「ふるさとづくり2001」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

化石博物館を拠点に取り組むふるさとづくり
岡山県奈義町 なぎビカリア会
 1600万年前という、太古の海にいた巻き貝の一種の化石「ヤマトビカリア」を出土する土地で、化石をテーマに地域づくりをと「なぎビカリア会」(代表・定森勝己さん、メンバー数・180人)を組織。念願のビカリアミュージアム(化石博物館)を実現し、ビカリアパーク構想に夢は大きく膨らんでいる。
 標高230メートル、眺望の素晴らしい那岐連山を望む柿地区で、付近の高台から出土する貝化石「ヤマトビカリア」は、1600万年前の太古の海にしかいなかったと言われる貴重な貝の化石で、他に二枚貝やカニ、木の葉など30種類もの化石が出土していた。この貴重な化石の展示館を建てて、周辺の山を整備し大人も子どもも楽しめる公園にするという夢を、教員を退職してからの最後のご奉公にと、定森さんは考えていた。


賛同者を募り、遂にビカリアミュージアムが完成

 定森さんの構想は、着実に賛同者を増やしていった。中井奈義町長も強い関心を示し、住民による施設の管理運営や周辺整備などを条件に、町が実現に努力することを約束した。平成9年4月、住民は「ビカリア会」を結成。活動に着手した。
 中心となった柿地区は、129戸、人口約500だが、会員には家族ぐるみで参加する家もあって、戸数を上回る180人にもなった。会員たちは、荒れ放題の山に入って、雑木と茨のジャングルを開き、出土する化石収集・クリーニングなどを分担して行い、9年度の奉仕者は延べ620人余にものぼった。
 平成10年4月、立派なミュージアムがオープン、会員たちの喜びは大きかった。開館後の施設の管理運営では、会員たちが知恵を出し合い、町当局の指導も受けて始められた。中でも大変なのは、整備した周辺3ヘクタールの山で、放置すればたちまち荒れ山に戻ってしまう。そこで、エビネランを蘇らせたり、アジサイの丘を作り、近隣から寄せられたコブシやヒペリカム、桜、藤などの樹木を植えて、将来の花の楽園に備えた。
 鳥取県境に近い、人口7000の町に作られた小さな博物館でも、会員たちは日本一を自負している。太古の世界がリアルに描かれ、タイムスリップして親子で潮干狩りが楽しめるのだ。そして、自然公園・なぎビカリアパークの実現も近い。