「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

産・官・学・民でつくる循環型社会の実現へ
栃木県足利市 足利EM普及探偵団
 家庭菜園を営んでいるメンバーの1人が、化学肥料や農薬を使った栽培では、限界であることを感じ「有用微生物群」EM(Efective Micro Organisms)の働きに着目した。
 EMは、自然界に存在する微生物の中から人体に無害で、作物生産などに有効な菌体5科10属80種余りを選び出したもので、抗酸化作用の働きで蘇生化現象を生み、農業の土壌改良から環境保全に広く活用できる。
 平成6年春、EMは、家庭菜園やガーデニングに止まらず、広く環境問題に展開出来ることから、EMで「渡良瀬川をきれいにしよう」と、市役所を訪ね市長と懇談した。
 平成7年、足利EM普及探偵団を結成。
 同会は、家庭の生ごみの堆肥化から始め、川の浄化活動、ケナフ栽培をからめた環境教育の教材に導入するなど、産・官・学・民のコーディネーター役を果たしながら循環型社会の形成に向かって活動を展開している。


まず家庭の生ごみの堆肥化から

 市長と有志の懇談で、行政が動くと市民の税金を使うことになる、市民への説明も徹底して欲しいと、市長の言葉であった。
 そこで、市民へのアプローチをどうするかを模索していた。相談に乗ってくれたのが、足利商工会議所である。それは、同会議所の事業の一環である「探偵団」であった。
 探偵団とは、地域や業界で意欲のある人々を発掘し、その人たちが知恵を出し、汗を流して自ら地域づくりや業界振興を行う場合、同会議所が認定し支援するものである。
 この認定を受けるため、企業や婦人部、関心のある老若男女54人でメンバー構成。EMの特性を調査・研究・普及し、地域の環境保全を維持、まちおこし活動を実践するグループとして結成した。これが、足利EM普及探偵団で、同会議所8番目の認定である。
 まず、大きな川が汚れているのは、各家庭から垂れ流される雑排水が一つの原因であることから、家庭の生ごみをEMで発酵処理、堆肥を作り、家庭菜園やガーデニングを楽しみながら、腐敗と発酵の違いを体験してもらうことから取り組むことにした。
 足利市役所は、早速生ごみを堆肥化するコンポスト容器に補助金制度(3分の2を補助)を導入、市民が取り組み易い環境をサポートした。こうして、生ごみ中心に台所からの普及活動が始まった。
 一方、企業経営の中でも避けて通れないのが環境問題である。商工会議所は、環境問題を「まちおこし」に位置づけ、事務所内に、EM探偵団のデスクを一つ配置し、職員が生ごみリサイクルの資材を一般市民への販売に協力することになった。
 また、平成10年、同会議所ビル内に開局した足利ケーブルテレビも熱心に取材、市民へのPRに大きな役割を果たしている。


EMとケナフが環境学習の教材に

 ケナフは、アフリカ原産の一年草で、半年で3〜4メートルに成長、その過程で多くの二酸化炭素を吸収する。この、成長の早いケナフとEMを組み合わせて、環境学習の教材にしてはどうかと考えた。
 市教育委員会に提案、市立毛野小学校大久保分校が紹介された。同校校長・教頭・担当教師が興味をもち、同探偵団の提案に工夫を加え、次々と実行に移していった。
 同校のPTAも「ケナフってなぁに」と題し、新聞に栽培篇と加工篇を2回特集し、近隣地域への普及にも大きな役割を果たした。子どもたちは、給食残飯を発酵させケナフの堆肥や家畜の餌に。トイレの臭気対策に散布したり色々な可能性を体験している。
 また、米のとぎ汁をペットボトルで、5〜6日発酵させ全生徒で放流、プールには、木の葉や炭、藁を網袋に入れ沈めておく。2〜3回EM発酵液を放流したらミジンコが発生しので、メダカを100匹入れた。翌夏のプール清掃は腐敗臭もなく、メダカは増えアメンボーやゲンゴロウなどの生物も誕生、ビオトーブづくり体験は大成功であった。
 同分校での活動内容は、ビデオに編集され来年度から導入の「総合的な学習の時間」の参考に資される。また、同市は、平成11年度から小中37の全校に、EMとケナフを環境学習の教材に導入している。
 一方、学校以外での地域活動の一つが、矢場川浄化作戦である。市の中心を流れる渡良瀬川から、灌漑用水堀への幹線的役割を果たしているこの川に、有用な微生物を投入し、自然の浄化能力のアップを図る活動である。
 大量に必要なEMを培養するため、培養装置を市内の染料会社が協力してくれた。
 EMの培養に、「企業や行政の理解協力」 土と水の成分測定の指導と協力は「市内の大学」に、川の水の変化と観測の記録を「中学生」に頼んだ。産・官・学・民の連携の中での活動である。今後、環境問題に集う場「エコ・プラザ」構想の提案を考えている。