「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

いたずら神さんのむらおこし
岡山県哲多町 わるさ神の会
 昔話で、地区のシンボル・荒戸山の守護神「わるさ神さん」はいたずら好きの神様だった。この神様にちなんでつけたネーミングが「わるさ神の会」(代表・川上盛男さん・メンバー数50人)。昭和61年2月、「地域おこしをやろう」という7人の仲間の呼びかけで25組の夫婦50人が参加。以来、今日まで13年間、生産活動や伝統文化の継承、ボランティア活動などを通じて、会員達は確かな手応えを感じている。


プルーンを町の特産品に仕立てることから始める

 活動の拠点作りから始めた。活動には、拠点となり自由に使える施設が必要だ。そこで、電柱150本、間伐材を会員所有のユニックで集め、囲炉裏の間や和室、作業場などのあるログハウスを建てた。また今では、バーベキューハウスや野外ステージを設け、簡単なイベントなら十分行えるようになった。
 耕地の多い地域性を生かし、プルーン栽培を思い立った。牧草地3.4へクタールを借り、プルーン800本にりんご100本、梅300本を植え付けた。サラリーマンばかりの会員が作業するのは、夕方と日曜日で、雑草取りから消毒や施肥、剪定と、年中作業があって大変だった。こうして平成5年にはプルーン300ケース(2キロ入り)を初出荷、飛ぶように売れたときの喜びは最高だった。以来、毎年500〜700ケースを生産し、大きな収入源になっている。
 生産を通じて、障害児との交流や提携が生まれた。まず、プルーンの収穫は短期間のため、会員だけでは無理があった。そこで地域内にある精神障害児と授産施設の県健康の森学園生と授産生に収穫を依頼した。こうして、会員は摘み取られたプルーンを夜に選果し、箱詰めにするのである。


障害者の支援や伝統文化の復活・新芸術村づくりへ

 健康の森学園は小・中・高等部に授産施設が備わった充実した学園である。会員は、同学園が開園した平成4年度から交流を始めていて、田植えや収穫祭、盆踊りなどではいつも大勢の会員が参加していた。とくに学園生の楽しみと自立心を養う一助になればと、国指定民俗無形文化財の備中神楽を指導してきた。こうして苦労して練習を重ねてきた結果、園生の舞う神楽は、町内外のイベントに引っ張りだこで、観衆には大きな感動を与え、園生には確かな自信を持たせている。そして今では、県下はもとより、県外からも公演依頼がくるほどになった。
 地域に、かつての賑いを取り戻そうと、盆踊りやとんど祭りを復活した。田植唄や民謡は、高齢者からテープをとり、婦人会や老人クラブに練習を呼びかけ、地元の唄で盆踊りを盛り上げた。また、7年には、高齢者を地域住民みんなで支えようと「福祉の村づくり」も発足した。
 地域の美しい自然を背景に、「芸術村構想」も実を結びつつある。平成6年、まず草木染め作家がきてくれる。会員は、空き家を改造して迎え、町も工房を建てるなどの支援をした。ここを拠点に、婦人グループがプルーン染めに挑戦したりして、訪れる人も多くなった。こうして「芸術村構想」が生まれ、平成7年10月、各種ジャンルの芸術家31人の賛同・参加のもとに第1回芸術村『命のまつり』が開かれ、以後定着している。