「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

白山川にホタルを甦らせたふるさとづくり
大分県三重町 白山川を守る会
 昭和40年代、急激な高度経済成長とともに、白山川の汚染が進み、夏の夜の名物・源氏ホタルの群れも絶滅の危機に瀕していた。そんな状態に危機感を抱いた地域の有志が河川浄化に乗り出し、地域を挙げて「白山川を守る会」(代表・上野卓男さん、メンバー数262二人)を組織したのが、昭和49年だった。以来26年、ホタルは見事に復活し、毎年6月上旬、県内外から多数の参加者を集めて、ホタル祭りが開かれている。


川を守る3原則を決め、川を身近なものにしていく

 会は、地区内1戸1人を会員に、全戸参加で組織し、まず、活動の3原則を決めた。(1)(旧型の)水洗便所の設置禁止(その後合併浄化槽はよいことに修正)(2)有機燐酸系合成洗剤の使用禁止(3)農薬使用を軽減する、というもの。また、川にゴミを捨てない、清掃・草刈りや看板・標語の設置、チラシの配布などから取り組んだ。
 現在は、それに加えて水質や水生生物の調査を実施し、簡易家庭雑排水処理施設の設置を促進したり、川の巡視も始めた。昭和55、56年頃になると、念願のホタルが白山川に復活、マスコミにも取り上げられて町内外に伝わり、活動にも一層の弾みがついた。こうして、6月上旬はホタル祭り、8月には白山川でしぶき上げ大会が開かれるようになった。しぶき上げ大会では、河川プールで小・中学生を対象に、競泳やたらい漕ぎ、水中綱引き、水上相撲、鰻の掴み取りなどを楽しむ。
 昭和60年、白山川が全国名水100選に認定されて、県内各地の河川浄化で「白山川に続け」といわれるまでになった。平成7年、三重町で第1回九州ホタルサミットが開かれ、九州一円にホタルの里づくりの輪が広がった。平成8年には、白山川の自然景観を保存し、世間に紹介していくために、「白山川8景」を選定し、道標などを設置した。合わせて、8景の1つ白山川の源流探訪会も始り、秘境の景観が堪能できる。
 ホタルは順調に増えていった。名水100選の認定を記念して毎年開かれるようになったホタル祭りは、3000人余の参加者で盛会を極め、大分県はもとより、九州全域でも最多の源氏ホタルの生息地として知られるようになり、地域の観光振興に貢献している。


関係機関にも運動への協力を呼びかけ

 河川浄化活動は、確実に効果を上げているが、会ではそれに満足することなく、関係機関団体にも運動への協力を呼びかけている。洗剤の使用や家庭雑排水処理で、婦人部に協力を求めたり、小学生たちにも、河川浄化思想の高揚を図るために、河川の清掃や作文を募集して、浄化思想の普及に努めている。
 会は、発足以来26年を経過したが、白山川の周辺に人間の生活が続く限り、「川を守る運動」は必要不可欠で、継続していくことを確認している。そして、今後の活動では、白山川近くの山中には、ヒメホタルも棲息しており、源氏ホタルともどもこのヒメホタルの保護と増殖にも力を入れていくことにしている。そのため、白山川の川べりの樹木は伐採しないことや、ホタルの棲息に適した自然環境の維持とともに、大切な水資源の確保にも欠かせない自然の水瓶ともいわれる照葉樹林の保護・保存に取り組んでいくことにしている。