「ふるさとづくり'01」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

福祉を介した元気な人づくり・地域づくり
福岡県 古賀市
 福岡県古賀市は、平成9年、市に昇格した若い都市で、21世紀初頭の針路となるマスタープランを市民参加のワークショップ方式でまとめた。その中で「ひとが真ん中、古賀新時代」に、「元気な人づくり」を実践する「えんがわくらぶ」を立ち上げ、元気な高齢者たちが、学び・楽しみ・相互に助け合うなどの社会貢献活動に取り組んでいる。


小学校の空き用務員室を活動拠点に

 本年2月、古賀市の21世紀初頭の進路となる「第3次古賀市総合振興計画」(マスタープラン)が議会で議決、策定された。同計画は、平成11年3月から、市民参加のワークショップ方式で検討し、市民と行政が一体となってまとめた。
 基本構想は、「輝く未来へ、はつらつ交流都市こが」をうたい、まちづくりの合言葉「人が真ん中、古賀新時代」をモットーに、「元気な人づくり」「快適な環境づくり」「多様な交流拠点づくり」の三つの力点と重点プロジェクトからなるプランをまとめた。
 中でも一番重視されたのが「元気な人づくり」で、福祉の分野では、特に、少子・高齢化の問題に視点を置き、末永く元気な高齢者でいられるための予防に力を入れていくことにした。その一歩を踏み出したのが、「えんがわくらぶ」だった。
 古賀市は、高齢化も13.1%と近隣市町村に比べて低いが、ベッドタウンに共通する課題として、将来、急速に高齢化をたどるという問題を抱えていた。そのため、「いつまでも元気でしゃんしゃん(しゃきしゃき)」していられる人づくりとして、特に元気な高齢者に対する健康・生きがい支援活動に焦点を絞り、高齢者自身が集団で、主体的に活動できる“ヤングオールド作戦”を検討してきた。
 まず、活動の拠点をどこに求めるかが問題だった。倒産したパチンコ店や、駅前の空き店舗などアイデアが出されたが、煮詰らなかった。そんなとき、東小学校の用務員室が空き、しかも校内の離れにある20坪ほどの一軒家という好条件に恵まれていた。この用務員室を「高齢者学級の創設」という発想から借り受けることができて、国の介護予防拠点整備事業を活用し、用務員室を改修して元気な人作り活動の拠点とすることになった。
 問題は、施設の運営だが、(1)住民主体、(2)高齢者間の相互の助け合い、(3)学習と実践、(4)生徒との対等な関係、の四つの条件を作り、運営のあり方を検討した。


小学生が高齢者と授業で野菜の栽培実習

 拠点の運営では、幸い、マスタープラン作りに参加していた住民を通してシニアルネッサンス財団を知り、同財団の活動が市の描くビジョンと一致したことから事業を委託。運営も同財団と関りのあるシニアライフアドバイザー協会に依頼することで解決した。
 平成13年4月、古賀市生きがい活動支援センター「えんがわくらぶ」が開設。6人のメンバーでスタートした。こうして、自分たち自身で生きがいを見つけ、週2回、食事や送迎なども自分たちで行う活動が始まった。
 活動は、パソコンや園芸といった創造性、生産性のある活動に始まり、様々な趣味や教養講座などに元気な高齢者や市民が共に学び、やがて地域や学校にボランティアなどで貢献していくことで、“新たな自己発見”をしてもらうことに狙いがあった。こうして、今までの宅老所のイメージの強い、生きがいデイサービスとは違う活動の場が生まれた。
 特に今までの活動の中で好評だったのが、小学生と実施した栽培実習だった。2年生、4年生の生活科の授業で、みんなで休耕状態の畑を耕し、高齢者が指導しながらさつま芋やきゅうりなどの野菜づくりを行った。この授業は、高齢者の発案で、育てる過程から生き物の大切さや収穫の喜びを子供たちに知ってもらいたい、という考えから始まったものだが、子どもたちは、今度は収穫祭で一緒に芋煮会をやりたいとはしゃぎ、喜ぶ笑顔が、また、高齢者にとっては何よりの喜びと生きがいだった。
 ところで、「えんがわくらぶ」の今後の課題としては、地域のシニアリーダーとして培ったノウハウを、地域に持ち帰って如何に生かしていくか、また、学校5日制完全施行による土日対策、夏休みなどの長期休校期間の関わり方などについて、現在20人になったメンバーで模索している。
 古賀市では、地域ケア体制づくりで、行政区にある公民館を拠点に、住民主体の介護予防にも取り組んでいる。現在、市内の6地区、6ヵ所で行政と住民とで組織する運営委員会を組織して検討に入り、うち1か所は活動体制を作り上げている。
 住民の中には、多彩な技能や資格が使われずに休眠中の人も多い。そうした人材発掘と住民による住民のための活動を基本に、住民主体の地域づくりを行政側で出来る限り支援していきたい、というのが古賀市の方針だ。