「ふるさとづくり2001」掲載
<企業の部>ふるさとづくり奨励賞 主催者賞

地域貢献で商店街活性化
京都府京都市 西新道錦会商店街振興組合
 西新道錦会商店街振興組合は、京都市中京区の南西部に位置する、壬生地域にある。壬生地域は新撰組、壬生狂言、節分で有名な壬生寺がある地域である。京友禅の型染めの町工場が集中している。京友禅の生産は最盛期の15〜17%程度の生産量に激減している。
 商店街のある地域は、大正9年の地図では、ほとんど田んぼや畑で、昭和4年の地図では今の「まち」になっており、昭和初期に現在の街区が形成され、職住混在の町が作られた。バブル期の影響もなく「まち」の景観は下町らしさを残した、人の息吹を感じ、人の生活感のある、まちの「艶」を持った街区が現在も形成されている。
 地域の高齢化比率は、70歳以上が19・6%になっており、高齢者比率が非常に高い地域である。8月20日前後に町内会ごとで催される恒例行事「地蔵盆」が、子どもの数よりお年寄りが多くなり、子どもの祭りが誰が主役の祭りか分からないようになっている。
 そのような中で、商店街はファックスネット事業や高齢者給食サービス、エプロンカード事業、親水公園づくり等々地域住民・生活者を視野に入れた事業を進め、地域貢献を目指している。商店街は、食料品や日用品雑貨、軽衣料等を中心とした、典型的な地域密着の近隣型商店街として西新道商店街がある。


活動と特色と考え方

 西新道錦会商店街振興組合は組合員122名(150店舗)で食品関係が40%程を占め、あとは日用雑貨、軽衣料等々の店舗が軒を連ねる、全国的には近隣型商店街が非常に厳しい現状のもと頑張っている商店街である。
 商店街には、買物袋・篭をもって午前10時頃より人々が買物に訪れる。商店街で買物袋等を用意したわけではなく、昔ながらにほとんどの客は袋や篭を持ってくる。日常生活が自然に環境にやさしい買物となっている。店も盛り売りで新聞紙等で包む店が多く、特別に構えた環境問題への対応でなく、自然な中で昔ながらの売り買いが現在の環境問題で先端をいく結果となっている。
 都市部における消費者・生活者の視点から、歩いて暮らせる生活エリア内に買物場所が確保できるか、できないかは大変な違いである。地域商業、商店街・市場の果たしている役割は交通手段を持たない人にとっては、生活基盤の重要な施設となっている。
 商店街からの視点では、近隣型商店街が存立するうえで、お母さんたちが買物篭を下げて、1日の食材や生活必需品を毎日買物に来てもらって成り立っている。商店街周辺に消費者が住んでいることが重要なファクターとなっている。
 全国の他都市では、中心部の大型店出店により周辺の商店街に空き店舗が増え、機能が半減した状況になっている。さらに最近では都市中心部の大型店が、郊外大型店の出店の影響で撤退するなど、都心部で生活する交通手段を持たない買物弱者は中山間地の生活と同じような、日常生活の必需品を購入するにも、公共交通機関やタクシーを利用しなければ買物ができない状況になっている。国民の暮らしが立ち行かないということで「歩いて暮らせるまちづくり構想」が昨年末に閣議決定され、地域商業、商店街・市場の再評価が始まっている。
 私たち商店街は、従来から地域住民の定住人口の安定化・促進に向け、各種事業の取り組みで商店街から接近を図るため、誰でもが安心して暮らせる「まち」づくりを目指し、地域との共生・地域貢献の各種の事業を地域住民の目線に立って進めてきた。


地域住民の暮らしをサポートする商店街事業

 1993年度から建設省・市の補助を得て、自治連合会や各種団体とともに「壬生地域まちづくり研究会」を設立し、商店街がまちづくり運動の核になり取り組んでいる。1992年から、ICチップカードシステム「エプロンカード」事業をスタートさせた。1994年からは修学旅行生の商売人体験学習を実施、1996年からは「ファックスネット事業」をスタートさせた。地域情報の提供と買物の弱者となっている高齢者、障害者、有職婦人への買物支援サービスである。新規事業としては、昨年11月から高齢者給食サービス事業の開始、今年10月からは誰もが簡単に利用できるインターネット事業の立ちあげを目指している。
 「研究会」は、自分たちが住む壬生地域をより住みやすい地域にすることを目指し、調査事業やイベントに取り組んでいる。地域を流れる西高瀬川の改修と親水公園を目指して、毎年夏休み最後の日曜日に「魚つかみ大会」を実施している。西高瀬川はもともと運河として作られたもので、人が水辺に親しむような構造になっておらず、運河としての機能も明治の初めに失い、現在では水源のない湧き水が流れる程度の川となっている。
 3面がコンクリートの巨大なU字溝だが、川底にはカワニナがたくさんおり、川の改修で、人が水に親しめる空間の創設とホタルが飛べる川にしようと商店街が中心となって取り組んでいる。特に子どもたちの楽しい思い出づくりと川の再生のデモンストレーションとして、商店街が主体になり川底の清掃を行い、手づくりの魚つかみ大会を実施している。
 また、情報化事業としては、ICカードを利用した多機能な「エプロンカード」事業はプリペイドで年間約3億円強の利用、1日の利用回数は1500回ほどである。カードは若い層の利用と言われるが、実際は高齢者ほど喜んで利用いただいている。それは、プレミアムはもちろんのこと、小銭の支払い、釣り銭の受け取りなどの煩わしさがカードではないためと思える。


ファックスネット事業とインターネット事業

 ファックスネット事業は、ホストコンピュータで通信管理制御システムの通信部と操作部で自前の同報システムの構築を行っている。
 ファックスネットは地域の各種取り組み案内、少年野球チームの練習日案内等各種地域情報の提供、商店街の特売情報の提供、買物弱者といわれる高齢者・障害者、有職婦人のファックス注文による買物代行サービス(新しい御用聞き)、また高齢者へのファックスのレンタルに際してはワンタッチダイアルに「199番」を設定して緊急通報システムとしての活用など、地域住民消費者が安心して暮らせるコミュニケーションツール・安心ネットとして運用している。
 さらに、ファックスネット構想をベースに、インターネット事業を今年の10月には実験稼働する。インターネツトは誰でもが簡単に家庭でテレビを見るように利用できることと、地域生活情報を濃密度に提供し、ローカルエリア・地域の人が誰でも簡単で便利に使えるシステムづくりを進めている。インターネットで自分の住んでいる地域の情報の入手は、なかなか到達しないのが現状であり、地域内の情報を簡単で、安定的に提供することを目指している。
 システムはインターネット簡易端末にICカードの差込口をつくり、エプロンカードにインターネットで必要情報を書き込み、カードを差し込むだけで、インターネットが家庭のテレビで行えるシステムを10月に立ち上げることである。
 また、高齢者の給食サービス事業は、高齢者の社会参加の促進を図ることも大きな目的のひとつになっている。商店街調査では高齢者ほど毎日お店を開けてほしいとの要望が高い。理由は商店街に行けば人との会話ができ、人とのふれあい・コミュニケーション、地域社会で生きている自分が確認できることが示されており、給食サービスは配食が一般的だが、私たち商店街では、みんなが一緒に食事のできる場所を提供し、高齢者の社会参加、コミュニケーションが取れる事業を積極的に推進している。
 この事業で、調理と会食場所での配膳を精神障害者授産施設「朱雀工房」に委託をしている。精神障害という病気の性格上、地域との融合が難しいこともあったが、商店街が朱雀工房の発足時から積極的に働き掛け、抽選会等で人員の派遣を要請することなどを行い、さらに今回は地域の人が集う場所へ朱雀工房が直接対応することで、さらに地域内でのふれあい・融合促進に貢献する取り組みを行っている。
 もうひとつの社会貢献は、修学旅行生の商売人半日体験学習で、京都は修学旅行の多い土地であるが、これまでの神社仏閣を訪れるだけでなく、市民生活に直接ふれるとともに、市民的交流と職業教育ができる取り組みである。
 子どもたちの感想は、「人と人との会話の難しさと同時に会話の楽しさを初めて知った」「物を売ることの緊張感と売れた時の喜びを体験できた」というのが共通している。京都の新しい観光の取り組みと同時に、子どもたちの社会教育にもなり、昨年金沢市の修学旅行生の親が、子どもが帰ってきて、商売人体験学習のことを生き生きと話をすることで、非常に良い取り組みと全国紙に投書をし感謝されていた。これも全国的に例のない商店街の取り組みである。
 また、新たな事業としては、商店街コンビニの開始を目指している。商店街コンビニは町に一般的にあるコンビニとは違い、地域の暮らしをサポートする便宜店として、商品の提供はもちろんのこと、各種情報の提供、商店街ファックスネットやインターネットで注文商品の取り置き、指定時間内での宅配等などサービスを予定している。


今後の展望

 商店街は常に、どの事業も一貫して、地域消費者・住民が「住み続けたいと思う『まち』」「住み続けようと思う『まち』」づくりを目指している。定住人口を確保し、各種事業を通じて地域への貢献を柱として、商店街と地域住民消費者と商店街の共生・連帯が強まり、精神的距離をより近づけることで、大型店と差別化し商店街活性化の原動力にしている。
 地域商業の役割は、欧米では非常に重視されている。ドイツでは、行政が市民の暮らしをサポートするうえで、地域商業を健全に発展させ、誰でもが歩いて生活必需品が購入できることを政策的に保障し、食料品や日用品を扱う青空市場が健全にある。
 私たち商店街は高齢化社会への移行を念頭に、地域の期待にこたえるよう、現在の商店街事業を考える基本スタンスを「地域との共生」「地域の暮らしを支える商店街」「地域への貢献が商店街活性化の道」という考え方を大切にして、商店街事業の発展を目指して努力していることが新しいふるさとづくりになると思っている。