「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

複式学級の阻止の取り組みからふるさとづくりへ
兵庫県五色町 堺活性化委員会
 堺地区は、淡路島のほぼ中央に位置し、250世帯からなる純農村地帯である。この地区も全国的な傾向と同じく、高齢化や若者の流失、小子化の影響で人口が減少し、堺小学校の児童は、昭和30年代の213人をピークに、45年には100人、55年63人と減少の一途を辿り続けた。このままの状態では平成4年に49人となり、複式学級の設置は避けられないことが明らかになった。
 平成3年、複式学級は地域のイメージダウンに繋がることから、各種団体が中心に、これを阻止する「堺活性化委員会」を自主的に組織した。そして、外からの児童誘致のために町営や分譲住宅を実現、さびれていた秋祭りを賑やかにと多彩なイベントを企画する等、新旧住民の融和を計り、常に子どもを中心に据えた活動を展開している。


町営住宅の建設と永住用住宅地の開発

 同会は、複式学級の導入だけは何とか阻止したいと、毎夜の会合を積み重ねた。その結果、(1)家族連れ入居の町営住宅建設を五色町に要望し、その用地は同会が確保する。(2)将来を見越して、永住用住宅地開発を同町に要望、その用地は同会が確保する。(3)父親の勤務先を斡旋し、島内外より適齢の児童連れ家族を誘致する。この3点を骨子に町当局へ協力に要望することにした。同会は、難題な用地確保に地域の総力を挙げて取り組むことになった。
 複式学級設置へのタイムリミットの課題を克服し、平成4年9月には町営住宅建設が着工され、永住用住宅地も起工の運びとなる。
 同会は、町営住宅入居者の募集に当たって優遇策を協議し、(1)引っ越し祝金(島外5万円・島内3万円)を進呈する。(2)転作田を活用し、野菜農園を無料貸し出しする、など5項目を決定。この優遇策をポスターに掲載、テレビや新聞等でも大々的に報道した。
 その結果、京阪神を中心に6家族が堺小学校を訪れ、下見が行われた。児童は13人で4年生が2人いることから、複式学級導入が避けられる見通しとなった。
 平成5年4月7日、複式学級阻止の運動が実り待望の入学式が行われた。
 永住用分譲住宅地も平成4年度から着々と進んでいった。そこで、町営住宅の児童連れ家族誘致の成果を踏まえ、島内出身の次・三男で、三洋電気等に勤務する島外者に的を絞り猛運動を展開した。平成5年度第1・2期分譲とも完売、児童連れ家族が6割を占めた。
 同会は、用地の確保から分譲地売り出しに渉る活動等を一手に担い、平成6年5月第3期分譲と合わせ造整地は完成した。


神社の秋祭りで新旧住民のふれあい

 ここで、年々増える新しい住民、旧住民や子どもたちとのふれあい、コミュニケーションの場づくりが緊急の課題となってきたことから、同会は、これまで参拝者が少なく衰退傾向にある神社の秋祭りを、新しいイベントも加えにぎやかな祭りを行うことにした。
 新しい試みの初年、世帯主の名前を掲載した提灯を募り、395張りを吊し飾ったところ、神社の秋祭り始まって以来の人出で賑い新旧住民のふれあいの場となった。
 2年目は、ふるさとに帰省する人々の「ふるさと帰り提灯」と、地域の女性名を記した「レディース提灯」280張りが加わり、675の提灯で、秋祭り宵宮の夜空を照らした。
 さらに、PTAのバザーも出店、子どもたちとのふれあいの場づくりに定着した。
 秋祭り活性化3年目を迎えた平成10年には、提灯も54張り加わりゴロ良い「729(シチフク)」張りになった。これは、堺八幡神社の風物詩となる。この年の宵宮では、全国でも珍しいといわれる夜の餅まきを企画した。義務教育最後の地元中学3年生と、新婚カップルが「幸せ餅」を分ける新しいイベントを加えたところ、広く新聞報道等もあって境内はあふれる参拝者で盛り上がった。
 年々参拝者も増えているので、宵宮イベントにも新機軸を考え、これまでの催しものに加え4年目は、同じ地域活性化に努力している隣接町の小学生12人の和太鼓「清流のぼり打ち」を披露した。昨年は、地元の高校生が所属する高校郷土芸能部の壇尻唄「岩壁の母」の熱演に、境内ぎっしりの参拝者が酔いしれた。
 さらに、20世紀から21世紀への歴史に残る2年間は、地域活性化のシンボルとなった「提灯」を活用し、子どもを中心にしたミレニアムイベントを実施した。
 子どもたちから募集した「オメデトウ2000」の赤提灯文字が、年末年始の夜空を飾り、昨年末は、新たな場所で「サヨウナラミレニアム2000」の赤提灯文字を夜空に浮かばせ、新世紀を迎え「オメデトウミレニアム2001」の提灯文字に転換を実現する。
 同会は、21世紀を担う子どもたちが楽しく、賑やかに子どもの声があふれる、活力ある地域づくりに努力している。