕生したのは、平成18年8月。私と幼なじみの中根が温泉の露天風呂で語り合ったことがきっかけで動き出しました。
 最初の活動は、幼少期から慣れ親しんだ北浜公園の清掃活動。最初、地元同級生等4人からはじめました。清掃活動を続けていると、地域の方々から「若いのにえらいな~」とか「どこの団体がやりよるん?」と声を掛けていただくようになり、地域の方々も次第に清掃活動に参加してくださるようになりました。子どもからお年寄りまで、所属もバラバラな方々が集い、清掃活動を通じて、地域の「人の輪」が広がりはじめました。地味な活動ではありましたが、地域の人と交流する大切な活動になり、後のYGPの成長にとって欠かすことのできない出会いがたくさん生まれた活動でもあります。この清掃活動は、後に住民参加型清掃「クリーンプロジェクト」に発展し、今もなお継続しているプロジェクトになっています。

人の元気を、まちの元気につなげる
 私たちの活動は、清掃活動にはじまり、地域活動団体さんの支援活動や笑顔の素敵な人を紹介した情報誌「八幡浜笑人(やわたはましょうにん)」の発刊、かまぼこ板を活用した「かまぼこカーテン」制作、まち育てワークショップ・プレゼンテーションの実施など、多岐に渡っています。バラバラな活動に見えますが、私たちが大切にしているコーポレートスローガン「人の元気を、まちの元気につなげる」を具現化したものになります。
 私たちは、すべての活動において、「住民」のみなさんをいかに巻き込んでいくかの視点を大切に、「市民性」を育む仕掛けを散りばめています。

あるものを活かして、ないものへ育てる
 八幡浜にはたくさんの「地域資源」が点在しています。その価値を気づいているものだけではなく、不要なものや当たり前にあるものなどについて、他資源との組み合わせや違う切り口で見直してみると、新たなものが生まれたりすることがあります。私たちの活動は、「地域資源」を掘り起こし、活用を行うことで、新たな価値創造を図り、地域の活性化につなげることを目指しています。
 まちづくりというよりか、今、まちにある資源を活用して、まちを「育てる」という視点を大切にしています。

若者・よそ者の可能性
 アートプロジェクトとして「かまぼこカーテン」の制作を行う際、日本大学の学生約20名が八幡浜に約1ヶ月滞在しました。この1ヶ月は、八幡浜市民にとって刺激的な1ヶ月になりました。商店街を賑やかな声で駆け抜ける学生、真夏の暑い中、制作に取りかかる学生、地元の祭りに参加する学生。八幡浜に縁がない“よそ者”たちなのに、住民の皆さんは、気になって仕方がなく、お菓子の差し入れや制作の手伝いなどが自然に行われるようになったのです。
 学生たちの賑やかな声やまちにかける熱意・発想などは、八幡浜へ新たな「風」を吹き込みました。若い力を活用することは、地元の「土」地を耕す「風」となり得る、そう実感したプロジェクトになりました。
 YGPは自らの若さを活かし「サプライズ」を仕掛けるだけでなく、外部から“若者”や“よそ者”を活動に呼び込みながら、地域を元気にしていくことに挑戦しています。

かまぼこ板のブランド「BOCO(ボコ)」の開発
 26年度、YGPの基軸のひとつである「地域資源活用」の考えをより具体的に実践していく「88プロジェクト」を起ち上げ、かまぼこ板ブランド「BOCO」の開発・普及を目指しています。かまぼこを食べ終わった後に廃棄される「板」を回収し、積み木等の製品の製造やかまぼこ板を高く積み上げる競技「BOCOタワー」の普及を図ることで、八幡浜の特産品であるかまぼこの消費拡大及びリサイクルの推進を行っています。「BOCO」の積み木の製造にあたっては、地元就労支援施設と協働し、かまぼこ板の削り加工、焼印を押す作業を依頼。さらには、プロジェクトに共感くださる多くの家庭や事業所から、かまぼこ板を持ち寄っていただけるなど、地域全体を巻き込みながらプロジェクトを進めています。
 ちなみに、「BOCO」とは、「かまぼこ」と「エコ」と「ロコ」(ハワイ語で「地域」という意味)を掛け合わせた造語です。

八幡浜モデルを全国へ発信
 YGPは今年10年目を迎えます。地域内外の応援してくださる方に支えられ、今日まで歩んでくることができました。25年4月からは、八幡浜の道の駅・みなとオアシス「八幡浜みなっと」のみなと交流館の指定管理業務の一翼を担わせていただいており、今まで以上に地域により深く関わる機会をいただいています。YGPがこれまで培ってきた経験や人脈などをフル活用し、八幡浜の活性化に全力で取り組んでいるところです。
 四国は日本の“課題先進地”であると言われているように、ここ八幡浜の事業モデルを全国へ発信し、日本の“社会変革モデル”へと繋げたいと考えています。

「魅(み)せる力が求められる」
 「魅せる」。YGPで私がよく言っている言葉のひとつです。YGP「メンバーの魅力」がYGPという「組織の魅力」に繋がる、ひいてはそれが「八幡浜の魅力」につながる。そう考えたときに、一人一人のメンバーの魅力を引き出し、活動に活かしていくことが大切であると考えています。それは、住民の皆さんや企業、商品・サービスなどにも当てはまることであり、今後、個々を「魅せる力」が、地域社会の抱える問題を解決する“重要な手法”になり得ると考えています。私たちは、引き続き、ここ八幡浜において活動を積み重ね、その事例を広く発信していきます。

【現在の主な事業・活動】
1.つながり事業
(1)概要
 団体と団体、人と人、地域と地域等を結びつける事業。つながりづくりを支援することで、人・プロジェクト・団体・まちの元気につなげることを目的にする。
(2)具体的内容
 メンバー間・地域内外の交流会の実施、地域活動団体ポータルサイト「TUMUGU」運営等。
2.まち育て事業
(1)概要
 地域活動を活発化させていくための中間支援事業を行う。また、当法人の独自プロジェクトの計画・実施・検証・管理等を行っていく。プロジェクトで得られた成果をノウハウ化・一般化し、地域や社会を変革していくことを目的にする。
(2)具体的内容
 みなと交流館等指定管理業務への参画。中間支援業務を通じた当法人の中間支援事業の実施(中間支援事業の体制強化・講師等対応)。
 将来に渡って核となる独自プロジェクト「88プロジェクト」の実施及び過去のプロジェクトの深化。

【過去の主な事業・活動】
1.八幡浜クリーンプロジェクト(交流をメインにした住民参加型清掃)
2.八幡浜ドネーションプロジェクト(100円1口の寄付を集めるドネパ開催等)
3.八幡浜スマイルプロジェクト(情報誌「八幡浜笑人」の発行等)
4.八幡浜オーナープロジェクト(名前入りの桜の植樹等)
5.八幡浜アートプロジェクト(回収済かまぼこ板で制作したかまぼこカーテン)
6.八幡浜アグリプロジェクト(地場産業である農業(柑橘)の活性化)
7.青石の石垣・みかんの丘プロジェクト(住民参加による青石を利用した石垣制作等)
8.中間支援事業(みなと交流館等指定管理業務:構成団体として中間支援業務を主担当等)
9.Knockn Rollえひめ実行委員会の起ち上げ・委員派遣(県域のプロジェクト量産・創造型イベントの実施)
10.商店街夜市等イベントのお手伝い