「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

豊かな地域づくりをめざして
長野県中野市 NAGAOC
 昨年2月、長野県は冬季オリンピックで沸いた。だが、中野市のはずれにある旧村・長丘は、なんの特長もない地域だった。それが小学校の生徒が田んぼに作った4体のスノーレッツの雪像をヒントに「向こう見ずなモノズキたち」が動き出した。NAGAOC(代表・吉家政美さん、メンバー数50人)の始動である。酒飲み話を重ねた末に、「オリンピック・パラリンピックを成功させよう」をテーマに、一大イベントを企画した。


オリンピック・パラリンピックを成功させようin長丘

 イベントは、オリンピックの開会に合わせて、忙しく準備作業に入った。大勢の人が協力を申し出た。いろいろな人が集まるといろいろな知恵が出てくるものだ。なれた仕事のこなしや特技など驚きと嬉しい発見があいつぎ、参加者は自信を深めていよいよ開催当日の朝を迎えた。
 キャンドル係は、ペットボトルを集めて加工し、ロウソクをセットして街道沿いに並べた。料理係は、薪と釜をセットし、豚汁を作る。会場係がテントを張り、音響照明係は、発電機を借りて配線を始める。4トンのウイングトラックが横付けされて演奏舞台になった。
 花火を合図に、オリンピック・パラリンピックを成功させようin長岡が開会。スノーモービル五台が田んぼを走り、派手にジャンプしてパフォーマンスを演じる。体験試乗会では子どもも大人も列を作った。地元の愛好会の太鼓やロックの演奏が始まり、人びとが集まってきた。豚汁を食べ、酒も回って賑やかになる。夕暮れ、キャンドルに点火、雪に映えて美しい。この光に誘われて、ますます老若男女が集まってきた。バイアスロン会場からの帰り道、ドイツ人の競技スタッフも加わった。彼らも太鼓を叩き、テレビカメラも駆けつけて、思わぬ国際交流にまで発展し、最後は、また花火で締めくくった。


ユニセフ募金を今年のテーマにして

 2年目になる今年の2月は、「アジアの恵まれない子ども達に愛の手を」と、ユニセフ募金をテーマにして、「キャンドル街道in長丘」を実施し、出し物の目玉は雪像実物大の新幹線車両。近い将来、新幹線が開通するのを見込んでのことだ。
 鉄建公団から設計図を借り、ダンプカーと大型クレーン車2台を動員して制作に取り掛かった。シャベルを使って皆で形を整え、実物大の新幹線車両が完成した。電柱の古材を積み上げた篝火もできて、キャンドルが雪の街道を美しく飾った。花火も上がり、地元のバンドも応援に駆けつけ、イベントは前年度に劣らず盛り上がった。無料のきのこ汁も好評で、募金用のおでんもポップコーンもアルコールも売れた。こうして、ユニセフへの送金も、幾らかなりともすることができた。
 長丘の村も、近年、ご多分に漏れずサラリーマンが増え、かつての農村社会は混住社会に変わった。そこでは当然、マイホームに閉塞し、孤立する人びとも多くなる。しかし、雇用社会の持つ地域の断絶を克服して、人びとの繋がりを大切にする社会、地域でゲマインシャフトを取り戻したい、というのがNAGAOCメンバーの願いである。それを、この2度の手作りイベントを通じて可能なことを実感した。