「ふるさとづくり2000」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

市民協働によるコミュニティ施設の基本設計づくり
神奈川県 横須賀市
 横須賀市では平成10年度に、市民協働のまちづくりを進めるためのモデル事業の1つ「武山地域自治活動センター・武山青少年の家基本設計づくりワークショップ(仮称)」を企画した。地元の強い要望のあったコミュニティ施設の建設を、市民自らが参加して完成させよう、というもの。地方分権時代にふさわしい個性あるまちを行政と市民のパートナーシップで実現させるのが、このワークショップの狙いである。


市民協働によるまちづくりの実践

 大方の構想が固まった段階で開く住民説明会、という今までのやり方ではなく、ワークショップでは、敷地や予算の制約を条件に市民自らが建設予定地に立ち、専門委員をコーディネーターに、市民と市職員が意見を交わしながら案を作り上げていった。市民協働によるまちづくりへのチャレンジであり、参加した市民自らが、まちづくりを担ったのである。
 また、大きな特徴は、施設設計者を選定するのにエスキスコンペ(公開競技設計)方式を導入しことだった。このエスキスコンペの開催にあたっては、建築設計候補者選考委員会に、専門家や市職員にワークショップメンバーから市民2人とコーディネーター1人(大学教授)が参画した。市民が設計業者の選考に加わるのは初めての試みだった。
 こうして、市民と行政と専門家の協働で基本設計づくりを行なった。まさに「みんなでつくりそして運営する施設づくり」の扉を開けた瞬間だった。


基本設計素案の合意形成と次へのステップ

 大詰の9、10月のワークショップでは、設計者を交えてイメージを設計案にするため、具体的な設計図や模型をもとに議論を重ねた。この頃になると、ワークショップ当初にみられた市民対行政という対立の構図もなくなっていた。
 市民も敷地や財政面の制約を理解し、施設と個々の機能のバランスを考えるようになった。こうして最終回を迎えた10月のワークショップでは、市民同士の合意が進み、「基本設計素案」がまとまった。市民の間からは、運営を検討するワークショップ開催を希望する声まで出て、「自分たちの施設は自分たちで」という、市民の意識の変化がみられた。行政と市民との対立から始まったワークショップは、いま新しい行政と市民の連携によるパートナーシップを確立し、これからのまちづくりにおけるひとつの方向を指し示したのである。
 ワークショップによる基本設計づくりという新たな試みは、市民の主体的な参加と市民・行政との信頼関係や協力体制の必要性を改めて浮き彫りにした。それだけに、動き出した市民協働によるまちづくりの流れを止めることなく、次のステージに向かって進むために、今回の成果をいかに活かしていくかがこれからの大きな課題になった。
 現在、市では施設の「運営検討のためのワークショップ」の開催準備を進めている。そして今後、行政はさまざまなケースで市民協働型スタイルで事業を行っていきたいという。それだけに市民や市民団体にも、胸襟を開き行政のパートナーとして、ともにまちづくりが進められるよう期待している。行政と市民協働のまちづくりこそ、真に分権自治の確立に通じるからだ。