「ふるさとづくり2001」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

登録文化財「共楽館」を活用したふるさとづくり
茨城県日立市 共楽館を考える集い
 旧共楽館(現日立武道館)は、赤いトタン屋根と唐破風の正面玄関が印象的な日立のシンボル。平成11年に有形文化財に登録されたこの歴史的建造物を保存・復元し、文化の発信基地に活用しているのが「共楽館を考える集い」(代表・貴島光彦さん、メンバー数・約800人)である。
 日立鉱山の従業員のための福利厚生施設として大正6年に開設された共楽館は、1度に3000人が歌舞伎や映画を楽しめる、関東以北では最大の娯楽施設であった。しかし、日立鉱山の経営不振で昭和42年、市に寄贈された。昭和56年の閉山以降は、活気に溢れていたまちも寂れる一方であった。


新しい時代にふさわしい「共楽館」を

 平成5年、かつての「鉱工業のまち」から「文化のまち」への脱皮を目指してふるさとづくりをしようと市民グループが集まった。そのためには旧共楽館を単なる懐古趣味や観光施設としてではなく、“新しい時代にふさわしい共楽館”として、そのあり方を考えることを求め、同会の発足となった。
 同年8月に永六輔さん・入船亭扇遊さんを囲み、これからの共楽館の活用方法を探る講演会を開催した。11月には第1回全国芝居小屋会議に参加し、共楽館の運営・活用方法などについてアドバイスを受けた。すぐにこれらを活かし、弁士による活動写真、マルセ太郎のスクリーンの無い映画会、講談、芝居語り、アコースティックサウンドを聴く会など、木造建築の特性を活かすための「肉声を尊重したイベント」を始めた。こうした文化遺産を活かす活動が評価され、平成6年に、発足2年目にして「茨城デザイン賞特別賞」を受賞した。
 同会の特長は、有形文化財旧共楽館というハードに頼り放しではなく、それを多角的に捉え、ソフト面の開拓を積極的に行っている点である。木造巨大建築物という特性を活かすことのできるイベントは温かみを感じさせる。「おせんにキャラメル」という懐かしい光景も見られる。幼い頃から地域に住んでいる人たちも新しい住民も郷愁を偲ぶことができ、かつ自由な発表の場として利用している。
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