「ふるさとづくり2002」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

安全・安心・快適なバリアフリーのまちづくり
岐阜県 高山市
はじめに
 岐阜県北部で唯一市制を施行する高山市は、人口6万7000余の山都で、市街地の中心部を流れる「宮川」を中心に東側は城下町の風情を残す古い町並みが、西側にはその後の時代を反映した近代の市街地が広がっています。春秋の高山祭や古い町並みで有名で、多くの方から「飛騨の高山」と呼ばれ親しまれており、平成13年には328万人の方に訪れていただきました。
 高山市は、豊かな自然と伝統に培われた文化遺産を活かした「緑と歴史の香りに包まれた 住みやすく 活力あふれる 伝統的文化都市 飛騨高山」を将来都市像に掲げ、まちづくりに取り組んでおりますが、平成8年度からは「バリアフリー」をテーマとする新たなまちづくりに力を入れております。


安全、安心、快適なバリアフリーのまちづくり
<1>高山市のノーマライゼーション理念=まちづくりの理念
 高山市では、高齢者や障害者の方々が可能な限り地域の中で、安全で・安心して・快適に暮らすことができるよう「全ての人々が共に等しく地域で学び、働き、豊かに暮らすことのできる社会が本来の社会である」とのノーマライゼーションの理念を次のようなまちづくりの理念に置き換え、さまざまな施策を進めております。
(1)市民生活に目を向けたまちづくりの理念→高齢者や障害者等が健常者と同様に気軽に買物や外出を楽しんだり、各種の行事に参加しやすいまちづくりを進める=『住みよいまちづくり』
(2)観光客等訪れる方に目を向けたまちづくりの理念→年間300万人を超える来訪者の中には、高齢者や障害を持った方が多数含まれており、これらの方に快適に過ごしていただくために、市民の視点にたって生活しやすいまちづくりを進めることで、訪れる方が快適に過ごしていただけるまちづくりにつなげる=『行きよいまちづくり』
(3)高山市の特性に合わせ、右記のまちづくり理念に基づき福祉施策をはじめ行政各分野の施策を推進することで、住む人・行き交う人・全ての人にとって『安全で 安心して 快適に暮らすことのできるバリアフリーのまち=福祉観光都市』を目指す。

<2>バリアフリー施策の推進
 高山市では、以前から交通安全対策の一環として、道路の段差解消や側溝のグレーチングの改良整備を進めていますが、平成8年度からは「バリアフリー」をキーワードにさまざまな取り組みを始めております。これは、『住みよいまちは行きよいまち=福祉観光都市』の実現に向けて実施した「障害者モニターツアー」がその契機となっています。
 この障害者モニターツアーは、他の地域から障害者をお招きし、市内を散策していただいて、私たち市民がなかなか気づかない市内に潜むさまざまな問題点(バリア)を障害者の視点で把握し、ご指摘をいただくもので、平成8年度から現在まで毎年実施しており、これまでに200名を超える障害者のご参加を得ております。
 バリアには、「人の意識や態度に潜む心理的なバリア」や「建物や施設など都市環境の中に存在し、高齢者や障害者などハンディを持っておられる方の生活に制限を加え、自立生活を困難にする物理的なバリア」「社会の制度やさまざまなプログラムに潜む社会的なバリア」があると言われており、最近では、情報化(IT)の進展にともなう「情報面でのバリア」も指摘されているところです。
 高山市では、これらバリアの解消に向けて、次のような施策を推進しております。
 さまざまなバリアを解消(バリアフリー)するためには、予算を確保し、経費を投入することが必要になりますが、バリアの存在に気づき、それを高齢者や障害者等のために解消しようとする意志が働かなければ、なかなかバリアの解消は進みません。まずはバリアの存在に意識を向けることが重要であることから、バリアに関する情報の提供を通じて市民や事業所等の意識啓発を進めております。
 FM放送・広報紙・ホームページ等による啓発はもちろん、車いす体験や福祉フェスティバルなど市民と障害者等とのふれ合い交流事業を開催し、障害を持つことがいかに大変であるかを実感してもらい、障害者等への理解とバリアを解消することの大切さを認識していただくよう努めております。また、市内14の小中学校と高等学校2校を福祉協力校に指定し、さまざまな福祉活動への参加を通じて、児童・生徒の福祉に目を向ける意識の涵養を図っております。
 施設等に潜むバリアの解消については、道路のバリアフリー化を中心に整備を進めています。高山市は、旧城下町を中心に市街地が形成されているため道路の幅員が狭く、また、施設等の老朽化や整備したそれぞれの時代の工法の違いなどにより、道路に不要な段差が生じている箇所が多いのが現状です。このため、不要な段差についてはこれを解消するとともに、潤いのある歩行空間の確保に向けて、既存の道路幅の中で車道の幅を減少して歩道幅を広げ、カラー舗装による歩車道分離(歩車共存型道路整備)を進めています。
 また、グレーチングについては、車いすの車輪やハイヒールの踵等が挟まれないよう綱目を1cm以下の物に取り替えています。
 このほか、高山市は観光地であるため市内に多数の公衆トイレを整備しており、平成10年度には全ての公衆トイレに手摺り等の設備を設置したほか、不特定多数の方が利用される公共的施設やホテル、旅館等のトイレを含め、民間のご協力の下、市内80数か所に車いす使用者が利用できるトイレを整備しております。
 建物のバリアフリー整備については、平成12年度に民間施設がバリアフリー改修を行う場合やタクシー車両の座席を回転式(サポートシート)に取り替える場合の経費に対して助成する「高山市安全・安心・快適なバリアフリーのまちづくり事業」を創設し、バリアフリー施設の増加と一つのバリアフリー整備が次のバリアフリー整備を誘導するような波及効果を目的に事業を進めています。この結果、民間ホテルで車いすのまま入浴できる設備やバリアフリールームの整備等が行われるなど、その効果も現われてきております。
 また、公立学校・保育園のバリアフリー改修、駅前観光案内所における音声や画像(手話)による観光案内システムの整備、中心市街地のバリアフリー道路におけるタウンモビリティ事業の実施(平成14年度)など、官民一体となってバリアフリー化に取り組んでおります。
 一方、市民の日常生活の利便性の向上や来訪者が快適に過ごしていただけるようなきめ細かな配慮にも心がけています。市庁舎をはじめとする公共施設や観光施設、市営駐車場等に車いすを設置し、簡単な手続きで市民や観光客に貸し出しを行っているほか、高齢者や障害者はもちろん一般市民、観光客にも低料金で利用していただける「福祉バス(のらマイカー)」の運行、市内の障害者が調査したデータを基に作成した「車いすおでかけマップ」や「障害者ガイドマップ」などを発行し、多くの方にご利用いただいております。
 さらに、観光客等をお迎えする側の心構えとして、主に宿泊施設に従事する観光事業者を対象とする高齢者や障害者への対応マニュアル「おもてなし365日」や外国人観光客への対応マニュアル「HOSPITALITY365DAYS」の発行、障害者が市営駐車場を利用する場合の料金免除など、サービスの充実に努めております。


今後のバリアフリーのまちづくり
 こうしたバリアフリーの推進は、次のような新たな課題も生み出しています。伝統的建造物群保存地区内の文化的施設をバリアフリーの視点で改造することは、歴史的景観を損なうことにつながるため困難な状況にあります。また、道路の段差解消については、(1)視覚障害者にとっては歩道と車道の境界がかえってわかりにくくなり、通行上の不安が増大した。(2)段差がなくなったため車を止めやすくなり、路上駐車が増えて歩行者や自転車の通行が阻害されるようになった。などのご指摘をいただいております。
 このような課題に対応しながら「住みよいまちは行きよいまち=福祉観光都市」を実現するためには、市民や観光客等のためにバリアの存在を認識し解消しようとする姿勢が何より重要であると考えます。そのため、平成13年に高山市において「全国ノーマライゼーション推進高山会議」を開催し、市民の意識啓発と全国に向けてノーマライゼーションの理念を実践するまちづくりの情報発信を行ったところです。
 今後も、私たち市民一人ひとりがバリアフリーに取り組むことの重要性を認識し、市内に潜むバリアの解消とそのきっかけづくりとなる情報の提供に努めながら、市民・事業者・行政が一体となって安全で、安心して、快適に暮らすことのできるバリアフリーのまちづくりに邁進したいと思います。